ミニ・レビュー
5年ぶり、9枚目のアルバムは6枚のシングルを含むタイアップ曲が満載。安室奈美恵、鷺巣詩郎、冨田恵一、松任谷正隆らさまざまなコラボレーターを迎え、妖しいラブ・ソングから優しいポップスまでエンタテイナーぶりを発揮。ブラック・ユーモアあふれる「かわいいの妖怪」「驚異の凡才」なども聴きものだ。
ガイドコメント
前作『JAPANESE SINGER』から約5年ぶりの9thアルバム。「Plus One」「魔法って言っていいかな?」「君の鼓動は君にしか鳴らせない」などのシングル曲のほか、平井のヴォーカルを堪能できる楽曲を収録している。
収録曲
01Plus One
「TIME」との両A面となった、竹野内豊主演ドラマ『グッドパートナー 無敵の弁護士』主題歌起用の39thシングル。憎まれ口を叩きながらもやっぱり君がいないと寂しいと、リズムカルなポップに乗せて告げるラヴ・ソングだ。
02魔法って言っていいかな?
ペトロールズの長岡亮介のアコギをバックに綴る無垢なミッド・バラード。特別なものはないけど君を笑顔にする魔法は持ってると温かく問いかけるラヴ・ソングには、リスナーの心を揺らす魔法が。綾瀬はるかと共演した「LUMIX」CMソング起用の40thシングル。
03告白
35thシングルは、武井咲主演ドラマ『Wの悲劇』主題歌への起用もあってか、絶望、苦しみ、悲しみに苛まれる女性の心情を綴ったドラマティックな哀歌。異国情緒漂うメロディと歌謡曲の要素を合わせたエスニックな作風が魅力だ。
04かわいいの妖怪
ここでいう妖怪=モンスターとは男への自己アピール度が高い女性のこと。それホントにカワイイの? と媚びる女子たちをテンポが弾む軽快なトラックに乗せてディスっていく。ただ、そのままでカワイイよ暗に示す平井に、女性ファンはキュン死しそう。
05桔梗が丘
地元・三重県名張市で撮影され、実母も出演したPVも話題の自身初の配信曲。平井が母に贈る私的なメッセージ・ソングだからか、歌い込むというより優しく語りかける歌唱が耳に残る。温かくもほんのり切ない郷愁サウンドがじんわりと伝わってくる。
06Missionary
冨田恵一プロデュースによる悲哀ポップス。タイトルは伝道師という意味だが、ここではあなたの愛に導いてと懇願する女にとっての愛する人を“伝道師”と見立てている。ほんのり電子的なアクセントを加えたペドロ&カプリシャス「別れの朝」風のムードで展開。
07ソレデモシタイ
女性目線で“チクショー! 会いたい 愛したい!”と恋焦がれる男への独占欲を歌う。ソウルフルなグルーヴを下敷きに平井ならではのポップネスが軽快に展開する。デリーで撮影されインド人に紛れて踊るヴィデオが話題を呼んだ37thシングル。
08驚異の凡才
ハマ・オカモト、ピエール中野、滝善充が参加した、平井の新境地となるエレクトロ・ロック。畳み掛けるドラム&ビートをバックに日常への揶揄や毒を盛り込んでいく。一部歌詞は示されてないが、フォロー乙、スルー乙など韻を多用して推進力を強化。
09君の鼓動は君にしか鳴らせない
優しくも雄大なホーンで幕を開けるハートウォームなミディアム。君は明日の、僕らは皆ヒーローだと心に訴えかけるメッセージが涙と感動を呼ぶ。唐沢寿明主演ドラマ『ナポレオンの村』主題歌で、デビュー20周年記念となった38thシングル。
10ON AIR
平井が好きなニューミュージックや初期J-POPあたりの曲風をベースに展開する色鮮やかなポップ。時代が過ぎても変わらないものもあると、音楽への愛を通して“終わらない青春”を語る。懐かしくも前へ進む力が感じられるナンバーだ。
11おんなじさみしさ
平井の持つR&Bとの親和性がたっぷりとあふれるミディアム・ソウル・ポップ。同じ寂しさを抱える大切な人への愛着と孤独への切なさを優しく語りかけるように歌う。「ソレデモシタイ」との両A面で、永作博美主演ドラマ『さよなら私』主題歌起用の37thシングル。
12グロテスク (feat.安室奈美恵)
平井からのオファーで実現した安室奈美恵とのコラボレーションは、“グロテスクな自分を愛せる?”とひねくれたシニカルな視線で描く一風変わったエール・ソング。曲は海外勢の提供によるエレクトロなダンサーで、安室に寄せた形。36thシングル。
13TIME
「Plus One」との両A面となった39thシングル。ここで言う“TIME”は物心ついた頃から重ねてきた愛情の時の経過か。鷺巣詩郎らしい凛々しく麗しいストリングスを配したオーセンティックなミッドに乗せて、温かくもソウルフルに愛の尊さを歌う。
14それでいいな
いろいろあるけど、君が隣にいればそれでいいな……何気ない日常での幸せが嬉しいと綴るハートウォームなラヴ・ソング。60、70年代のソウル・ポップスの薫りも垣間見える、ひだまりのようなやわらかい肌質の曲風にほっこりする。松任谷正隆プロデュース。