ミニ・レビュー
7年ぶりのオリジナル・アルバムはシングル曲を中心に、提供楽曲のセルフ・カヴァーと新曲1曲という構成。一番古い曲と新曲のあいだには7年もの隔たりがあるが、違和感なく1枚のアルバムの中に並び時の流れを感じさせないのは、まさに彼女の歌がトラッドである証し。
ガイドコメント
前作『DENIM』以来約7年ぶり、2014年9月リリースのアルバム。NHK連続テレビ小説『だんだん』主題歌として話題となった「縁(えにし)の糸」などのシングルや未発表曲を含む、時代に流されない珠玉の楽曲を収録。
収録曲
01縁 (えにし)の糸
自身がナレーションでも出演した島根と京都を舞台にしたNHK連続テレビ小説『だんだん』主題歌となった37thシングル。安らぎと温もりがあふれる定番の3連ロッカ・バラードに乗せ、出逢いの不思議と歴史的なロマンを歌っている。
02それぞれの夜
TBS系『NEWS23クロス』エンディング・テーマへ向けて書いた41stシングルで、今日の終わりにどんな日だったかを想い巡らそうと歌う。希望あふれるポップな曲調だが、何気なく明日を生きるためのメッセージを含ませるのは、竹内ならでは。
03アロハ式恋愛指南
山下達郎のゴキゲンなギター・カッティングから幕を開ける、麗しく力強いグルーヴィなポップ。愛や誇りも示す“アロハ”を、人生を模索する若者の恋愛応援ソングへと昇華。映画『わたしのハワイの歩きかた』主題歌への書き下ろしとなる43rdシングル。
04ウイスキーが、お好きでしょ
石川さゆりをはじめ、多くの歌唱で知られるサントリー「角瓶」CMソングを、しっとりと竹内まりやもカヴァー。2番の歌詞を書き加え、ジャズ・コンボ調でアダルトなアレンジに。作曲した杉真理もコーラス参加した38thシングル。
05Dear Angie〜あなたは負けない
41stシングルは、遠くにいる大切な人へ向けて送るハートウォームなメッセージ・ソング。竹内まりやがこの楽曲を手掛けた杉真理のバンド、BOXでの演奏を願い出たという、アットホームな雰囲気が味わい深い。UKポップ・ロック風の音色もいい。
06最後のタンゴ
NHKラジオ『ラジオ深夜便』“深夜便のうた”へ向けて、「さよならはダンスの後に」を意識して作ったという曲。伊集院静の純文学的な詞と悲恋を醸し出す服部克久のアレンジで、深紅とセピアが往来する大人の黄昏を描く。昭和をしのばせる粋な歌謡曲だ。
07輝く女性 (ひと)よ!
生きることの素晴らしさとまだ自分を素敵だと気づいていない女性たちへ送る、まりやからのエール。不安を乗り越えた強くしなやかな姿は輝かしく美しいという詞は、女性を飾るコーセー「GRANDAINE LUXAGE」CMソングにピッタリ。清々しいポップスだ。
08夏のモンタージュ
オリジナルは高畑充希がみつき名義で歌ったTBS系ドラマ『ナツコイ』主題歌。そのセルフ・カヴァー版は、サーフィン・ホットロッド風に彩色し直し、夏の瑞々しさをより強調したラヴ・ソングに。バック・コーラスに高畑充希が参加。
09リユニオン
ここでいう“リユニオン”とは、昔ふられた彼を許して、新たに友としてつながろうという意味。ビタースウィートな心境を、こじゃれた鍵盤と弦が醸すエレガントなムードで巧みに描く。松たか子への提供曲のセルフ・カヴァー。
10特別な恋人
松田聖子のデビュー30周年記念シングルとして提供した曲のセルフ・カヴァー。月日を重ね、多くの恋を経験したからこそ出会えた“愛”を、微笑ましくも心に染みるハートフルなテイストで綴る。山下達郎のバック・コーラスで、よりドリーミングに。
11たそがれダイアリー
テレビ朝日系ドラマ『おトメさん』主題歌となった40thシングル。熟年を迎えた女性の心境を軽快な16ビートで描いたポップスで、ホーンも交えた胸騒ぎを呼ぶようなワクワクしたフィリー・ソウル風のアレンジが楽しい。
12深秋
NHKドラマ『芙蓉の人〜富士山頂の妻』主題歌への書き下ろしに選んだテーマは、永遠の夫婦愛。リズミカルなテンポに哀愁歌謡調のメロディが走るという、新鮮な展開の妙に息を呑む。シリアスだが絆の深さを実感するラヴ・ソングだ。
13静かな伝説 (レジェンド)
ハーモニカも加えた、70年代フォークをモチーフにした素朴ながらも芯の強さを感じる曲調は、実にしみじみと胸を打つ。人生ドキュメンタリー番組『ワンダフルライフ』テーマ曲へ向けて書いた44thシングルで、桑田佳祐、原由子、山下達郎との豪華なユニゾンが聴ける。
14Your Eyes
夫・山下達郎の代表曲として知られるが、元来は竹内まりやのアルバム用に書かれたそう。ドラマ『安堂ロイド』主題歌シングルとしてようやく竹内版の日の目を見た形で、感慨も深い曲だ。故・青山純のドラムを打ち込みしたという演出も泣ける。
15いのちの歌
自身がMiyabi名義で作詞し、NHK連続テレビ小説『だんだん』劇中で主演の茉奈・佳奈姉妹が歌った曲が原曲。村松崇継の美しく叙情豊かなメロディに寄り添うように、母性豊かな穏やかな歌唱でかけがえない命の大切さと感謝を伝えている。姉妹もコーラス参加。