ミニ・レビュー
無表情なマネキンに囲まれて佇む山本の姿を捉えたジャケットが、アルバム・タイトルを的確に表現しているセカンド・アルバム。ファースト同様、亀田誠治をプロデュースに迎えボトムスが安定したトラックを収録。ドリカム「何度でも」のカヴァーで聴かせるパワフルなヴォーカルに歌手としての進化を感じる。
ガイドコメント
前作『Rainbow』に続き亀田誠治がプロデュースを務めたソロ2枚目となるアルバム。自身が作曲を手がけた「JOKER」のほか、水野良樹(いきものがかり)作詞作曲「春はもうすぐ」をはじめとする豪華アーティストによる楽曲を収録。
収録曲
01JOKER
2ndアルバム『identity』のリード曲。自分に特別な力を与えてくれる人への感謝の思いをドラマティックなメロディで綴る。自身が作曲を担当し、亀田誠治が伸びやかなストリングスを盛り込んだアレンジを施している。「アイフルホーム」CMソング。
02Wings
Carlos K.と亀田誠治が作曲したアダルトな雰囲気が漂うR&Bチューン。楽曲の雰囲気にリンクするかのように大人びた声色で、“だから強くなれ”と自分の信念を強く持つ事の大切さを歌い上げている。
03夢の声
裏打ちのリズムにサビで盛り上がるギター・サウンドがエモーショナルに響くポップ・ナンバー。毎日の忙しさのなかで忘れてしまった目標を再び思い出させるメッセージ・ソングに仕上がっている。作詞作曲はヒロイズムと亀田誠治。
04Let's go crazy
自身が作詞作曲を手がけた、エッジの立ったギターと乾いたドラムがパンキッシュなロック・チューン。時にはハメをはずして生きようという前向きなメッセージが込められている。AbemaTVドラマ『ふたりモノローグ』の主題歌。
05ゆびきり
ギルバート・オサリヴァン路線の良質なメロディが展開されるポップ・ナンバー。離ればなれになる人に“いつかこの場所で会える”とゆびきりを交わす場面が、明るい表情の歌声で描かれていく。自身が作詞作曲、亀田誠治が編曲を担当。
06サードマン
自らが作詞作曲を手がけた壮大なバラード。“君はそのままでいい”という愛にあふれた肯定を、“第三者”という俯瞰の視線で綴った異色のメッセージ・ソングに仕上がっている。芳醇なストリングスをはじめとしたアレンジは亀田誠治が担当。
07どうしてどうして
いしわたり淳治と歌詞を共作したギター・ロック・ナンバー。“どうして? どうして? あなたなんかに ふられなきゃいけないの”と強がりながらも、突然の失恋の寂しさを隠せない女心を女性ならではの視点で描いている。
08愛せよ
阿久悠の未発表詞に水野良樹(いきものがかり)が曲をつけた一曲。阿久の世界観にふさわしい、歌謡路線のメロディがぴったりとはまっている。阿久の“君よ愛せよ 自然を愛せよ”という後進へのメッセージが胸に突き刺さる。
09何度でも
DREAMS COME TRUEの同名曲をカヴァー。ソウルフルで黒い吉田美和の歌声とは異なる、純粋で芯のあるヴォーカルで“何度でも 何度でも”と挑戦していくことの大切さを歌い上げている。編曲は亀田誠治が担当。
10喝采
シンガー・ソングライターの阿部真央が作詞作曲を手がけたロック・ナンバー。“不器用でも正しく生きたい”という一本筋の通った生き方を選んだ人生や、“ことなかれ主義の一辺倒”といった社会への辛辣な批判が綴られていく。
11陸の魚
作曲を山本自身、作詞をいしわたり淳治と共作したスロー・ナンバー。今いる世界から飛び出す姿を大海に泳ぎだそうとする魚とダブらせ、傷つくことや嘲笑を恐れずに前進していくことの大切さを歌う。アウトロのピアノの旋律が感動を誘う。
12春はもうすぐ
水野良樹(いきものがかり)が作詞作曲を手がけたミディアム・バラード。“駅のホームに立って 僕はひとり故郷(まち)を出ていく”“僕はもう 弱虫のまま 明日に旅立つよ”という歌詞が、卒業を経て新たな土地へ一人旅立つ男子の寂しさを見事に表わしている。
13蛍
自身が作詞作曲を手がけた一曲。恋人と過ごした夏が過ぎていく儚さを綴るが、湿っぽさはなく、爽やかなギター・ロックが展開されていく。パワーポップ的な甘いメロディとコーラスが顔をのぞかせる場面もあり、青春時代の夏のひとコマを切り取っている。