ミニ・レビュー
『All That We Have Now』(2012年)につづく3枚目のフル・アルバム。轟音のメタル・サウンドに強烈なエレクトロニック・ダンス・ミュージックやパンク・ビート、ラップが奔放に融合しており、マグマが噴き出すようなエネルギーに押し切られる“PHASE 2(第2段階)”だ。
収録曲
01Are You Ready to Blast Off?
3枚目となるフル・アルバム『PHASE 2』のオープニングを飾る2分弱のインストゥルメンタル。ハード・ロック的な導入から、シンセを加えて一気に加速。ベースやドラムの見せ場を経てやや唐突なカット・アウト。大きな予感に満ちている。
02Rave-up Tonight
ハイトーンなヴォーカルによる突き抜けるようなサビから幕を開けるキラー・チューン。とにかく抜け方が気持ちいいサビが曲の中心となっているが、構成は一筋縄ではいかない複雑なもの。複数の曲をまとめたように、さまざまなヴァースを行き来する。
03Swing It!!
重めのバンド隊とカラフルなシンセのリフによるイントロが気持ちいいアップ・チューン。シャウトをまじえ、ストレートなロック・チューンとして進んでいくかと思いきや中盤で一気にシフト。お祭り騒ぎになだれ込んでいくアレンジが楽しい。
04Thunderclap
メタル/ハードコアのテイストを基調に据えたアップ・テンポのナンバー。縦横無尽に弾きまくるギターをはじめバンド隊が躍動しつつも細かいキメはビッシリと決め、キーボードのアンサンブルが映えるサビの開放感へと繋がっている。
05Interlude
3rdフル・アルバム『PHASE 2』の中盤に配された、タイトル通りの“インタールード”。古い海外の映画のような男女の会話をバックに、アコースティック・ギターとピアノを中心に美しい音世界を構築。穏やかな響きに満ちあふれている。
06Virtue and Vice
TVアニメ『極黒のブリュンヒルデ』のオープニング・テーマに起用された超アグレッシヴなハード・ロック・ナンバー。minamiとsoが互いに煽り合うようにシャウトする前半から、soのクリーン・ヴォーカルが映えるサビへ。息をつかせぬ展開で突き進む。
07Nail the Shit Down
ホラー映画のように不穏な空気をまとったギターのリフで幕を開けるHR/HM系のナンバー。バンド自体がひとつの大きな壁と化したかのようなすさまじい音圧を維持しながら、ミスマッチにも思えるアジアンなテイストのシンセを入れるなど遊び心もたっぷり。
08Rain Inside Your Eyes
ピアノやアコースティック・ギターを中心にした穏やかなサウンドで幕を開けるバラード。時おり不協和音にも似たコードワークを披露しながら、エフェクトをかけたクリーン・ヴォーカルでエモーショナルな旋律をたどる。後半に向けて激情がたぎっていくアレンジが秀逸。
09Counterattack by the Sesame Sized Bodies
絞り出すようなシャウトで幕を開けるハードコア・パンク。魑魅魍魎たちが大暴れをしているかのような攻撃的なサウンドから、開放感の高いサビで一気に変化をつけるお得意の展開。強烈な殺傷能力を持ったナンバーだ。
10Flutter of Cherry Blossom
“ひらひらと舞う桜の花びら”とでも訳せる情緒豊かなタイトルどおり、どこか儚げなサウンドで幕を開けるナンバー。おなじみのド派手な仕掛けは(あくまで)控えめに、エモーショナルなメロをたっぷりと聴かせる。プログレ×チップ・チューン風のブリッジがユニーク。
11Stay as Who You Are
7分以上にもおよぶ大作。メタルやハードコア的なアプローチから抜けのいいポップなメロを経て、エレクトロな風味の強いダンス・ミュージックへ。彼らの雑食性が投影された組曲的な構成にただただ圧倒。雑多なだけにならない手腕も見事。