ミニ・レビュー
療養から復帰し紅白出場、俳優としても順風満帆な星野 源の4枚目のアルバム。自身のルーツであるジャズやソウル、R&Bと彼らしい日常を切り取ったフォーキーな感覚を見事に融合。ポジティブ度合いを上げた歌詞もあいまって、完全にオリジナルなポップ・ミュージックを作り上げている。
ガイドコメント
前作『Stranger』から2年半ぶりの4thアルバム。フジテレビ系ドラマ『心がポキッとね』の主題歌「SUN」や映画『地獄でなぜ悪い』主題歌「地獄でなぜ悪い」などを収録している。
収録曲
01時よ
アナログ・シンセサイザーを中心に、ストリングスなどを配した温かな体温を感じる音色が心地よいポップ・チューン。“意味もなく”流れていく時を前向きに描写した鮮やかな言葉の数々を、性急なメロディに乗せて歌う。和風の旋律も印象的。
02Week End
アース・ウインド&ファイア「セプテンバー」を思わせるソウル/ディスコ調のアレンジに、ファルセット中心の歌唱を乗せたスタイリッシュなナンバー。胸が踊る週末を描いているが、必要以上に熱く、チャラくならない歌唱が気持ちいい。
03SUN
フジテレビ系ドラマ『心がポキッとね』主題歌となった8thシングル。敬愛するマイケル・ジャクソンへの想いを綴っており、ディスコっぽい軽快なサウンドの上で、世界を照らすような君の声を聴かせて、というメッセージが高らかに響く。
04ミスユー
夏の終わりの気だるげな雰囲気をあらわしたようなゆったりとしたテンポのなか、細かくリズムを刻む伊賀航のベースが映えるミディアム・スロー。大切な人との別れの瞬間、そして新たな始まりを描いた鮮やかな言葉の数々は見事。
05Soul
隙間を存分に用意したアレンジのうえで、フェイクを多様したソウルフルな歌唱が響くミディアム・ナンバー。シンガロングなフレーズを配したシンプルなサビを持ちつつ、“海を見た日の 神は幼い”など、随所に詩的な表現が散りばめられている。
06口づけ
自身の歌とギターで構成されたシンプルな弾き語り。手癖ともいえる耳にすっとなじむような心温まるメロディをたっぷりと詰め込んだミディアム・チューンで、大切な人と歩んでいく日々を綴った歌詞も胸にじんわりと響く。
07地獄でなぜ悪い
自身も出演する、園子温監督の同名映画の主題歌として書き下ろされた6枚目のシングル。ドリフ的なバタバタ感とオールディーズなブルース感をないまぜにしたような、心弾むサウンドが魅力。自身の体験を描いたようなリアルな情景とファンタジーが混ざった歌詞も楽しい。
08Nerd Strut (Instrumental)
ギター、マリンバ、ドラム、ピアノ、三線、ハモンドオルガンを自身が演奏、ベースで細野晴臣が共演した1分半にも満たないインストゥルメンタル・チューン。のどかなドタバタ劇を想起させるような、素朴なサウンドが楽しい。
09桜の森
色鮮やかなストリングスとフェンダーローズの音色で、春っぽいサウンドスケープを描き出したポップ・チューン。童話のようで、どこか色っぽい不思議な歌詞も魅力だ。ceroの高城晶平と荒内佑、片想いのオラリーといった盟友がコーラスで参加。
10Crazy Crazy
ピエール中野(ds)、ハマ・オカモト(b)、小林創(p)という豪華なバックが目を引く7thシングル。儚くも楽しいピアノのイントロが秀逸。“死”というドキッとするフレーズも用いながら、前向きな姿勢を歌う。歌詞にはクレイジーキャッツへのオマージュも。
11Snow Men
雪がひらひらと舞うような、冒頭のストリングの音色が美しいウィンター・ソング。洗練されたサウンドで進むミディアム・アップで、大人っぽい音色に呼応するように、セクシーな風景を想起させるような言葉が並ぶ。ラストのファルセットもエロい。
12Down Town
ツインドラム&パーカッションでダンサブルなリズム感を生み、コード楽器はピアノだけという編成で隙間たっぷりのサウンドを作り出したユニークな楽曲。メロディや言葉もリズミカルで、ジョギングに出かけたくなるようなナンバーだ。
13夜
夜が怖いなら、いつでもここにいるよ……野村卓史(p)、伊藤大地(ds)、伊賀航(b)という、絶大なる信頼を寄せる3人とともに深くふける夜を表現したバラード。ファルセットを交えたエモーショナルなヴォーカルがじんわりと響く。
14Friend Ship
切なさや和風な旋律をさりげなくはらんだ星野流ダンス・ミュージック。笑顔で手を振りながら、それぞれの道を歩んでいく姿こそがフレンドシップなんだ、という彼の思いが色濃く投影された言葉にグッとくる。映画『森山中教習所』主題歌。