ミニ・レビュー
20枚目記念ということで、2007年から2014年までのシングルのカップリング・オリジナル曲も収録したボリューム豊富なシングル。越智志帆の歌は陰性陽性に限らず、生身の体温と脈動が感じられる活力の歌の歴史だと実感。佇まいは粋ながら女性らしさにも満ちた世界は彼女の大いなる武器だ。
ガイドコメント
2015年12月2日リリースの20thシングルは2枚組。DISC 1にはフジテレビ系ドラマ『無痛〜診える眼〜』主題歌「黒い雫」などを収録。DISC 2は2007年から2014年までに発表されたカップリング曲を網羅している。
収録曲
[Disc 1]
01黒い雫
フジテレビ系ドラマ『無痛〜診える眼〜』主題歌となった記念すべき20thシングル。後関好宏のバリトンサックスをフィーチャーした、どこか妖しげな雰囲気が立ち込めるロック・チューン。闇があるからこそ光が輝くんだと、色気のあるヴォーカルで歌い上げる。
02新世界へ
ASA-CHANGをドラム&パーカッションに迎え、サイケデリックなギターのフレーズとともにトリッピンなサウンドを作り上げたロック・チューン。フワフワとしたヴォーカルもあいまって不思議な高揚感を醸し出し、“新世界”へと飛べそうな気分にさせられる。
03I Love Rock‘N'Roll
ジ・アロウズの世界的な名曲のカヴァーで、同バンドのアラン・メリルがギターで参加。ロックンロールへの愛を叫ぶシンプルな楽曲ゆえ、バンドの生々しいグルーヴや熱いギタープレイ、そして越智志帆の破壊力あるヴォーカルが映える。
04Beautiful
2015年ツアー東京国際フォーラム公演でのライヴ音源。“世界で一つの 輝く光になれ”と歌うサビの、じわじわと上がっていくメロディの高揚感は格別。傷ついても、涙を流しても自分を信じて突き進む強さを与えてくれる。
05On Your Side
2015年〈WHITE TOUR〉東京国際フォーラム公演で披露された2015年発表のシングル。広い会場を舞台に、ピアノと歌だけで冒頭の美しさに耳を奪われる。“君の笑顔、君の体温、守れるなら僕は風になる”と、大きな愛を歌いあげる姿は感動的。
[Disc 2]
01孤独のハイエナ
妖しい街並みを感じさせる、気だるげな雰囲気をまとったサウンドが妙に心地いいミディアム・アップ。他人に興味を持たない“ハイエナ”たちが闊歩する街をサバンナにたとえ、痛烈に皮肉を交えつつ高らかに歌う。コンガやシェイカーがいいアクセント。
02凛
ピアノをフィーチャーしたスケールの大きなロック・バラード。口にすると恥ずかしくなるようなシンプルな感謝の言葉を、歌という力を借りて伝える姿がどこか愛らしい。まさに“凛”とした、ややストレートな歌唱が新鮮に響く。
03愛と感謝
ゆったりとした心地よいテンポで軽快に進む、シンプルなロックンロール・ナンバー。平凡な日々に願うことは、君とともにいること。飾らないサウンドにピッタリの願いを、杉並児童合唱団も参加した分厚いコーラスとともに歌い上げる。
04Perfect Lie
甘いキスを交わすのなら完璧な嘘で私を騙してよ……ピリオドを打つことができず、それでも不確かな恋に身を任せる乙女心を歌った切ないバラード。窓の外に降る雨を連想させる、エフェクトをかけたドラムが秀逸。囁くようなヴォーカルも新鮮だ。
05Welcome To The Rockin' Show
タイトルどおり、ロックショーの幕開けを告げるような軽快なロックンロール・ナンバー。ハモンドが鳴り響き、60〜70年代のオールドタイミーなロックンロールに強い敬意を感じる仕上がり。熱を帯びる演奏陣に負けぬシャウトを響かせる。
06Rescue Me
クハラカズユキ、TOKIEら豪華な演奏陣が参加したロック・ナンバー。ジャキジャキと刻むギター・リフを切り裂くサックスの音でスタート。仕事が手につかぬほど、眠りにつけないほど君のことを考えてしまう状況に、“Rescue Me”と助けを求める。
07プリマドンナ
ゆったりとしたテンポで刻むロマンティックなリズム&ブルース。広い舞台で舞うプリマドンナを夢見る少女を主人公に、夢に向かって歩んでいく決意を歌う。ハイトーンを多用しつつも、決して細くならない越智志帆のヴォーカルは見事。
08Different Ways
パーカッションが効果的に響く素朴なサウンドを中心にした、ミディアム・テンポのハートフルなポップ・チューン。軽やかなサウンドとは対照的に、歌われるのは“別々の道”を歩むことを決めた女性の心。繊細な心理描写が胸に響く。
09I My Me Mine Mine
マシータ(ds)の凶暴なカウントで幕を開けるワイルドなロックンロール。シンプルなリズムの決めやベース&ギターとのユニゾンなど、バンドの“おいしいところ”を随所に入れながら、悶々とする思いをぶつける。レコードのような音もいい感じ。
1028
弦一徹ストリングスや蔦谷好位置(p)の繊細なアンサンブルによって、夏にピッタリの切ないサウンドスケープを描き出したアップ・テンポのポップ・チューン。このままじゃダメだと感じつつも、君のもとへ戻ってしまう。繊細な女心を巧みな表現力で歌い上げる。
11終わりなきゲーム
レッド・ツェッペリン「移民の歌」を思わせるギター・リフで幕を開けるハードなロック・チューン。ギターを中心に洪水のように音が押し寄せるぶ厚いアンサンブルのなか、ロングトーンを中心としたサビの高らかなヴォーカルが心地よく響く。
12透明人間
穏やかなギターのアンサンブルと打ち込みのビートを中心としたドリーミーなナンバー。ある日から心が通わなくなってしまった胸の痛みを“透明人間”にたとえ、切ない想いを吐露する。ひとりごちるような美しいヴォーカルに耳を奪われる。
13万華鏡と蝶
チキチキと鳴るタンバリンをきっかけに、ギター&ベースのユニゾンのリフが切れ込んでくる無骨なロック・チューン。一部を除きほぼ英詞で綴った映画『闇金ウシジマくん Part2』のイメージソング。シンセの怪しげサウンドがいいアクセント。
14The Long Way Home
新しい今を、新しい道を信じてみよう。過去を思い返しつつ、新しい一歩を踏み出す強さを歌ったエモーショナルなバラード。生バンドと唐突にカットして打ち込みのビートを一瞬挟むなどきめの細かいアレンジを施しつつ、遠くに見える希望を思わせる温かなサウンドをつむぐ。
15You You
種子田健の肉感的なベースを下敷きに、パーカッションやギターで軽やかな味つけを施したポップ・ロック・チューン。コール&レスポンス向きといえるサビの“All up to you you”のフレーズをはじめ、大きな会場を揺らす姿が目に浮かぶ。
16クローゼット
EDM的なビープな4つ打ちビートが新鮮に響くアップ・テンポのナンバー。日々のなかでさまざまな荷物を抱え重くなってしまった姿に、“クローゼットのなかを全部捨ててやれ”と、ユニークな表現を交えつつ“リセット”を促してくれる。
17愛をこめて花束を (Piano ver.)
2008年発表、彼女の代表曲といえる4枚目のシングルを、蔦谷好位置のピアノのみをバックに歌い上げたヴァージョン。自分と同じ小さな部屋で生声で歌っているかのように感じさせる録音で、声の迫力や魅力を完璧に閉じ込めている。