
87年より始まったコンサート・シリーズ“PURE ACOUSTIC”コンサート。一時期休止していたが、2018年3月24日に新宿文化センターで行なわれた約5年ぶりの同コンサートの実況録音盤。金子飛鳥やフェビアン・レザ・パネなどおなじみのメンバーとともに、瑞々しく透明感にあふれた歌を聴かせる。

千住 明の指揮による東京ニューシティ管弦楽団と大貫妙子とのコラボ作。大貫の代表曲がオーケストラ・アレンジに様変わりしているものの、大貫による透明感あるヴォーカルには微塵も変化なく、どういう編曲でもこの人の歌と曲の良さは揺るぎないことに気づく。フェビアン・レザ・パネによる鍵盤もいいアクセントに。

2000年に共演して以来、交流を続けてきた二人が、満を持してコラボ作を発表。大貫ならではの硬質な歌声の美質を活かしつつ、そこに男女のドラマの“情念”を盛り込む。ラテン音楽の中でも独特の位置を占める、タンゴという“場”を小松が提供したからこそなし得た境地。再演曲にも新たな光が当てられている。★

ジャパニーズ・ポップスの歴史において確かな足跡を残してきた大貫妙子と、バンドネオン奏者の小松亮太がタッグを組んで制作されたNHK『ラジオ深夜便』タイアップ曲。大貫の透明感あふれる歌声と随所で情熱的な音色を響かせる小松の演奏が完璧に融合した、繊細かつ極上の世界感を堪能できる名曲。★

2013年にデビュー40周年を迎えた大貫妙子の業績を称えて、日本を代表するアーティストによるカヴァーを収めた2枚組。原曲の持つ軽やかさとは全く逆のベクトルで魅了する岡村靖幸と坂本龍一による「都会」や、ユーミンとキャラメル・ママによる新録音「色彩都市」など、微塵も聴き逃せない好企画盤だ。

タイトル通り18年間にわたって彼女が手掛けてきたCMワークをコンパイルした一枚。「三ツ矢サイダー」「スプライト」など、今では一番古臭く聴こえるはずの80年代中ごろの諸作品のキラキラしたサウンドがこのサイズで聴くと今なおフレッシュなのが不思議だ。美空ひばりのカヴァーなんかも貴重。

2011年秋公開の映画『東京オアシス』のサウンドトラックは、主題歌のみならず劇中音楽までを大貫妙子が担当。アコースティック・ギターからピアノ、ストリングス、パーカッション……生楽器中心のアンサンブルによる穏やかな音世界が心に沁みわたる。唯一歌ものである主題歌のフォーキーな味わいも清々しい。

ディスク1は坂本龍一が鍵盤楽器を弾いて大貫妙子が歌い、ディスク2はインスト。シンプルな音での“スロー・ライフ”な仕上がりにテーマが表われているように思う。どちらかが作詞/作曲している曲がほとんどで、ディスク1の「3びきのくま」は唱歌、「Antinomy」の歌詞は書き下ろし、「a life」は新曲である。B6版の書籍に近い大きさのパッケージ。

ariや、WATER WATER CAMEL、永山マキ meets hitme&miggy、犬塚彩子、寺尾紗穂らさまざまな音楽性をもった個性的な15アーティストによる大貫妙子楽曲のカヴァー集。幅広い選曲とオリジナルへの敬意と愛情が感じられる、上質の作品に仕上がっている。

アコースティック編成による自作品の再演という趣向自体は20年前の『ピュア・アコースティック』と変わらない。とはいえ今回は緊張感より落ち着いた歌唱が前面に。ラテン系リズムがほんのりと演奏を支える塩梅もいい。歌手としての矜持が伝わる一枚。★

2006年に第3弾が発売された任天堂のゲーム『マザー』。その主題歌およびイメージ曲集だ。(2)〜(6)を演奏しているD.C.M.C.は、このCDのために結成されたクレイジーケンバンドからの派遣組。クイーンありサンバありの多彩な曲調を達者にこなす。

SMAPやスガシカオのアレンジで知られる森俊之を迎え、“定番”のヨーロッパ路線に留まらないファンキーさがそこここに。(7)ではマルコス・スザーノ提供のパンデイロ・ループが聴かれる。全曲に添えられた本人による解説含め、いい年齢の重ね方では。

30年間の作品をまとめた全33曲2枚組。シュガーベイブの「いつも通り」、ソロ第1作の「街」……と日本のソフト・ロックの創成期から徐々に大貫妙子という表現者の輪郭がクッキリとしていくなかで、彼女の世界がドンドン広がっていく様子がチャーミングな唄声に乗って手に取るように実感。

マックスファクターのCM曲「ただ」を収録。独りごとか、問いかけのように情感を抑制し、ゆったりと大貫妙子が歌うとき、恋人とも友だちともつかない関係の男女の姿が浮かんでくる。ソフィスティケイトされたサウンドの彼方に、芯の強い女性の姿も見え隠れする。

