ミニ・レビュー
自称“ミス・大丈夫”、YUKIの史上最強超ド級無敵ポップ・アルバム。ストリングスをフィーチャーしたリード・シングル「さよならバイスタンダー」ほか、ヒップホップ「こんにちはニューワールド」、ロッカバラード・スタイルの「tonight」、イントロにブルース進行を導入した「バスガール」など、彼女流のポップ満載。
ガイドコメント
前作『FLY』から約2年3ヵ月ぶりとなる8thアルバム。映画『グラスホッパー』主題歌「tonight」やNHK総合TVアニメ『3月のライオン』OPテーマ「さよならバイスタンダー」などのシングルほかを収録している。
収録曲
01暴れたがっている
ピアノの美しいアルペジオを中心とした疾走感のあるポップ・チューン。カラフルだがやや控えめな冒頭からサビで一気に開ける、まさに“YUKI”節全開といえるナンバー。韻を踏んだ言葉の連続も、スピード感に拍車をかける。
02さよならバイスタンダー
映画『ハチミツとクローバー』に続く羽海野チカ原作とのタイアップで、NHKアニメ『3月のライオン』のオープニング・テーマへ書き下ろした31stシングル。バンド・サウンドとストリングスが融合したスピード感あふれるポップ・チューンで、漫画と共鳴する描写も鮮烈だ。
03こんにちはニューワールド
ヒップホップ&シティ・ポップの要素をはらんだスタイリッシュなナンバー。ラップ調のヴォーカルも交えつつ、“雪の降らないクリスマスにも少しは慣れた”など、YUKIの半生を綴ったような物語を、柔らかく歌い上げる。
04無敵
恋は夕暮れを甘いお菓子に変える……学生時代に恋をした時の“無敵感”を歌ったような、色鮮やかなストーリーが目を引くミディアム・アップのポップ・チューン。ロングトーンと短いフレーズの交錯が高揚感を生み出している。
05名も無い小さい花
アメリカン・オールディーズ・ロックのような、どこか埃っぽくも懐かしいサウンドが心地良いナンバー。初めてを沢山しよう。春を前にしたワクワクに満ちた気持ちにさせるヴォーカルと心温まるメロディがじんわりと沁みる。
06レディ・エレクトリック
“エレクトリックウタイタガール”という名目でYUKI自身がクレジットされたポップ・チューン。エレクトロなサウンドとアコースティック・ギターを中心とした人力サウンドが融合した、高揚感に満ちたアレンジに胸が弾む。
07私は誰だ
冒頭から力強いギター・リフが登場、その後もジャキジャキとしたギターの音色を中心に突き進むロック・チューン。哲学的なタイトルを冠したその中身は、生きていく上での基本姿勢を綴ったような物語。『最後の一葉』の引用めいたフレーズも鮮烈。
08tonight
伊坂幸太郎原作の映画『グラスホッパー』主題歌として制作された29thシングル。女性版「スローバラード」とでも言えそうな、ピアノと歌を中心としたソウルフルなナンバー。ヴォーカリストとしてのYUKIの魅力がたっぷりと詰まっている。
09ポストに声を投げ入れて
映画『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z ボルケニオンと機巧のマギアナ』の主題歌に起用された30thシングルは、ハートウォーミングなミディアム・チューン。ブラスを取り入れたサウンドに乗せて、希望に満ちたメロディを優しく歌い上げる。
10バスガール
バスのクラクションのような音色からバスガイドに扮したYUKIのナレーションでスタートする、カラフルなポップ・チューン。バスツアーを巧みに案内するバスガイドの心情を描いたような、ユニークな歌詞が耳に残る。
112人だけの世界
春を思わせるカラフルなピアノを中心に、爽やかにしてどこか儚げなサウンドスケープを描き出したポップ・チューン。恋人同士の“2人だけの世界”を歌ったキラキラとしたラヴ・ソングで、まるで少女のようなヴォーカルが見事。
12聞き間違い
ドリーミーなサウンドとドラマティックなメロディが融合した、心温まるミディアム・バラード。ファンタジックな表現のなかで、色鮮やかな現実世界の描写が交錯する、YUKIならではといえる物語が、サウンドと呼応して耳に飛び込んでくる。
13トワイライト
give me walletsのJess & Kenjiが作曲に参加した、軽快なテクノ・ポップ調のナンバー。少しエスニックなフレーズを隠し味に入れ込みながら、ヴォーカル・エフェクトもかけつつ、カラフルでポップな物語を歌い上げる。