ミニ・レビュー
お騒がせ者ジャスティンの3年ぶり、5作目のアルバム。スクリレックスとディプロが参加するなどEDM路線をさらに推し進めながらも、狂騒的にならずクールなサウンドメイクにウィスパー・ヴォイスを多様するなど繊細さが際立つ。汚名はきっちり音楽で返上した、大ヴォリューム&大満足の復帰作だ。
ガイドコメント
前作『ビリーヴ』から約3年半ぶりのリリースとなる、ジャスティン・ビーバーの3rdアルバム。全米1位を記録した先行シングル「ホワット・ドゥ・ユー・ミーン?」をはじめとした楽曲を収録している。
収録曲
01MARK MY WORDS
ハミングとシンセの音で構成されたビートレスな一曲。浮遊感のあるヴォーカルのエフェクトが、深い音世界へといざなっていく。“僕はウソの人生を生きたくないんだ”という歌詞がジャスティンの奔放さと素直さを表わしているよう。
02I'LL SHOW YOU
エキゾな旋律の繰り返しと細かく刻まれたビートが印象的なダンス・トラック。BPM 90ほどのリラックスして横ノリに身体を任せられるミドル・テンポに仕上がっている。“僕の人生は映画”というメタ的な視点で描かれた歌詞にも注目。
03WHAT DO YOU MEAN?
古時計が時間を刻むようなビートで始まるイントロから遊び心があふれている。身体が動き出すような跳ねるリズムにあわせて恋人への思いをしっとりと歌い上げ、ラグジュアリーで甘いシンセの音色も恋模様を盛り上げている。
04SORRY
EDMシーンの鬼才、スクリレックスがプロデュースを担当。速回しのセクシーな女性ヴォーカル・ネタが効果的。軽快なシンコペーションのダンス・チューンだが、歌詞は別れの瀬戸際に立たされた男の改心を歌ったナイーヴな内容。
05LOVE YOURSELF
単純なリフを爪弾くミュートがかったギターにつられるようにしっとりと歌い出す。ビートも音数も少ないシンプルな作りゆえ、混じりっ気ないヴォーカルが堪能できる。自分のことが好きなら帰って一人で遊んでれば? と元カノに言い放つような歌だ。エド・シーランとの共作。
06COMPANY
80年代のブラコンを思わせるリズムの組み立てとチープだが印象的なリズムマシンの音が新鮮。ところどころで挿入されるリバーブの効いたスネアがいいアクセントになっている。ジャスティンが物憂げに歌うミドル・バラードだ。
07NO PRESSURE
ビッグ・ショーンをフィーチャーしたスロー・バラード。哀愁のあるギターのループと終始一定のリズムを刻むシンプルなブレイクビーツがヒップホップ的。ビッグ・ショーンの煙たい声質とジャスティンの汚れない声質とのコントラストがはまっている。
08NO SENSE
テキサス出身のラッパー、トラヴィス・スコットをフィーチャー。トラップ調のビートと印象的なシンセのリフレインが展開されるが、トラップほどダウナーにならずになっているのはジャスティンのポピュラリティゆえか。君が側にいなければ意味がないと歌うラヴ・ソングだ。
09THE FEELING
女性シンガー、ホールジーが客演。マイナーなメロディラインから息が詰まりそうなほど重たいビートに合わせてジャスティンがヴォーカルを披露するが、対照的にフックではホールジーが抜けの良いメロディを歌い上げる。恋してるのかどうか分からない気持ちを自問自答する。
10LIFE IS WORTH LIVING
ピアノとヴォーカルだけで構成されたシンプルなバラード・ナンバー。エコーがかかったヴォーカルで“人生は生きる価値がある”と力強く説く姿は、どこか神々しくも聴こえる。ピアノの音も伸びやかで耳に心地よく響いてくる。
11ホウェア・アー・ユー・ナウ (feat.ディプロ&スクリレックス)- WHERE ARE ワ NOW? -
スクリレックスとメジャー・レイザーことディプロをフィーチャー。ビートのない状態から一気に性急なビートが展開され、スクリレックスとディプロの“ジャック・U”コンビの遊び心あふれる不思議な音色の効果音も印象的。君が必要なのにどこにいるんだい? と繰り返す歌だ。
12CHILDREN
スクリレックスがプロデュースしたダンス・チューン。これぞスクリレックスと呼べるハイテンションとナイーヴが同居したEDMアレンジのトラックにあわせ、子供たちの未来を案じた歌詞をジャスティンが力強く歌い上げる。
13PURPOSE
アルバム・タイトル曲。これまでの人生を振り返り、大切な人への感謝の気持ちをシンプルに実直なヴォーカルで歌う。終盤でこもった音で流れるジャスティンの語りがノスタルジック。ピアノの伴奏も胸を締め付ける。
14BEEN YOU
シンプルで力強いビートとクリアなシンセの音が心地よいエレクトロ・ダンス・トラック。乗りやすいグルーヴとキャッチーなサビのメロディに一気に引き込まれ、思わずリズムをとってしまいそうだ。恋人との別れを悔やむ男の湿っぽさを豊かなヴォーカルワークで表現している。
15GET USED TO ME
歯切れのいい4つ打ちのビートでスムースに移動するベース・ラインが印象的なミディアム・ダンス・チューン。リバーブで倍増された深みのあるエレクトロな上ネタの音像が耳に心地よく響く。ヴォーカルは伸びやかな歌声を披露している。
16WE ARE
ナズをフィーチャーした一曲。90年代ヒップホップを思わせる煙たいシンプルなトラックの上でラップするナズのスタイルは、さすが堂に入っている。好対照なジャスティンのウェットなヴォーカルとナズのラップのバランスも、楽曲のいい味付けに。
17TRUST
流れるように奏でられるピアノの音が印象的なミディアム・チューン。愛することや信頼し合うことの大切さを切々と歌うメッセージ・ソングに仕上がっている。複雑な展開をみせるメロディラインをしっかりと歌いこなすヴォーカルは聴きごたえ十分。
18ALL IN IT
爽やかなレイドバックしたギターのカッティングからはじまるスムースな一曲。神秘的に聴こえる靄がかかったような多重コーラスがリラックスさせ、要所で入るリリカルなピアノのリフレインも楽曲に彩りをそえている。本気でやれないことに価値はないと熱く語る。
19HIT THE GROUND
裏打ちのビートがグルーヴィなミディアム・ダンス・チューン。EDMが持つ高揚感を持ち合わせつつも、失恋の痛手から早く立ち直りたいという願いを大人っぽくクールに歌い上げる。アルバム『パーパス』のボーナス・トラック。
20THE MOST
ブレイクビーツとピアノのみという簡素な構成が印象的。豊かな表現力が備わったヴォーカルで恋人を探し求める男の悲哀を表現した、虚飾でごまかさないシンプルなラヴ・ソングに仕上がっている。
21HOME TO MAMA
シンコペーションの効いたギター・リフの上に乗るかすれ気味のヴォーカルから切迫した思いと色気が伝わってくる。スキャットとブルージィなギター・ソロの丁々発止のセッションも聴き応え充分。君をママに紹介したいと語るラヴリーなナンバーだ。