'78年にRCAで発表したソロ3作目のアルバム。すきとおった大貫の声で歌う世界は、笑いのない少女漫画のようなところもある。この頃はまだヨーロッパ的な色は、タイトル名ぐらいでサウンドなどにはない。これ以降、ヨーロッパ的な色彩を強めていく。

ヨーロッパ的な景色を、そのサウンドとヴォーカルから感じられる。具体的にフランスのどの時代の誰の影が見えるといったものではない。イメージとしてのヨーロッパであり、そしてそこにいる不思議な少女像を想わせる。クラウンからRVCに移って第2作目の『ロマンティック』は80年、3作目の『アヴァンチュール』は'81年、4作目の『シンフィエ』は'82年発表作品です。

山下達郎との出会いによりプロ活動に入った大貫妙子は、あの幻のグループ“シュガー・ベイブ”に参加、本格的デビューを果たす。メッセージ色の濃いフォークとは異なり、彼らは、はっぴいえんど、ティンパンアレー同様日本語によるロック、ポップスを模索していた。グループ解散後いつからだろうか、気がついた時には大貫妙子は、ヨーロピアン・ムードが似合うシンガー・ソングライターに変身していた。かすかにカーテンを揺らす風のような彼女の歌声は、大げさなサウンドが多い世の中でかえって心に強く残る。「ピーターラビットとわたし」他、彼女の曲はメルヘン風シャンソンといった趣きがあり、他の追従を許さない独自の世界を形成する。

20年以上のキャリアを誇る日本のシンガー・ソングライターの草分け的存在である彼女のRCA時代の作品集。彼女自身の選曲で、リマスタリングにも参加している。CMソングだった[1](8)、[2](9)など、貴重な音源も収録。音が全然古くなっていない。★

久々のフランス語タイトルに、一連の同様のタイトルのものを出し続けていた時のように、アコースティックで静々とした作品かなと思ったらそうでもなく、(3)と(7)などは打ち込みの手法でかなり斬新なアレンジ。新風を吹き込んだ作品といえるか。★

竹中直人の映画『東京日和』の主題歌。大貫の持ち味を知り尽くした坂本龍一のアレンジが、彼女のヴォーカルをクッキリと浮かび上がらせていて、まさに東京日和の洒落たサウンドが心地いい。(2)(3)はインストだが、いかにも映画音楽らしい仕上がりだ。

93年11月の東京・渋谷公会堂でのライヴ13曲に、ボーナス・トラックとして『山下達郎シング・シュガー・ベイブ』から3曲。ちょっと聴くと線の細そうな感じだが、実は相当に骨太なヴォーカルを聴かせる。それでいて隅々まで神経をつかっているところは達郎同様だ。

前作『ニュー・ムーン』でワールド・ミュージックへの歩み寄りをみせ、新境地を開いた大貫妙子。本作は、オリジナル・アルバム未収録7曲を含むベスト盤。(5)や(12)をはじめ、聴いてすぐに口ずさめる曲が多いのが彼女の魅力だ。名曲(9)が入っているのも嬉しい。

クラウン時代のソロ作品のカップリングもの。『Grey Skies』は76年リリースのソロ第1作。シュガーベイブ(山下達郎)色が濃い。卒業制作みたいなアルバム。『Sunshower』は77年作。フュージョン(坂本龍一)色が濃い。明るい曲調と裏腹に厭世的な詞が怖い。

1977年録音作。全曲坂本龍一のアレンジ、振幅する曲に適度の距離感をもって寄り添っている。全体的にしなやかなソウル・ジャズ的センスのサウンドが付けられた作品で、なるほどアルバム・タイトルがぴったりの風情あり。ゆらゆらした歌がくすぐる。

竹中直人監督作品のサウンドトラック。竹中監督が直々に大貫さんに音楽を依頼したというだけあって、気合の入った仕上がりになっている。ヨーロッパ映画の音楽のような空気を醸し出しつつも、大貫さんの音楽以外のなにものでもない、マスターピースです。

前作の「チャオ!」(95年)から約2年ぶりの本作は、ほとんどの編曲を坂本龍一が手掛けた。もちろん中心に居るのは彼女。手となり心となって、坂本が音楽をなぞりふくらませた。凛として背筋の伸びた強く美しいポップス。この格調は貴重だ。

ブラジル録音を含む1年7ヵ月ぶりのフル・アルバム。ポリリズミックなリズムを身体に染み込ませているブラジルのミュージシャンたちとのセッションで、彼女の透明感や涼やかさがよりくっきりと浮かび上がっている。凛としたマイペースぶりに聴き惚れる。

溝口肇のチェロ、中西俊博のヴァイオリン、F.レザ・パネのピアノ、清水靖晃のサックスなど、アコースティック楽器による再アレンジを施して代表作を再レコーディングした87年の企画アルバムの再発盤。まさにピュアなター坊のメロディが際立つ好盤。

