ミニ・レビュー
2006年のデビュー後、着実にヒットを飛ばし日本でも人気番組主題歌で大ブレイクを果たした女性シンガー・ソングライターのアルバム第5弾。ヒット曲「シェイク・イット・オフ〜」ほか、やや落ち着いた曲調で歌声のメリハリが小さめながら、完全にポップス化した新たな魅力を映し出している。
ガイドコメント
前作『レッド』以来約2年ぶりとなる、テイラー・スウィフトのアルバム。人気リアリティ番組『テラスハウス』主題歌としてヒットした「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」を手掛けた制作陣によるシングル「シェイク・イット・オフ」ほかを収録。
収録曲
01WELCOME TO NEW YORK
絶対にニューヨークに引っ越したりなんかしないと宣言していたテイラーが、ライアン・テダーとともに今までにない刺激に興奮するさまを語ったポップ・チューン。新天地での胸の高鳴りと朝の清々しさが伝わってくるよう。制作はマックス・マーティン&シェルバック。
02BLANK SPACE
マックス・マーティン&シェルバック制作によるミディアム・ポップ。ここでいう“空欄”とは、私と恋のゲームができる”恋人リスト”のこと。私は遊び人が好きとプレイガールを気取るも、どこか本当の恋を探すような表情で歌う。
03STYLE
離れてもヨリを戻すことを繰り返す“腐れ縁”カップルのストーリー。真夜中の乾いた空気の街を車で走り抜けるようなビターなムードのポップを展開しながら、“でもこれが私たちのスタイル”と悟ったように告げる。制作はマックス・マーティン&シェルバック。
04OUT OF THE WOODS
冒頭の“オ・オオ”のかけ声やパーカッシヴなビートなどニューウェイヴなアクセントも垣間見られるミディアム・ポップ。愛し合い、嫌気が差しを繰り返してきた恋人同士がもうそんな危機を脱したかしらと確かめ合う。ジャック・アントノフと手掛けたスケール感ある曲だ。
05ALL YOU HAD TO DO WAS STAY
そばにいてくれるだけで良かったのに……。終わった後にもう一度戻りたいとかいうのねと、復縁を迫る男に閉口する気持ちを描く。ブリッジで一瞬ため息をつくような悲しみを見せた直後に高く澄んだ“ステイ”のコーラスが響く展開が、吹っ切れた気持ちを伝えていて痛快。
06SHAKE IT OFF
マックス・マーティン&シェルバック制作の、アルバム『1989』からの1stシングル。何を言われたって気にしないわという前向き宣言同様、潔くポップへと振り切った作風が痛快。オールディーズの要素もちらつく、ゴキゲンなナンバーだ。
07I WISH YOU WOULD
互いに素直になれずにねじれた愛を続ける二人の物語。今戻ってきてくれたらいいのにと願う愛しい気持ちとは裏腹に、軽快なグルーヴを携えて展開していくダンサブルなポップだ。ジャック・アントノフとの共同プロデュース曲。
08BAD BLOOD
可愛さあまって憎さ100倍を体現したとでも言えそうな、あなたとの日々はもうゴメンだわという怒りのテイラーが登場。パワフルな歌唱や興奮度の高い“ヘイ!”のかけ声などにも憤りの顔色が。マックス・マーティン&シェルバック制作のエネルギッシュなナンバー。
09WILDEST DREAMS
マックス・マーティン&シェルバックによるドラマティッックな展開のポップ。恋の終わりに、“私のこと忘れないって言って”“きっと後で私を思い出すはず”と強がる気持ちを健気に歌う。女子の共感度が高そうな一曲だ。
10HOW YOU GET THE GIRL
そうやって別の娘の心をゲットしたのねと憎まれ口を叩くのは、私のもとから去っていって欲しくないから。切なさ募る詞世界とは対照的に、軽快なギターを軸に展開する爽やかなポップ・サウンドが響く。制作はマックス・マーティン&シェルバック。
11THIS LOVE
黄昏や静かな夜の海を想起させるオーガニックなムードで描くラヴ・ソング。“絶対にヨリを戻したりしない”と歌っていたテイラーが、私のもとに還ってきた愛を歌う。ゆるやかな時の流れを感じさせるメランコリックな音色も印象的。
12I KNOW PLACES
ライアン・テダー、ノエル・ザンカネラとの共作による、スリリングな色彩も見せるドラマティックなポップ。メディアのゴシップという弾丸で狙われる彼らの獲物だけど、私たちの愛は不死身だと説く。表情豊かなテイラーのヴォーカルも聴きどころだ。
13CLEAN
エレクトロとアコースティックを溶け合わせた浮遊感あるイモージェン・ヒープの独特のサウンドを敷いた、テイラーの新機軸。二人の愛を水不足で枯れてしまった花になぞらえた詞世界も魅力。長らく疲れきっていた自身がようやく“らしさ”を取り戻せたという安堵を歌う。