ミニ・レビュー
[Alexandros]と改名してから初のアルバムとなる本作からは、覚悟が感じられる。タイアップ曲が多く耳なじみが良いという面もありながら、アルバム全体のトーンが統一されバランス良し。よりハードに、よりアグレッシブに――彼らの特性を生かしきったキャリア最高の傑作と言ってもいいだろう。
ガイドコメント
2015年6月17日リリースの5thアルバム。ヒット・シングル「ワタリドリ/Dracula La」のほか、インディ時代のシングル「Run Away/Oblivion」「Adventure/Droshky!」も収録。バンドの勢いを感じる快作。
収録曲
01ワタリドリ
映画『明烏』主題歌となった10thシングル。出航の時のような意気揚々としたギターとグイグイと突き進むドラムが導くバンド・サウンドに乗せ、あなたを未来へ運ぶために羽ばたくと声高に歌う。希望に満ちたポジティヴな曲風が印象的だ。
02Boo!
ローファイなアレンジのなかを突っ走る早回しのような歌い口が耳を引く。“来 来 来……”のキャッチーなフックがノリのギアを高めるが、実は悪口を叩くヤツラへ最高の曲を届けてやるという反骨心に満ちた詞世界を展開。エキサイティングなアッパー・ロックだ。
03ワンテンポ遅れたMonster ain't dead
徹頭徹尾アグレッシヴに駆け抜けるロッキン・グルーヴが気持ちいい。“改名”させられた過去の痛みを倍返し、出だしが遅れたってのし上がってやるぜという反発心がエネルギッシュなサウンドに爆発。痛快なアッパー・ロックだ。
04Famous Day
自分が自分たりえる場所を探すも見つからない日常に嘆き、もがき、いらだつ心境を語ったナイーヴなメッセージ・ソング。性急なドラミングにせき立てられるようなギター・ロックで、川上のファルセットも印象的だ。
05Adventure
気取らない“ハロー、ハロー…”の語り掛けで幕を開ける爽快なミディアム・ロック・チューン。どんな災難や困難にぶち当たっても、いつだって歌を歌ってきた……それこそが僕たちの“Adventure”=冒険なんだと、バンドの矜持を綴る。9thシングル。
06can't explain
全編英語詞で綴られたエモーショナルなギター・ロック・チューン。“can't explain”(説明できない)とやや重く発しながら、次第に自分自身を信じたいんだという葛藤を声高に問いかける。終盤でのヴォーカル・エフェクトも好演出。
07Buzz Off (Interlude)
5thアルバム『ALXD』の中盤に配された約1分強のインタールード・トラック。レコーディングの生の風景がうかがえるデモ音源風のトラックを、アウトロを加工してスキットに。全編英語詞で展開するワイルドなロックは未完成ながら、今後の発表を期待させる出来。
08Oblivion
「Run Away」との両A面となった8thシングル。過去に興味はない、未来のために自らの生命を活かすんだという強い熱意を、一人の少年のストーリーに照らして綴る。麗らかな鍵盤と推進力あるバンド・サウンドが心地よい風のようだ。
09Leaving Grapefruits
ポップでリズミカルな鍵盤のループが印象的なミディアム・チューン。フックでの一気に高まる川上洋平のファルセットに悲喜こもごもが凝縮されているよう。どこかしっくりこないまま過ぎていった日々を嘆くロスト・ラヴ・ソングだ。
10Dracula La
歯切れ良いビートと譜割り、なでまわすような“ドラキュラドラキュラ”のフレーズなどキャッチーな要素が満載。ポップで楽しいリズムで展開するが、彼から君を奪いたいという略奪愛を歌うギャップも魅力。ドラマ『女くどき飯』主題歌に起用の10thシングル。
11Droshky!
「Adventure」との両A面となった9thシングル。全編英語詞のエネルギッシュなアッパー・ロックで、ホーンを絡めたバンド・サウンドやヴォーカルがグイグイと貪欲に突き進む展開がゾクゾクする。何が起ころうとも人生を楽しむぜという叫びが痛快。
12Dog 3
ここで言う“犬”とはペットのように飼い慣らされた自分自身のこと。誰のために躾られているの? と自問自答し、飼い主に刃を向けると思いきや“散歩に連れてって”と懇願するオチも意表を突いて面白い。スピーディでヘヴィなパートも導入したグルーヴィ・ロックだ。
13Run Away
「Oblivion」とのダブルAサイドとなった8thシングル。オーガニックなEDM風の冒頭部など、エレクトロを導入した斬新だが爽やかなトラックが特色。自身を満たすものを探すために群から逃げ出すんだと歌う一癖ある描写が彼ららしい。
14Coming Summer
初夏の朝日に照らされる街並みを想起させるような、静寂から躍動へと移りゆく展開が強く胸を打つ。今以上を望むなら前へ進み、大地の風に傾けるべきと語りかけるメッセージ・ソングだ。美しく穏やかな波打ち際のようなアウトロも妙味。