ミニ・レビュー
4枚目のオリジナル・アルバムは、やはりボリューミーな2枚組。「希望的リフレイン」「ラブラドール・レトリバー」など一人称が“僕”のナンバーで王道アイドル感を見せつけつつ、胸を打つバラードやこじはるのムード歌謡といったTVの顔とは異なるAKB劇場へ突入していくのがたまらない。
ガイドコメント
前作『次の足跡』以来約1年ぶり、2015年1月21日リリースのオリジナル4thアルバム。「ハート・エレキ」「鈴懸〜」「前しか向かねえ」「ラブラドール・レトリバー」「心のプラカード」などのヒット・シングルを含む、人気曲を多数収録。
収録曲
[Disc 1]
01希望的リフレイン
何度諦めようとしても、好きすぎて諦めきれない。繰り返される君への愛しい想いを、文字どおりのリフレインを駆使したフックで描く。ハツラツとした展開とちょっぴり覗かせる切なさが甘酸っぱさを演出する、青春全開な38thシングル。
02ラブラドール・レトリバー
渡辺麻友がセンターを務めた36thシングルは、シルヴィ・ヴァルタン「あなたのとりこ」やミッシェル・ポルナレフ「シェリーに口づけ」を想起させるフレンチ・ポップ風。“まゆゆ”のイメージを意識したか、清爽なサマー・ポップに仕上がっている。
03Reborn
チームサプライズによるダンサブルなポップ・チューン。生まれ変わって未来に羽ばたけというエールを、胸がワクワクするような躍動感あふれるリズミカルな曲調で描く。“Reborn、Reborn〜”のフレーズが印象的だ。
04鈴懸 (すずかけ)の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの
織田哲郎によるハツラツとした2ビート風ポップ・ロック・サウンドや“チャンチャン〜”などのかけ声が楽しい。妹みたいな君の成長を綴った、松井珠理奈がセンターの34thシングル。タイトルの公式略称は“鈴懸なんちゃら”。
05前しか向かねえ
35枚目のシングルはセンターを務めた大島優子の卒業前ラスト・シングルということもあり、新たな旅立ちへのエール・ソングに。しんみり涙よりも明るく笑顔で、という大島らしさを意識した青春ポップ・ロックとなっている。
06君の瞳はプラネタリウム
センチメンタルと清々しさが行き来するメロディアスな展開が、じわじわと心を染めていく。瞳を星空にたとえ、今は微かな光だけれど、きっと君を輝かせるポラリスになるという想いを語る。研究生による優しく健気なヴォーカルが初々しい。
072人はデキテル
艶やかなサックスで幕を開ける小嶋陽菜と北川謙二によるデュエット・ソング。色香ムンムンなムード歌謡だが、寸劇風のセリフ・パートも含め、笑いの要素満載のコミカルなカップル・ストーリーをクソ真面目にやるから面白い。秋元康らしい「雨の西麻布」的なテイストだ。
08ハート・エレキ
架空バンド“The G.FINGERS”という設定も含め、グループサウンズを意識した33rdシングル。人差し指で愛のビームを放つポーズやリフレインするコーラスなど、“キメ”どころも満載。センターの小嶋陽菜の歌唱も曲風に似合っている。
09心のプラカード
「恋するフォーチュンクッキー」同様、一緒に踊れるをコンセプトとした37thシングル。センターの渡辺麻友の可憐さを活かしたカラフルなディスコ・ポップ風サウンドに乗せ、なかなか言い出せないシャイな恋心を綴る。“アイヤイヤイヤイ”のコーラスも初々しい。
1047の素敵な街へ
ズンズンと刻むビートが元気という推進力を生む、Team 8によるダンス・チューン。メンバーが北海道から沖縄まで47都道府県名を楽しくコールしながら、全国へ笑顔を届けようという明るいメッセージを送ってくれる。
11選んでレインボー
てんとうむChu! によるラヴリーなダンス・ポップ。少女隊「フォーエバー」あたりを思わせる80年代アイドル歌謡風のトラックも含みながら、7人のうち誰が好き? とキュートに問いかける。“レインボー、レインボー”のフックに萌えキュン必至。
12恋とか…
