ミニ・レビュー
B'zの稲葉浩志と、世界的ギタリストで稲葉のソロ作にも参加したことのあるスティーヴィー・サラスによるユニットのデビュー・アルバム。ロックなB'zとは違い、タイトルどおりのグルーヴを感じさせる80年代風のファンキーなノリの曲が多く、聴いていると自然に体が横ノリしてしまう。
収録曲
01SAYONARA RIVER
ファンキーなギター・カッティングを中心としたナンバー。“雄風 バイバイ”などリズム的にも響きのよい言葉を並べつつ、無駄な傷はもういらないと歌い上げる。不思議な浮遊感とパーカッシヴかつ軽やかなリズムの融合が心地良い。
02OVERDRIVE
キーボードを用いた派手なイントロに心を掴まれるシンプルなロックンロール・ナンバー。人生を駆け抜けるため、“一睡もせずに火をつけりゃいい”とやや乱暴なメッセージを披露。寝不足気味のハイなテンションがたまらない。
03WABISABI
デジタルなエフェクトを噛ませながら、音数少なめでスッキリとしたサウンドスケープを構築したゆったりとしたナンバー。ここで歌われる“WABISABI”は、“詫び”と“錆”。羽目を外して痛い目にあう男の姿をシニカルに描いている。
04AISHI-AISARE
分厚いギターのアンサンブルとともに力強いビートを刻んでいくスタジアム・ロック調のナンバー。他に好きなものなどない、君がいればすべてがオーライ、と歌うストレートなラヴ・ソングで、勝ち気なヴォーカルを高らかに響かせている。
05シラセ
シンプルなギターのストロークを中心に、浮遊感のあるキーボードとパキっとしたドラムを配置したミディアム・チューン。夢とも現実ともつかぬ状態のなか、“あなた”の温もりや存在を感じてしまうストーリーを、憂いのあるヴォーカルで表現している。
06ERROR MESSAGE
切れ味の鋭いギター・カッティングとスラップベースを中心に据えたダンサブルなナンバー。パキっとしたリズムとアレンジのなか、サビではロングトーンのメロディとキーボードで浮遊感を演出。不思議なコントラストが印象的。
07NISHI-HIGASHI
フィンガースナップを取り入れたイントロをはじめ、効果音的なさまざまなサウンドがリズムのアクセントになったポップ・チューン。西へ東へ、北へ南へ。“流れる水”のように生きてみようと歌うメッセージ・ソングで、稲葉のハイトーンが映える。
08苦悩の果てのそれも答えのひとつ
ノイジーなオープニングから、ギターのシンプルなリフへとなだれ込むロックンロール・ナンバー。潔さもなく、大胆さもない。ともすればマイナスにも思える姿勢も、苦悩の果てに得たものならば、それでいいんだと告げる、懐の大きなメッセージにシビれる。
09MARIE
ハンドクラップを用いたカラッとしたリズムのもと、エレキギターのアルペジオを巧みに配した稲葉&サラス流のサーフ・ロック・チューン。“女王様”をモチーフとしたストーリーの合間に飛び込む、余裕たっぷりのサラスのギター・ソロがクール。
10BLINK
スケールの大きなロック・サウンドを響かせるミディアム・バラード。生きるのは痛い、生きるのは辛い。闇に落ちてしまいそうなギリギリの状態でも一歩を踏み出していくしかないと、静かに、力強く叩きつける、矜持に満ちたメッセージが熱い。
11MY HEART YOUR HEART
タイトルどおり、心臓の鼓動のような音をリズム代わりに用いた静謐なナンバー。神秘的なキーボードやギターの音色を注意深く配置した美しいサウンドスケープのもと、稲葉の歌声も優しく、静かに語りかけるようなスタイルとなっている。
12TROPHY
WOWOWのテニス放送2017年シーズンのイメージソングに起用された、爽快なロック・チューン。頑なに負けるのを拒みながら生きていく不器用なスタイルを全面的に肯定。賑やかなコーラスとの掛け合いで進む、高揚感のあるサビで煽っていく。