ミニ・レビュー
23曲入りの完全版““Naked””から14曲を抜粋した通算18作目。小林武史の手を離れたセルフ・プロデュース曲が大半を占め、アレンジにロック色が濃く、かつてなく生々しいバンド・サウンドが心を震わす。大曲「進化論」をはじめ、思想と生活感を結びつける桜井和寿独自の世界観の描写はもはや名人芸の域に。
ガイドコメント
新たな音楽の可能性を追求して制作した23曲収録の『REFLECTION“Naked”』から14曲を厳選。“月9”ドラマ『信長協奏曲』主題歌、コーセー「エスプリーク」CMソング、映画『リアル〜完全なる首長竜の日〜』主題歌など話題性豊富な一枚。
収録曲
01未完
ストリングスを取り入れたアップ・テンポのポップ・チューン。うまくいかない毎日にもがきながら、“さぁ行こうか 常識という壁を越え”と力強いメッセージを、がなるようなヴォーカルで叩きつける。要所で登場する“らしい”比喩も見事。
02FIGHT CLUB
ブラッド・ピット主演の映画『ファイト・クラブ』をモチーフにした疾走感のあるロック・チューン。映画が公開された99年を舞台に、“仮想敵”と戦っていた当時の心境を振り返るような歌詞が印象的。伸びやかなサビのメロディが印象的。
03斜陽
行進曲のようなスネアのビートやストリングスを用いて、追い詰められていくような緊迫感のあるサウンドを作り上げたアップ・チューン。どこか民俗音楽を思わせるメロディに乗せ、分厚いコーラスとともに伸びやかな歌声を響かせる。
04Melody
コーセー「エスプリーク」CMソングとして起用されたミディアム・アップのポップ・チューン。ブラスなどをふんだんに取り入れた華やかなサウンドに負けぬ、どこまでも美しいメロディが最大の魅力で、その旋律は世界を“バラ色”に変えていくよう。
05蜘蛛の糸
「抱きしめたい」「Candy」などをはじめ、彼らの魅力のひとつといえる、ピアノを中心とした美しいバラード。“恋の終わりの虚しさ”を考えながら、君へと向かう“蜘蛛の糸”に巻き込まれていく心情を歌った歌詞も真っ直ぐに心に響く。
06Starting Over
細田守監督によるアニメーション映画『バケモノの子』主題歌として話題を集めたミディアム・バラード。恐怖や不安を元に、頭の中で大きくなっていく感情を“モンスター”にたとえ、それに打ち勝っていく姿をドラマティックなメロディで描き出す。
07忘れ得ぬ人
ピアノやストリングスを取り入れたサウンドをバックに、“忘れ得ぬ人”への想いをストレートに歌い上げた感動的なラヴ・バラード。ファルセットを多用した美しいメロディの魅力を最大限に引き出す計算されつくしたアレンジはもちろん、桜井が圧倒的な表現力を見せ付けている。
08Reflection
18枚目のアルバムの中盤に配されたタイトル曲にして、2分強のインストゥルメンタル。映画『Mr.Children REFLECTION』のテーマ曲でもあり、桜井自らが奏でるピアノが静謐な空気を作り上げている。
09fantasy
BMW「アクティブ ツアラー」CMソングとして放映、憂いを帯びたメロディとドラマティックなサウンドや言葉が絡み合った、彼らならではといえるポップ・チューン。なかでも“猟奇殺人”“撃ち殺して逃げた”など、物騒な言葉が並ぶ歌詞は印象的。
10REM
配信シングルとして発表された映画『リアル〜完全なる首長竜の日〜』主題歌。エッジの立ったギターのイントロから、彼らのロック/パンクな一面が全開。桜井のヴォーカルもこれまでにないほど攻撃的で、怒りにも似た感情を爆発させている。
11WALTZ
ギターのアルペジオを中心に、陰鬱な雰囲気に満ちたサウンドを構築したナンバー。“柔軟さ”という長所を“自分がないだけ”と斬るなど、社会に適応するために最適化していく世間や人々への痛烈な皮肉を交えた歌詞が印象的だ。
12進化論
「HERO」などと同路線といえる、感動的なミディアム・バラード。生存競争の結果、長い時間をかけて意思が繋がっていく“進化論”を引き合いに、“この世界を明日も廻していこう”と桜井ならではのロジックを交えつつ歌い上げる。
13幻聴
雄大なピアノを中心に、複雑なアンサンブルで豊かな広がりを持たせたポップ・チューン。スケールの大きなメロディに、生き様を綴ったような歌詞を詰め込むように乗せており、“切り札を隠し持ってるように思わせてるカードは 実際何の効力はない”のフレーズが印象的。
14足音〜Be Strong
フジテレビ系ドラマ『信長協奏曲』主題歌にして、初のセルフ・プロデュースとして注目を浴びた35枚目のシングル。アレンジやメッセージは名曲「終わりなき旅」を思わせるもので、“今という次代は言うほど悪くない”とつぶやきつつ、一歩一歩進んでいく姿を歌う。