ミニ・レビュー
英国ウェンブリーアリーナでのワンマンも大成功を収めた彼女たちによるセカンドは、米国ビルボードのアルバム・チャートでも39位という快挙を成し遂げた。アイドルとメタルを組み合わせた“コロンブスの卵”的なアイディアの面白さだけでなく、楽曲のクオリティもあいかわらず高くて楽しめる。
ガイドコメント
前作『BABYMETAL』から約2年ぶりとなる2ndアルバム。国内盤では初音源化となる「Road of Resistance」や「あわだまフィーバー」など、ライヴでの人気曲を収録している。
収録曲
01Road of Resistance
2015年発表の配信シングルで、ドラゴンゴースのギタリストのサム・トットマンとハーマン・リが参加。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」路線の高速メロディックスピードメタルにあわせ、“くじけても 何度でも 心の炎を燃やせ”と強いメッセージを投げかける。
02KARATE
アルバム『METAL RESISTANCE』のリード曲で、「メギツネ」などを手掛けたゆよゆっぺが詞曲を担当。ヘヴィなサウンドとは裏腹なキュートな声で空手をイメージした“セイヤ セ セ セ セイヤ”と祭りの掛け声“ソイヤ”のコーラスを響かせる。
03あわだまフィーバー
「ギミチョコ!!」を作曲した上田剛士が作曲、アレンジを手掛ける。“ひみつの箱 開けてみたら どこにだって飛んでいける”と夢見がちな女の子のかわいらしさを歌ったメロディラインはいたってポップ。メロディを支えるトラックは攻撃的なデジロックだ。
04ヤバッ!
スカのように性急な裏打ちのダンサブルなビートを、力強いバスドラが強靭にサポート。“違う!違う!”“気になっちゃた どうしよう”の連呼や“ピッポパッポ ピー”のフレーズは実に歌謡ロック的。その一方でラウドや間奏や“ダイ!”のシャウトでメタル要素をキープ。
05Amore-蒼星-
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でアレンジを手掛けた教頭がアレンジャーとして参加した、北欧メタル風のドラマティックで扇情的なSU-METALソロ曲。“憂鬱な雨雲破って 24時間走り続ける 走り続ける運命”と自らを奮い立たせるかのように力強く歌いあげている。
06META!メタ太郎
“メタ太郎 メタ太郎 君はヒーローさ”というヒーロー・ソングのようなメロディがキャッチー。“メタルのハートで生まれ変わるメタ太郎”のフレーズもややキッズ仕様だが、老若男女のメタルラヴァーが楽しめるある種のフォークメタルやパワーメタル風といえるのかも。
07シンコペーション
メタルコア・バンド、ARTEMAのMEGがアレンジで参加した、J-ROCKとメタルが融合したようなメロディックな曲。“この世界から 舞い飛んでゆけ”のごとく、厚い音の上昇気流に乗り外の世界に飛び出すようにはじける、メタルコア・マナーの展開が痛快。
08GJ!
グルーヴィなギターと跳ねるようなリズムが特色のミクスチャー・チューン。ヘヴィなボトムが這うヴァースも、フックでは一転してアイドルらしいキャッチーなメロディ展開に。歯切れのいい“もっともっとホラ もっともっとホラ”のBメロがクセになる。
09Sis.Anger
YUIMETALとMOAMETALによるエクストリームな暗黒デスメタル。“ざっけんじゃねーぞー”“本気じゃねーのに言い訳ばっかり”など荒々しく棘のある詞をあどけない声で歌う新機軸のブルータル・メタルだ。元ネタはメタリカ「セイント・アンガー」か。
10NO RAIN、NO RAINBOW
美しいピアノの旋律とストリングスが絡み合った壮大なバラード。情感を込めて歌うヴォーカルとツイン・ギターの情熱的なメロディが、別れを綴った歌詞をしっかりと表現した情景を浮かび上がらせる。「Say Anything」風などX JAPANオマージュの一面も。
11Tales of The Destinies
「Road of Resistance」を手掛けたMish-Moshが参加。鋼のようなハードな演奏はそのままに頻繁にテンポ・チェンジを繰り返すプログレッシヴ・メタルな展開は、ドリーム・シアター・オマージュともいえるか。神バンドの技巧も聴き逃せない。
12THE ONE
ハードな音を奏でるリズム隊の上で響くエモーショナルなギターと“時を超えて 僕らはいく まばゆい光の中で”など前を向き先へ進もうとするポジティヴな歌詞が壮大な世界を構築。ウェットでドラマティックな展開が感動を呼ぶドリーム・シアター風プログレ・メタルだ。