ミニ・レビュー
6年ぶりの5作目。ポール・グレイ(b)の死、ジョーイ・ジョーディソン(ds)の離脱を経て、リズム隊に代わってジム・ルート(g)を中心に曲作り。さすがの風格を漂わせる一方、よりメロディックなベクトルへ向かったり、隙間を活かした音作りがなされていたりと、過去、現在、未来がさまざまに交錯。
ガイドコメント
猟奇趣味的激烈音楽集団、スリップノットが“ノットフェス・ジャパン2014”開催直前に放つアルバム。約6年ぶりに発表したシングル「ザ・ネガティヴ・ワン」を含む、絶対的存在感でシーンに君臨する究極のメタル・サウンドが堪能できる。
収録曲
[Disc 1]
01XIX
陰鬱かつどこかエスニックな雰囲気に満ちたナンバー。終盤に向けて大きなクレッシェンドを描くアレンジながら音数は非常に少なく、ラストでは唐突なカットアウト。“WALK WITH ME”という悲痛な叫びが耳に残る。
02SARCASTROPHE
うっすらと聴こえるアラビックなギターによるオープニングから、切り裂くようなギター・リフ&シャウトへと突入するハード・チューン。“WE ARE KILL GODS”のシャウトにふさわしく、緊迫感に満ちたアレンジとサウンドで駆け抜ける。
03AOV
冒頭のドラムのフィルインから、スラッシュを取り入れつつヘヴィ&アグレッシヴに攻めるメタル・チューン。グロウルによるラップが中心ながら、サビではクリーンなヴォーカルで美しいメロディが炸裂。5分半のなかで壮大なストーリーを奏でている。
04THE DEVIL IN I
ゆったりとしたテンポながら、強烈なツーバスや重心の低いリフなどをぎっしりと詰め込んだナンバー。クリーン・ヴォーカルをメインに据えつつ、徹底的に鬱々とした雰囲気で展開。中盤で唐突にブラスト・ビートを取り入れたアレンジが鮮烈。
05KILLPOP
チープなリズムマシンのようなエフェクトを加えたドラムで幕を開けるナンバー。ギターのアンサンブルで、サスペンス映画風のミステリアスな雰囲気と圧迫感を作り出している。猟奇的な主人公の性格を映し出したかのような、カオスなラストの展開がシビれる。
06SKEPTIC
“懐疑的”という意味を持つ単語を冠したアップ・チューン。神経症的なギターをアクセントに、タイトなリズムで攻める。ほぼグロウルを中心としながらサビのメロディはキャッチー。スロウに展開する中盤の激重リフも見事。
07LECH
音数の少ないスロー・パートとパーカッションが鳴り響くアップ・パートを交互に繰り返すナンバー。スラッシュへと移行する中盤以降は怒涛の展開で、怒りにも似たシャウトやサイレンを思わせるギター・リフでザラザラと感情を撫でる。
08GOODBYE
タイトルをはじめ、“遠い昔俺たちは一体だった”といった歌詞の内容からもポールとジョーイへのメッセージを感じさせる哀しげなバラード。エフェクトを効かせた静謐な雰囲気で幕を開けるが、間奏から一気にヒートアップするのが“らしい”。
09NOMADIC
オープニングを飾る切り裂くようなギター・リフを中心に突き進むナンバー。殺傷力の高いサウンドとグロウルで攻めながら、サビは思わず口ずさんでしまうほどにキャッチー。王道的ともいえるギター・ソロのフレーズ選びも新鮮に響く。
10THE ONE THAT KILLS THE LEAST
メロディアスなクリーン・ヴォーカルと怒りに任せたグロウルがほぼ対等に登場、ストレートな構成と合わせてシンプルな作りといえるナンバー。スロウなパートで緊迫感やスピード感を作り出す技量はさすが。ラストに登場する切り裂くようなスクラッチも強烈。
11CUSTER
リハーサルスタジオの一幕ように口頭でリフを伝えるリラックスした雰囲気から、一気にそれを具現化して引き込むキラー・チューン。強烈なリフを中心に、スクラッチや機械音を絶妙な間合いで放り込み、圧倒的な攻撃力を持ったサウンドを構築している。
12BE PREPARED FOR HELL
「The Negative One」のオープニング的な役割を持った2分弱の小品。ノイズにも似た音をバックに、“地獄に備えろ……”とエフェクトをたっぷりと効かせた声が響く。徹底的に不穏な雰囲気を演出した作品だ。
13THE NEGATIVE ONE
映画のSEのような不穏な幕開けから、切れ味鋭いリフと悲鳴にも似た機械音でスタートするキラー・チューン。マシンガンのように放たれるシャウト系ヴォーカルに負けぬ、迫力に満ちたサウンドが押し寄せる。隙間を埋めるシドの妙技も完璧。
14IF RAIN IS WHAT YOU WANT
壊れた無線の音声のようなオープニングから、ホラー/ミステリー映画的な雰囲気を醸し出すギター・リフが少しずつ存在感を増す陰鬱としたスロー・チューン。まるでうわ言のようなヴォーカルも空気感に拍車をかけている。
[Disc 2]
01OVERRIDE
ボーナス・トラックとして収録されたミディアム・テンポのナンバー。不穏な幕開けからメロディアスなヴォーカルな高らかに響くサビ、過剰なまでに暴力的なブリッジなど、5分37秒という時間のなかでさまざまな表情を見せつける。
02THE BURDEN
“There's God!”という強烈なシャウトで幕を開けるスロー・チューン。単調なフレーズを続け恐怖すら感じさせるギターや無機質なコーラスを中心に、手数の多いドラムや機械音でアクセントを追加。崩壊一歩手前の絶妙なバランスを作り上げている。