ダビーなサウンドアプローチが施された“もっとひどい屈辱にたちむかわなきゃならないのさ”という同胞たちへのメッセージともとれるリリックからスタート。温かいハモンドオルガンのリズミカルな伴奏が心地よいスムース・チューンだ。

パブリック・エネミーやサイプレスヒルら、ハードコア・ヒップホップ勢を思わせる荒々しいビートとけたたましいサイレンのSEが印象的なプロテスト・ヒップホップ。ヘイトクライム、マイノリティへの弾圧などに対し痛烈なメッセージを送る。

ワウギター、ぬめっとしたブレイクビーツ、グルーヴィなベースとソウルネタで構成された一曲。ネイティヴ・タン全盛期のグルーヴを思わせるトラックに乗り、いかに自分たちが“ファンキー”であるかを説く。アフリカ回帰を思わせるリリックもファイフらしい。

冒頭のヴォーカル部分はエルトン・ジョンの「ベニー・アンド・ザ・ジェッツ」からのサンプリング。フィル・スペクターが作り上げたウォール・オブ・サウンドを引き合いに出し、自分たちのサウンドの厚みを語る。ジャック・ホワイト、バスタ・ライムスが参加。

ブルース・リー、ダース・ベイダーなどフェイヴァリットなモノを挙げ、自分たちのライフスタイルや世代を語っていくコンシャス・ラップ。リラックスしたトラックの合間に入る声ネタはミュージカル・ユースの「パス・ザ・ダッチー」。

アンドレ3000（アウトキャスト）が参加した一曲。半音を盛り込んだ奇怪なピアノのループの上でニュースクール以降を代表する二組が、“このシットは全部幻想だって知らないのかよ”と下の世代にリアルを見つめることの大切さを説く。

マーシャ・アンブロージアス、アビー・スミスをフィーチャーした一曲。ドラムをQティップ、シンセをBIGYUKIこと平野雅之が担当。煙たくスペイシーなトラック上で、ジャジィ・ヒップホップの先駆にふさわしいスムースなラップを披露している。

DJスクラッチが参加。代表曲「ボニータ・アップルバム」でも使用されたロータリー・コネクションの「メモリー・バンド」が織り込まれたメロウなトラックの上で、セクシャルな愛の言葉が並んだラップを、Qティップが甘い声で披露している。

BIGYUKIが手がけたピアノの不穏なループは、ウータンクランら90年代アンダーグラウンド・ヒップホップの狂気じみたサウンドにも近い。中盤からのコーラスはジェントル・ジャイアントの「プロローグ」をサンプリング。

裏打ちのギターがラヴァーズ・ロックのようにルーズで心地よい一曲。ヒップホップの精神性とストリートでの生活の描写が織り込まれた歌詞は、ズールー・ネイションを代表するアーティストらしい。Qティップとファイフ・ドーグの絆を感じさせるリリックにも注目。

タリブ・クウェリ、カニエ・ウェスト、コンシークエンスをフィーチャーしたプロテスト・ソング。ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」をはじめ、黒人差別を思わせるフレーズを盛り込んで現代アメリカへのアンチテーゼを提示。タイトルに負けないハードコアな歌詞が並ぶ。

亡くなったメンバー、ファイフ・ドーグへの思いを綴ったドラマティックな一曲。出会い、成功、仲違いなどをさらけ出したQティップのリリックは聴きごたえたっぷり。感傷を誘うピアノのループはカンの「ハレルヤ」からのサンプリング。

アンダーソーン・パークをフィーチャーした一曲。ネオソウルを経由し、ジャズと歩み寄った2010年代のヒップホップらしい、スムースかつインテリジェンスあふれるトラックに乗せ、自分たちがいかにタフかを誇示するラップを繰り広げる。

ケンドリック・ラマーをフィーチャー。“CNNに不均等な報道”“ずっとたわ言流し続けて”などQティップがメディアやトランプ大統領批判を繰り出せば、ケンドリックが“破壊を容認、罪を切望しているのさ”とアメリカの病理をえぐり出す。

ジャック・ホワイトの歪んだギターとラグドなブレイクビーツが絡み合った煙たくタフな一曲。“心の中で跳ね回ってトリップする”というサビのフレーズを強調するかのようにエコーがかけられたヴォーカルは、サイケデリックに聴こえる。

先陣を切るバスタ・ライムスのラガマフィン・スタイルから耳を奪われるアブストラクトな一曲。バスタが吐く“トライブ・コールド・クエストが再結成さ”のリリックから、ファイフ〜Qティップと繋がる流れはファンにはたまらない。