ミニ・レビュー
絶望を起点に置く彼ららしくアートワークは黒が基調で、キラキラした音の粒がそこに色を付けていく。より華やかにダンサブルになったサウンドに対し、メロディのキレはやや落ちた感もあるが、テーマパーク感は圧倒的! みんな大好き“ドラゲナイ”も聴ける、“セカオワ現象”を味わうためのセカンド。
ガイドコメント
前作『ENTERTAINMENT』以来約2年半ぶり、2015年1月14日リリースの2ndアルバム。「炎と森のカーニバル」「Dragon Night」を含む「RPG」以降のシングルや映画『海月姫』主題歌などを収めた、“セカオワ現象”の集大成。
収録曲
01the bell
メジャーでの2枚目のアルバム『Tree』の冒頭を飾るインストゥルメンタル。そのタイトルどおり、鐘の音が鳴り響く30秒ほどの小品で、まもなくはじまるめくるめくファンタジックな世界への期待感を高まらせる。
02炎と森のカーニバル
ブラスバンドを取り入れたサウンドが楽しいポップ・アンセム。リリース前に行なわれた同名の野外イベントを思わせる詞世界はミステリアスながら、ドキドキするような恋のストーリーの手触りはリアル。バスドラムを花火で代用するなど、遊び心もさすが。
03スノーマジックファンタジー
JR東日本「JR SKI SKI」CMソングに起用された“セカオワ”流ウィンター・ソング。冬の恋を綴ったストーリーはロマンティックかつワクワクするような雰囲気に満ちているが、サウンドにも取り入れられている“影”が随所に。
04ムーンライトステーション
三味線、琴、篠笛などの楽器を取り入れ、和のテイストをファンタジーの世界に落とし込んだユニークなナンバー。かぐや姫をモチーフした恋物語を描くが、“横浜の花火大会”“上野のガード下”といった舞台に非日常感を抱かせる不思議な魔法がかかっている。
05アースチャイルド
“宇宙放送の音楽番組”という設定の導入がユニークなポップ・チューン。ファンファーレ風のリフなど徹底的にポップでにぎやかなサウンドをバックに、彼らのルーツを思わせるフレーズを忍ばせつつスピード感たっぷりに駆け抜ける。
06マーメイドラプソディー
水を使った楽器“メテオラ”の不思議な音色で幕を開ける映画『海月姫』主題歌。“人魚の恋”というモチーフは決して目新しいとはいえないが、水槽の中から恋をする姿を綴ったその視点はさすが。リアルとファンタジーの絶妙な交錯に耳を奪われる。
07ピエロ
自ら出演したロート製薬「OXY」のキャンペーン・ソングに起用されたナンバーで、危険な空中ブランコに挑むピエロを描いたセカオワ流応援ソング。象の鳴き声など“らしい”演出も登場するが、シンセベース中心のグルーヴィなサウンドがかえって新鮮。
08銀河街の悪夢
チェロの徳澤青弦を迎えたナンバー。フィールドレコーディングされた効果音を中心とした音数の少ない構成で、心に病気を抱えた少年の苦悩を美しいメロディとともに綴る。ラストの“強くなれ僕の同志よ”というメッセージはFukaseならでは。
09Death Disco
映画『マダム・マーマレードの異常な謎』主題歌として配信リリースされたナンバー。アコースティック・ギターのリフを中心に、まさに“死のディスコ”といえるミステリアスかつ不穏なダンス・サウンドが展開。ラップに近い形で歌うFukaseも魅力的。
10broken bone
3分弱という短い尺を駆け抜ける、カラフルでキュートなエレクトロ・ポップ・チューン。“最後の公演を終えた日、僕は酒に溺れてた”からはじまる歌詞はまるでFukaseの苦悩をリアルに綴っているかのようで、ポップなサウンドの対比が鮮烈。
11PLAY
勇壮なファンファーレで幕を開けるポップ・チューン。詞世界はもちろん、効果音のようなサウンドも含めてモチーフはロールプレイングゲームだが、チャレンジを重ねながら前へ進む姿勢は人生にも通じる内容だ。Saoriのヴォーカルが聴けるのも嬉しい。
12RPG
アニメ映画『クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』主題歌となった4thシングル。彼らならではの賑やかでファンタジックなサウンドに彩られたアッパーなポップ・チューンながら歌詞のファンタジー色は薄く、夢に向かって進む決意が綴られている。
13Dragon Night
“ドラゲナイ”と聴こえるサビや、独特な演出方法でも話題を集めた7枚目のシングル。ニッキー・ロメロがサウンド・プロデュースを手がけ、エレクトロ色の強いダンサブルなアレンジに。正義や争いをモチーフにした短編小説のような歌詞にも引き込まれる。