街が見える高い丘で夕日が落ちるまで一人過ごしながら、寂しさを実感する僕。君は今頃、恋とかしてるのかなあと物思いに耽る心境を、ノスタルジックながら温もりが伝わるメロディで綴る。しっとりとしたミディアム・ポップ・チューンだ。
13愛の存在
彼女らの成長を印象的に記録した映画『DOCUMENTARY of AKB48〜』主題歌。挫折と成長を描く映画の世界観に沿った、チクッとした痛みと前進するパワーが同居した青春歌謡ポップだ。希望に目を輝かせる姿が浮かぶポジティヴな歌唱が魅力。
[Disc 2]
01Conveyor
何の疑問も持たずに押し流されるまま生きるなんてゴメンだと、自分らしさを持つ大切さを説くメッセージ・ソング。キャッチーなバンド・サウンドと伸びやかな“コンベアー”のフレーズが耳に残る。横山Team Kによる活力あふれるポップ・ロックだ。
02清純フィロソフィー
小嶋真子をセンターに配した、峯岸Team 4にとって初のチーム曲。制服を脱ぐまでは清純でいたいという心情を綴る。アース・ウィンド&ファイア「ファンタジー」を思わせるイントロから一転、センチメンタルな青春ポップへと展開する、切なくも爛漫な作風が魅力だ。
03へなちょこサポート
チアフルでリズミカルなサウンドに乗せて、辛いときは一緒にいてあげるからとささやかにエールを送るTeam 8の面々が愛らしい。初々しい歌声は一見頼りなく感じるものの、その一途で真摯な想いに勇気をもらえるはずだ。
04彼女
宮脇咲良によるソロ。ここでいう彼女は再会を誓った親友のこと。夢のステップへ駈け上がり胸を張れるくらいになるまでは絶対会わないと誓う健気な思いを、ダンサブルなユーロビート・ポップで描く。正統派アイドル風のクセのない明るい歌声も印象的だ。
05ダウンタウンホテル100号室
ジャズ・ファンクの要素を組み込んだ艶やかなR&Bチューン。本当に愛する人に出会うまでは相手は誰でもいいと手招きする女性を、やや背伸び感ある歌唱で描く。そのアンバランスも魅力だ。歌うのは岡田奈々、木崎ゆりあ、宮前杏実、武藤十夢ら7名。
06セーラーゾンビ
テレビ東京系ドラマ『セーラーゾンビ』主題歌で、渡辺麻友、横山由依、岩田華怜が演じる劇中アイドル・グループ“ミルクプラネット”が歌う。制服姿の可愛すぎる君に狙われたいという愛しい気持ちを綴る。陽気で元気なダンス・ポップだ。
07純情ソーダ水
渡辺麻友のイメージにピッタリの王道アイドル・ポップス。心を弾ませるコーラスや瑞々しいメロディラインに乗せて、かつては純情過ぎて気づかなかった家庭教師の彼への淡い恋心を歌う。タイトルどおりピュアな歌唱に胸がキュンとなる。
08愛と悲しみの時差
AKB48と兼任するNMB48の人気メンバー、山本彩によるソロ・ナンバー。叙情的で和風なメロディラインに乗せて、失恋後に胸に去来する元彼への“愛”の存在について語る。こざっぱりした潔く爽やかなヴォーカルが印象的な歌謡ポップスだ。
09Birth
数字の羅列のコールやピコピコしたテクノ・ポップ・サウンドなどチープな色合いだが、実は生きることを諦めかけた若者たちへの真摯なメッセージ・ソング。今日から新しい自分に生まれ変わってやり直そうと問いかける。歌うのは、田島芽瑠、朝長美桜、西野未姫ら11名。
107回目の「レミゼ」
タイトルの“レミゼ”とは、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のDVDのこと。かつて元彼と一緒に観たDVDを何度も借りて、当時のことを思い出して寂しくなる女の子を小嶋陽菜が好演。甘酸っぱくも切ない麗しいポップスに仕上げている。
11Oh!Baby!
高橋Team Aによるハツラツとしたミディアム・ポップ・チューン。ワンDやカーリー・レイ・ジェプセンあたりの快活さとAKBらしいガーリーなテイストを、スクラッチなどをアクセントにミックス。やや謙虚で卑屈ながらも、君と出会えた幸せを高らかに歌いあげる。
12ここがロドスだ、ここで跳べ!
イソップ寓話『ほら吹き男』を元にした成句を冠した、4thアルバムのタイトル曲。ああだこうだ言ってないで今ここでやってみろ! という秋元康からの厳しくも優しいメッセージ・ソングだ。キャッチーなポップ・サウンドが勇気と元気をくれる。