ミニ・レビュー
アダム・レヴィーン(vo)の結婚を経て、ジェシー・カーマイケル(key)も復帰した5枚目。切なくもダンサブルなシングル曲「マップス」、ハイ・トーンで官能的に攻める「アニマルズ」、マーシー・プレイグラウンドのカヴァーなどバラエティ豊かで、前作よりもエモーショナルな仕上がりに。
ガイドコメント
前作『オーヴァーエクスポーズド』に続く、2014年リリースの5枚目のスタジオ・アルバム。先行シングル「マップス」ほかを収録。プロデューサーには、マックス・マーティン、ベニー・ブランコ、ライアン・テダー、シェル・バックらが参加。
収録曲
01MAPS
君が辛苦に喘ぐ時にそばにいてあげたのに、僕が躓いた時はなぜ逃げたの? と問責。それでも僕は君へと導く地図をたどると思い返す男の微妙な心境を綴る。哀愁と情動が交差する展開が美味。ベニー・ブランコ、ライアン・テダー制作のアルバム『V』からの1stシングル。
02ANIMALS
アダムのハイトーン・ヴォイスが強く印象を残す、シェルバック制作によるミディアム・ダンサー。僕との関係を絶っても動物のように君を探し出して食べ尽くす……執着する男の歌だが、かつて交わした愛の反動が見え隠れ。“アオー”の雄叫びにも注目。
03IT WAS ALWAYS YOU
ジェイソン・エヴィガンとザ・モンスターズ&ザ・ストレンジャーズの手による、80年代の薫り漂うシンセ使いが耳を引くポップ・ロック。友人と思い込んでいたけれど、実は君こそが僕の求めていた人だと悟る男の心境を描く。心の変化を示すような転調の演出がニクい。
04UNKISS ME
あのキスも、あの触れ合いも消してくれ。もう愛がない君へ向けて、恋を終わりにしようと問いかける悲しき失恋ストーリー。ゆったりと流れるミディアム・スローで、諦観とやるせなさが入り交じりながらも美しい声色が実に切ない。ヨハン・カールソンのプロデュース。
05SUGAR
初期マルーン5路線とでもいえそうなレトロ・テイストのソウルフル・ポップス。君からの愛情を砂糖にたとえて、僕に甘さを分けてくれない? とねだるラヴ・ソングだ。アダムのファルセットが歌詞同様にスウィートでセクシー。
06LEAVING CALIFORNIA
出ていくと告げる君に“行かないでくれ”と嘆願する男。恋の終焉の直前の悲痛な物語を描くが、瑞々しく澄んだメロディと歌唱が皮肉にも美しい音空間を構築。“オーオオーオー〜”のシンガロングからエコーが響くアウトロへの展開が切ない。
07IN YOUR POCKET
隠し事がないならポケットに入ってる携帯を見せて?……もう終わりだよの言葉も虚しい、修羅場寸前の恋人同士を描く。シェルバックの演出による、ドンドコと地を鳴らすようなリズムとしなやかなメロディによるダンサブルなポップだ。
08NEW LOVE
ライアン・テダーとノエル・ザンカネラのヒットメイカーが腕を利かせたハウシーなビートによるアップ。毎晩過ごすうちにこれは新しい恋と気づいたんだとアプローチするラヴ・ソングで、心弾むようなアダムの美声ファルセットが恋のトキメキを見事に描く。
09COMING BACK FOR YOU
彩り鮮やかなサウンドと情趣にあふれたメロディとともに語られるのは、君を取り戻しにいくというシンプルで強い想い。色気と活力が絶妙に融合したヴォーカルも魅力的。制作に腕を奮ったのはザ・モンスターズ&ザ・ストレンジャーズとジェイソン・エヴィガン。
10FEELINGS
シェルバックが手掛けたファンキーなソウルとダンスの組み合わせは、ファレル作あたりから潮流をなしたレトロ・フューチャー・ディスコ路線。アダムのファルセットが美しく妖しく広がる、セクシーなラヴ・ソングだ。
11MY HEART IS OPEN
ノー・ダウトのグエン・ステファニーを迎えてのデュエット。悲哀の一歩手前の憂いが漂うムードのなかで、恋人としての進路の選択を迫られるシリアスなストーリーが刻まれる。美しくもはかない声を交わし合う繊細なバラードだ。制作はベニー・ブランコ。
12SHOOT LOVE
愛を撃たないでくれと何度も懇願する男。君が僕の中の愛を撃って壊れてしまったら、きっと途方に暮れてしまう……切迫した想いを、アダムがハイトーンを駆使して好演。メランコリックなグルーヴのミッド・ダンサーだ。
13SEX AND CANDY
米オルタナ系ロック・バンド、マーシー・プレイグラウンドの1997年のヒット曲をソウル・ジャム風にアレンジしてカヴァー。物思いに耽っていると、小悪魔のように見つめる彼女が現れて……という妄想に満ちた気だるさが占める曲だ。
14LOST STARS
アダムの初出演映画『はじまりのうた BEGIN AGAIN』を飾るミディアム・バラード。琴線に触れるファルセットや憧憬と郷愁が漂う情緒に富んだメロディとともに、若さゆえの悩みや葛藤を描く。制作はグレッグ・アレキサンダー。
15MAPS
アルバム『V』からの1stシングルのリミックス。サンフランシスコのスラップトップが、スクリューやスティールドラム音をアクセントにしたハウシーなダンス・トラックを構築。夕闇迫る海岸を想起させるサウンドだ。
16MAPS
アルバム『V』からベニー・ブランコ&ライアン・テダー制作の1stシングルを、デトロイト出身のMCのビッグ・ショーンを迎えてリミックス。冒頭にクールな声でのラップ・パートを組み込み、ストリート感も演出している。