ミニ・レビュー
15枚目のオリジナル・アルバム。多くの曲を堂島孝平が手がけ、ホーン隊がアクセントのゴージャス感のあるポップな仕上がりに。二人のスムースで艶のある歌声もよく合っている。吉井和哉や小出祐介、米倉利紀ら提供曲での変化球も丁寧なヴォーカリゼーションで柔軟に表現し、繊細さが深化した印象だ。
ガイドコメント
2016年9月リリースの15thアルバム。シングル「薔薇と太陽」「夢を見れば傷つくこともある」「鍵のない箱」のほか“ありのままで自然体”な楽曲を収録。吉井和哉、小出祐介、米倉利紀、松田晋二(THE BACK HORN)らが参加。
収録曲
01naked mind
スタイリッシュなギターのカッティングとホーン隊でややファンキーな味付けを施したポップ・チューン。タイトルどおり“Naked mind=あるがまま”を愛そうと歌う甘いナンバーで、色っぽい歌唱とともに囁く“連れて行くのはもうおまえだけ”のフレーズにやられる。
02鍵のない箱
松井五郎を作詞に迎えた34枚目のシングル。ピアノをアクセントにしたクールでスペーシーなサウンドで突き進むダンス・チューン。自分の前から消えてしまった人への想いを断ち切ることができないまま、見捨てられた心を“鍵のない箱”にたとえた歌詞が切ない。
03モノクローム ドリーム
堂島孝平が作詞作曲のほかコーラスを担当、編曲をCHOKKAKUが手がけたファンキー・ポップ。鮮やかだった日々が、君が去ってからはため息でモノクロになる。“せめて夢のなかで会わせて”と歌う感傷的なストーリーながら、テイストは意外なほどにポップ。
04星見ル振リ
鍵盤を効果的に使った美しいサウンドスケープが印象的なミディアム・アップ。大好きだった人と離れることになってからも、リアルに蘇る思い出に浸りながら想う心情を描いた切ないストーリーで、サラッとしたアレンジが悲しみを増幅させているよう。
05薔薇と太陽
吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)が提供、コーラスにも参加した36枚目のシングル。スパニッシュなテイストや昭和歌謡曲風のエッセンスを感じさせるセクシーなナンバーで、気だるげに言葉を放り投げる二人のヴォーカルも色気たっぷり。
06鉄塔の下で
ストリングスやホーンを配し、映画のオープニングのような勇壮なファンファーレで幕を開けるハートウォームなミディアム・アップ。空のない、喧騒が支配する都会でくすんでいくなか、故郷の“鉄塔”に思いを馳せ前を向く。色鮮やかに映像が浮かぶストーリーが印象的だ。
07ホタル
「薔薇と太陽」に続き吉井和哉が作詞作曲を担当。ストリングスや篠笛、ペダルスチールといったさまざまな楽器を用いたドラマティックなミディアム・バラード。映画的に夏の風景が綴られた歌詞の臨場感は見事。和風なサウンドもあいまって、剛の魅力が際立つ。
08陽炎〜Kagiroi
堂本剛と堂島孝平の共作によるナンバー。エレクトロな処理を施したコーラスやサウンドが不思議な質感をもたらしており、美しい日本語を緻密に配した歌詞の魅力も引き立てている。終始一貫して韻を踏む“あい”の音が集結するラストは秀逸。
09Plugin Love
ビートを強めに出した、ミディアム・テンポながらハードなテイストのダンス・チューン。君以外は必要じゃない、置いていこう。まっすぐに未来を見すえて愛に突き進む力強い言葉が並ぶ。アプローチの違う二人の歌唱が融合するサビが魅力的。
10夜を止めてくれ
堂島孝平×CHOKKAKUの鉄板コンビによる、ポップに弾けたキラー・チューン。軽快なギターのカッティングやハンドクラップなど、突き抜けて明るいテイストに仕上がっているが、歌われているのは許されない恋。優しく歌うサビが胸に沁みる。
11Summer〜僕らのシルエット〜
Base Ball Bearの小出祐介が作詞を、原一博が作編曲を手がけたシティ・ポップ風のナンバー。伸びやかなメロディとともに、キラキラと輝く夏の恋をロマンティックに歌い上げる。洗練されたサウンドながら、随所に顔をのぞかせるサンバっぽいアクセントが効果的。
12KING PROTEA
南アフリカ原産、雄大な顔をもつ花の名前をタイトルに据えたナンバーで、作詞作曲は米倉利紀。音数少なめ、すっきりとしたサウンド・プロダクトだけに、米倉もコーラスに参加した3人のハーモニーが印象的。強い信頼で結ばれた仲間を描いた歌詞に心が温まる。
13雨音のボレロ
THE BACK HORNの松田晋二が作詞を手がけた美しくドラマティックなバラード。“君という名前の幸せを尊く思う”というフレーズが耳に残る切ないラヴ・ソングで、最低限の音数で進む前半の二人の伸びやかなヴォーカルに心を奪われる。
14夢を見れば傷つくこともある
作詞・秋元康×作曲・伊秩弘将というタッグで制作された35枚目のシングルは、流麗なストリングスとギターのメロディで幕を開けるポップ・チューン。夢を見れば傷つくこともある。可能性を掴むために前に進む背中を、優しく押してくれる。
15なんねんたっても
思い出は昔の自分からの贈り物……鮮やかな場面をできるだけ多く残したい、というメッセージは二人の活動にシンクロする部分もあるが、多くの人に当てはまる言葉。シンプルかつ力強いサウンドとともに、終始ユニゾンで歌う姿も心に響く。