ミニ・レビュー
8人組アイドル・グループのセカンド・アルバム。ヒャダイン、松隈ケンタ、池田貴史、尾崎世界観、吉田哲人といった作家陣を迎え、寸劇からサンバ、ハウス、音頭まで、過剰なギミックに満ちたごった煮サウンドを展開。それでも品と育ちの良さを感じさせるのが彼女たちらしいところ。★
ガイドコメント
“キング・オブ・学芸会”こと“エビ中”の2015年1月28日リリースの2ndアルバム。「未確認中学生X」「バタフライエフェクト」「ハイタテキ!」といったシングルを含む、バラエティに富んだ仕上がりとなっている。
収録曲
01私立恵比寿中学の日常 (Prologue):二乗の事情
2ndアルバム『金八』の幕開けを飾るプロローグで、アインシュタインの相対性理論を説明せよ、という授業のひとコマを描いたミニ・ドラマ。“二乗”と“事情”の勘違いからとんでもな解釈へと繋がる“学芸会”的芝居がユニーク。
02金八DANCE MUSIC
前山田健一が作詞曲を、さつき が てんこもりが編曲を手がけたダンス・チューン。ここでいう“金八”とは金曜8時、つまりテレビ朝日『ミュージックステーション』。国民的音楽番組への出演を願う赤裸々すぎる心情や同番組テーマ曲の引用にニヤリ。
03未確認中学生X (金八ver.)
「ツァラトゥストラはかく語りき」を引用したオープニングから壮大なSF色満載の5thシングル。“ずっきゅんずっきゅん 胸にくる”という中毒性の高いサビのフレーズで押すアップ・テンポのダンス・チューンで、ラッキィ池田が手がけた振り付けも印象的。
04テブラデスキー〜青春リバティ〜
“たむらぱん”こと田村歩美が楽曲を手がけたパンク精神あふれるロック・チューン。サウンドに呼応するように、重い荷物を投げ飛ばして“手ぶらで”全力疾走しろ、という熱いメッセージが詰まっているが、リフレインや言葉遊びを施した語感の良さもキュート。
05キングオブ学芸会のテーマ〜Nu Skool Teenage Riot〜
彼女たちのテーマでもある“キングオブ学芸会”をタイトルに据えたアップ・チューン。メタル・テイストを取り込んだ超攻撃的サウンドを中心に、サビでは激キャッチーに変貌。“永中(=永遠に中学生)”精神を、大人への反抗を取り入れつつ落とし込んだ歌詞も強烈だ。
06私立恵比寿中学の日常 (Interlude):早弁ラップ
DJみそしるとMCごはんが手がけた2分弱のインタールード。授業中に“早弁”する乙女の心情を、チープなトラックとキュートなラップで描いたヒップホップ・ナンバー。喋っているかのようにスムーズにラップする姿は堂に入っている。
07バタフライエフェクト
フジテレビ系“ノイタミナ”枠アニメ『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』オープニング・テーマに起用の6枚目のシングル。シリアスなバンド・サウンドを基調にしたクールめでシンプルなロック・チューンだ。中山、小林加入後初のシングルで、二人の初々しい歌唱もポイント。
08ちちんぷい
イントロのハイパーなシンセ・リフが印象的なメロコア風味のロック・チューン。ヴォーカルにザラザラとしたエフェクトがかかっており、吐き捨てるように歌う姿はパンク・ロッカーそのもの。なかでも、小林歌穂の“ガキだからピカるん答えもあるぜ”という叫びは強烈。
09U.B.U. (金八ver.)
「頑張ってる途中」に続き、TOKYO MX『エビ中の永遠に中学生(仮)2』をきっかけに制作されたポップ・チューン。ホーンを交えた爽やかなサウンドに乗せて、“U.B.U(ウブ)”な魅力を全力で発揮している。レキシ「きらきら武士」風のブリッジも楽しい。
10フユコイ
田仲圭太が作詞曲を、松隈ケンタが編曲を手がけたドラマティックなロック・チューン。卒業を間近に控え、想いを伝えられないまま離れてしまう切ない恋模様を、ピアノを効果的に用いたサウンドに乗せて描く。中山莉子がつぶやく“好きだよ”の破壊力が抜群だ。
11PLAYBACK
ピアノを用いたドラマティックなサウンドが印象的なロック・チューン。卒業を間近に控え、想いを伝えられないまま離れてしまう切ない恋模様を、焦りにも似た感情を落とし込んだエモーショナルなメロディに乗せて描く。中山莉子がつぶやく“好きだよ”の破壊力が抜群だ。
12幸せの貼り紙はいつも背中に
大人になっても、君のままでいて……輝ける時間を惜しみつつ、先に進んでいく大切な人へエールを送るような歌詞が染みる。Jazzin' parkが制作。ハウス的アプローチを軸に、透明感と高揚感のあるメロディでコーティングしたダンス・チューン。
13ハイタテキ!
TAKUYA(ex.JUDY AND MARY)制作、要所に“第九”を引用した7thシングル。タイトルは“排他的”ではなく“歯痛的”。歯の痛みにも似た恋愛の辛さや葛藤を、自由なスタイルで歌う。“2次元相手に夜更カッション”などトリッキーな言語感覚も魅力。
14大漁恵比寿節
廣田あいかの語りで幕を開ける、タイトルどおり“音頭”的なテイストをふんだんに取り込んだロック・チューン。“ヤーレン ソーラン”のサビや“そいや!そいや!”の合いの手など、男くさいフレーズをワイルドに歌い上げるメンバーが魅力的だ。
15買い物しようと町田へ
『サザエさん』を思わせるタイトルからは意表を突く、ラテン・テイストをたっぷりと含んだアップ・チューン。歌謡曲風のメロディと鬼頭哲の手によるホーン・セクションで、“日曜日”ならではの葛藤をキュートに歌い上げている。
16私立恵比寿中学の日常 (Epilogue):蛍の光 (Demo)
尾崎世界観(クリープハイプ)が手がけたエピローグは、シンプルなギター1本の伴奏と全員の歌を一発録音で収めたという素朴かつ感動的なナンバー。ヴォーカルの粗さを含んだ空気感が最大の聴きどころで、後半に向かって得体の知れないパワーを帯びていく。