CMでおなじみ(1)の歌詞がけっこう大胆ですごい、と長年のファン(男性)がゆーとりました。アメリカン・ロック的な色彩感がオールド・ファンには涙、若い観客には新鮮さと共に受けとめられることだろう。実はしたたかなスタイリストである、と思う。

テレビ・ドラマ「家裁の人」の主題歌にもなった(2)を含むお手頃価格のシングル・コレクションです。長〜い冬がやっと終わって、春一番が甘やかな花の香りを運んで来てくれる頃、そっとターンテーブル(今時あるか!)に置きたい1枚。優しい気持ちになれます。

前作から1年8ケ月の間に描きためられた、10枚の瑞々しい水彩画を見ていくようなたたずまいを誇っていて、優しい気持ちにさせられる。ただ、4曲あるイメージ/テーマ・ソングのうち、(5)は映画の本質にそぐわずがっかり。

大貫妙子の初期の作品をピック・アップした、セレクション・アルバム。タイトル通り、まさにここからアーティスト・大貫妙子の時が始まったといえそうだ。まだまだヴォーカル・スタイルも定まり切らず未熟だが、今に続く片鱗もかいま見えて、興味深い。

アコースティックな音で綴られた気品のあるラブ・ソング集。名匠マーティ・ペイチがアレンジを手掛けた(1)をはじめ、どれもヴィンテージ的風格を漂わせた曲ばかりだ。これらの曲は間違ってもTVの昼メロのテーマ・ソングにはならないだろう。秀作。

シンプルなバッキングでヴォーカリスト/ソングライターとしての彼女の魅力をこれまで以上に素のままに伝える。厳しい姿勢がセルフ・ポートレイトとしてこのアルバム全体を重厚にした。力作。

'76〜7年のクラウン時代のター坊のベスト・アルバム。女性シンガー・ソング・ライターとして評価を初めて受けた時期で、今のター坊を聞いてこれを聞くと、なるほどねと思えるはず。参加ミュージシャンに山下達郎、細野晴臣、坂本龍一らがいる時代です。

大貫妙子ソロ活動第一期、クラウン時代の楽曲集、シュガー・ベイブが解散し、山下達郎とのコンビネーションによる創作活動から坂本龍一との出会い、ヨーロピアン調の世界へと表現の枠を広げつつある過渡期の作品が楽しめる。スキ間の多いサウンドが妙に新鮮!?。

76年9月に発表された、大貫妙子のソロ・デビュー・アルバム。山下達郎、坂本龍一、細野晴臣らのアレンジによる曲で、ちらっと今日のター坊を感じさせる一方で、意外とポップな曲を歌っていたんだな、と思わせるアルバムで、新鮮さを保っている。

ヨーロッパの香りがどことなくする。そよ風とでも言うか、大貫妙子の曲にはアメリカ録音のものでも、イメージとしてもヨーロッパの空気が静かに流れている。そんな大貫妙子のベスト・アルバム。アメリカン・ポップスとは対極にある音楽を探している。

'78年にRCAで発表したソロ3作目のアルバム。すきとおった大貫の声で歌う世界は、笑いのない少女漫画のようなところもある。この頃はまだヨーロッパ的な色は、タイトル名ぐらいでサウンドなどにはない。これ以降、ヨーロッパ的な色彩を強めていく。

山下達郎との出会いによりプロ活動に入った大貫妙子は、あの幻のグループ“シュガー・ベイブ”に参加、本格的デビューを果たす。メッセージ色の濃いフォークとは異なり、彼らははっぴいえんど、ティンパンアレー同様日本語によるロック、ポップスを模索していた。グループ解散後いつからだろうか、気がついた時には大貫妙子は、ヨーロピアン・ムードが似合うシンガー・ソングライターに変身していた。かすかにカーテンを揺らす風のような彼女の歌声は、大げさなサウンドが多い世の中でかえって心に強く残る。「ピーターラビットとわたし」他、彼女の曲はメルヘン風シャンソンといった趣きがあり、他の追従を許さない独自の世界を形成する。

ヨーロッパ的な景色を、そのサウンドとヴォーカルから感じられる。具体的にフランスのどの時代の誰の影が見えるといったものではない。イメージとしてのヨーロッパであり、そしてそこにいる不思議な少女像を想わせる。クラウンからRVCに移って第2作目の『ロマンティック』は80年、3作目の『アヴァンチュール』は'81年、4作目の『シンフィエ』は'82年発表作品です。

シュガーベイブ時代、そしてソロになって11年目になる86年にリリースされた、大貫妙子の全12枚のアルバムからの選曲によるベスト・アルバムです。1曲目にナイアガラ原盤の「いつも通り」が入っているだけで、すごいってわかります。その彼女の歩んだ道が記録されています。