ガイドコメント
2010年の『MICHAEL』以来約3年半ぶりとなる、2014年5月リリースのアルバム。前作同様、マイケル・ジャクソンの世界未発表曲を、トップ・プロデューサーたちが“現代的”に完成させた一枚。MJファン注目の話題作だ。
収録曲
01LOVE NEVER FELT SO GOOD
瑞々しいストリングスときらめくギターが麗しいムードを作るディスコ・ソウル。「ディス・イズ・イット」で少々物議を醸したポール・アンカとの共作で、80年代初期の上質なダンス音楽の薫りが満ちる。初恋にときめく歌唱が微笑ましい。
02CHICAGO
シンプルなタイトルが導く物語は、シカゴへ向かう途中で起こる三角関係。主人公が恋に落ちた天使のような女性は人妻だった……一触即発のストーリーを、やや窮屈なビートに乗せたコリー・ルーニーの手によるトラックで描く。苦痛と怒りをにじませた後半の歌唱が秀逸。
03LOVING YOU
冒頭から芳醇な薫りが漂うロマンティックでファンタジックなミッド。鋭利でシリアスな『BAD』期に作られたとは思えない、AORにも似た上品な華やかさが曲全体を包み込む。非常にリラックスしたヴォーカルで描く、文字通りのラヴ・メッセージだ。
04A PLACE WITH NO NAME
アメリカのヒット曲「名前のない馬」のメロディを借りた、マイケル版の新解釈カヴァーともいえる濃厚で色鮮やかなミッド。どことなく「リーヴ・ミー・アローン」を想起させるが、こちらは痛みのない世界へと導かれるユートピアの物語だ。
05SLAVE TO THE RHYTHM
L.A.リード&ベイビーフェイス人脈が手掛けた曲をティンバランドが新たな息吹で再生。スリリングなビートと抑圧的な感情が爆発するようなヴォーカルでも判るように、支配的な男の束縛から逃げ出したい女性の苦痛を描く。彼らしい激しいアドリブも飛び出す。
06DO YOU KNOW WHERE YOUR CHILDREN ARE
マイケル単独クレジットによる、かつて「12オクロック」とも呼ばれていた広がりあるシンセが推進するメリハリの効いたミッド・ダンサー。米国が抱える子供の家出や売春といった社会問題を、“助けて”というSOSとともに、怒りをこらえた苦々しい表情で伝える。
07BLUE GANGSTA
ギャング映画好きなマイケルらしい、ほの暗いフィルムノワール風のムードが漂う壮大な物語曲。緊張が走る不穏な空気をティンバランドが絶妙に付け足し、「スムース・クリミナル」の続編的な世界を構築。ホットなアドリブとコーラスの調和も印象的。
08XSCAPE
冒頭に“ダークチャイルド”が刻印された、ロドニー・ジャーキンスのリアレンジ作。『インヴィンシブル』期の制作と伝わるファンキーな「ユー・ロック・マイ・ワールド」作風で、世界の支配から逃げ出せと叫ぶ。ビートの渦で夢中に踊るような歌唱に興奮が止まない。