ガイドコメント
URCレーベルの音源をCD化。細野晴臣、松本隆、大滝詠一、鈴木茂というそうそうたる4人組の71年録音。日本語をロックに乗せようと試行錯誤していた時代の空気が濃厚な、歴史的作品。
収録曲
01抱きしめたい
無骨でズッシリとしたサウンドのカントリー・ロック・ナンバー。コーラスなどには遊び心にあふれたさまざまな仕掛けが施されている。鮮烈な雪景色を描き出した歌詞は、東北ツアーの列車内で松本隆が綴ったもの。
02空いろのくれよん
大滝詠一のヨーデル唱法が駒沢裕城のスティール・ギターの音色と相まって、実にドリーミーな音空間を創出したカントリー・ワルツ・ナンバー。大滝自身も生涯のベスト・ヴォーカルに挙げている1曲。
03風をあつめて
はっぴいえんどの名盤『風街ろまん』収録曲にして、米日製作映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)にも使用されたアコースティック・チューン。東京の原風景を見出そうとする思いを、細野晴臣のヴォーカルで表現する。
04暗闇坂むささび変化
細野晴臣が作曲、ヴォーカルを担当したカントリー・ロック・ナンバー。ブラック・ユーモアにあふれた寓話的歌詞は松本隆によるもの。アコギ、ベース、マンドリンを操る、細野のマルチ・プレイヤーぶりも楽しめる。
05はいからはくち
疾走感にあふれたロック・ナンバーで、はっぴいえんどの代表曲の1つ。タイトルは、“ハイカラ白痴”“肺から吐く血”のダブル・ミーニングから生まれた。ギロ、コンガなど、パーカッションを配したアレンジも秀逸。
06はいから・びゅーちふる
ブルージィなスライド・ギターに乗せて、大滝詠一がタイトルを気だるくリフレインする小品。アルバム『風街ろまん』では前曲の「はいからはくち」のアウトロであるとともに、アナログ盤A面のクロージング・ナンバーとして、意味合いが濃い1曲。
07夏なんです
「風をあつめて」と並んで、はっぴいえんど時代の細野晴臣を代表する1曲。リラックスした素朴な歌唱と、歌詞に登場する田舎の風景が見事にマッチしている。歌心にあふれた細野のベース・プレイも素晴らしい。
08花いちもんめ
はっぴいえんど第3のソングライター、鈴木茂の処女作。カラリと乾いた風のようなギター・サウンドと全編に配されたオルガンが印象的なミディアム・ナンバーで、ヴォーカルも鈴木茂自身が担当している。
09あしたてんきになあれ
細野晴臣のファルセット・ヴォイスをフィーチャーしたファンク・ナンバー。戦争を想起させる歌詞が、不穏な空気を醸し出している。99年にはファッション雑誌『Smart』のCM曲として使用された。
10颱風
大滝詠一が作詞・作曲を手掛けたスワンプ・ロック・ナンバー。ワウワウを使った鈴木茂のギター・ソロや、シバのブルース・ハープなど、聴きどころの多い1曲だ。ユーモアとウイットに富んだ、大滝らしい歌詞にも注目。
11春らんまん
バッファロー・スプリングフィールド〜CSN&Yを彷彿とさせるカントリー・ナンバー。ヴォーカルを大滝詠一、コーラスを細野晴臣が担当している。エンディングで登場する故・岩井宏のバンジョーも効果的だ。
12愛餓を
アルバム『風街ろまん』を締めくくる約30秒の小品。“あいうえお……”から“ん”までを、メロディに乗せて歌ったものだが、はっぴいえんどが“日本語のロック”を標榜していたことを考えると、非常に興味深い。