ミニ・レビュー
デビューから14年間のシングルを網羅した2作同時リリースのベスト盤のうち、こちらは“誰かを想って流す涙”をテーマにした20曲入り。バラードからロック・チューンまでさまざまなタイプがあるが、独特の揺らぎを持つ危うい歌声の魅力はデビュー当初から不変であることがわかる。
ガイドコメント
2014年11月5日リリースのベスト・アルバム。デビュー曲「STARS」から加藤ミリヤとのコラボ「Fighter/Gift」までのシングルを“二つの涙”をコンセプトに各20曲ずつ選定。本作は“誰かを想って流す涙”がテーマの〈TEARS〉編。
収録曲
[Disc 1]
01雪の華
繊細で美しい“今年、最初の雪の華を”のサビ・フレーズが印象的な、中島美嘉を代表するバラード。切なさあふれる旋律だが、ずっと一緒にいたい想いを綴った愛の歌だ。自身が出演したCMに起用された10thシングルで、日本レコード大賞金賞受賞曲。
02ORION
レギュラー出演したドラマ『流星の絆』挿入歌となった27thシングル。強がってばかりいた男が信じることを教えてくれた君へ語りかけるミディアム・ラヴ・バラードだ。散りばめられた温もり、安らぎ、切なさの配分が絶妙で涙腺を刺激する。
03Dear
ノスタルジックなギターのアルペジオをバックに、もう会えない大切な人との幸せな日々と愛を思い返して涙する。伝えきれない想いがあふれ出す琴線に触れる歌唱が胸を打つ。映画『八日目の蝉』主題歌となった33rdシングル。
04桜色舞うころ
自身初の“桜ソング”となった14thシングルは、川江美奈子による清爽なミディアム・バラード。四季の移ろいとともに、二人の恋の行方を優しいヴォーカルと音色で描く。武部聡志によるピアノが景色と心を巧みにつないでいる。
05一番綺麗な私を
細やかな機微を映し出す美しい言葉で綴られるミディアム・ラヴ・バラード。四季の移ろいに寄り添ってきた想いをしなやかな声で歌い、鮮やかな記憶と切ない感情の絶妙に描いている。自身も出演したドラマ『うぬぼれ刑事』挿入歌起用の32ndシングル。
06見えない星
星が見えない空へ向かって私の想いに気づいてほしいと願うミディアム・スロー・バラード。寂しさと愛しさが混じった微妙な感情を、淑やかな声と汚れないピアノがドラマティックに演出する。ドラマ『ハケンの品格』主題歌となった21stシングル。
07ALWAYS
中山美穂主演映画『サヨナライツカ』主題歌として話題となった31stシングル。君を失う日がくるまでは“永遠”でいたいと願うドラマティックなラヴ・バラードだ。優しい鍵盤と美麗なストリングスの好演も手伝って、涙腺を大きく刺激する。
08接吻
8thシングルとして白羽の矢が立ったのは、93年のORIGINAL LOVEのカヴァー。アクの強い田島貴男とは真逆のソフトな歌い口だが、レゲエ・ビートと流麗なストリングスで爽やかな夏の夜を感じさせる曲風に。中島に新境地をもたらした一曲。
09愛してる
福岡時代にサポートしていたHこと濱洋一が詞曲を手掛けた6thシングル。瑞々しいストリングスや鍵盤を背景に、ふとした色香を感じる歌声で“愛してる”をリフレイン。ゴスペル風に描く終盤など、思わず聴きほれてしまう展開も見事。
10素直なまま
22枚目のシングルは、ケツメイシのRYOJIが手掛けたNTTドコモ春のキャンペーンCMソング。飾っていた恋人時代を振り返り、強がりで泣き虫な本当の自分のままで一緒に過ごせていたらと悔やむ。温かくもノスタルジックなミディアム・ポップだ。
[Disc 2]
01LEGEND
COLDFEETが大きく関わったことでエレクトロな色彩となった13thシングル。浮遊する電子音とバック・コーラスに鮮やかなハープが絡み、新境地といえるミッドに。自身作詞による幻想的な詞世界とエキゾチックな歌唱も強く印象を残す。
02SAKURA〜花霞〜
かけがえのない愛する家族からの旅立ちとその心境を、麗しい彩色で描いたノスタルジックなミディアム・バラード。そっと手を触れるような温もりあふれるヴォーカルと春の季節を映し出す鮮明なストリングスが、心をつき動かす。CMソングにもなった25thシングル。
03Fighter (中島美嘉×加藤ミリヤ)
映画『アメイジング・スパイダーマン2』日本語版テーマへの書き下ろしで、コラボした加藤ミリヤの曲風が新たな中島美嘉像を構築。m-floの☆Taku制作によるソリッドなロック・バラードは、これまでにない中島の外面の強さを浮き彫りにした。39thシングル。
04SEVEN
アーバンなジャズ・ファンクによるダンサブルなトラックはCOLDFEETが制作。ウィスパー風の“時を止めて!”のファルセットやリズミカルな鍵盤など、スタイリッシュなモードで展開。カネボウ「KATE」CMソング起用の11thシングル。
05一色
20枚目はNANA starring〜名義での映画『NANA2』主題歌シングル。GLAYのTAKUROらしいタイトなリズムを刻むロック曲調に乗せ、自分の夢のために走り出せとはなむけの言葉を送る悲しきラヴ・ソングだ。作詞は『NANA』原作者の矢沢あい。
06Helpless Rain
おちまさとが作詞を担当した4thシングル。ヒップホップ・ソウル寄りの黒めのグルーヴによるミディアムR&Bで、叶えども届かない彼への気持ちをハスキーなハイトーン・ヴォーカルで吐露する。切なく憂いに満ちたラヴ・バラードだ。
07明日世界が終わるなら
ショッキングなタイトルも曲調は繊細な鍵盤が映えるミディアム・スロー。風が吹き抜ける荒野のような孤独感が支配するなか、愛を伝える以外何ができる? と問いかける。自身出演映画『バイオハザードV リトリビューション』日本語版主題歌起用の35thシングル。
08ひとり
松本良喜作曲、島健編曲というスケールの大きなバラードを手掛けるにふさわしい布陣で描いた傷心ソング。思い出を美しくまとわせるようなストリングスと鍵盤に寄り添う中島の歌唱が切ない。ゲーム『ドラッグオンドラグーン2』メイン・テーマの15thシングル。
09愛詞 (あいことば)
アニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』エンディングを飾った37thシングル。激動を予感させるセンセーショナルな導入から嵐が止み陽光が照らすような安らぎが伝うサビへの展開は、ストーリーテラー中島みゆきの真骨頂。希望に満ちたラヴ・ソングだ。
10CRY NO MORE
メンフィスで録音されたゴスペル調ブルース。淋しさはいつなくなるんだろうと自問自答を繰り返す。“あとどのくらい”と”I don't wanna cry”のライミングが印象的。アニメ『BLOOD+』エンディングとなった17thシングル。