ミニ・レビュー
全シングルA面曲を発表順に並べたベスト盤。初期のみずみずしいギター・サウンドから、次第にエレクトロニクスを取り入れたファンタジックな音になっていき、音も言葉も研ぎ澄まされていく変遷ぶりがよくわかる。90年代後半以降の国内ロックを象徴する作品。★
ガイドコメント
2005年2月26日、studio coastでのライヴをもって解散。97年に青森発のギター・バンドとして鮮烈なデビューを果たした彼らが、7年半の音楽活動で残した16枚のシングルより、A-SIDE楽曲をすべて収録したシングル・コレクション。
収録曲
01CREAM SODA
ジザメリばりの粗いノイズが清涼感たっぷりのデビュー曲。シンプルなコードに青春小説のように爽やかな歌詞のギター・ポップ。誰もが心に思い描くも鳴らすことをためらったピュアすぎる音が青森から届いた。
02LUCKY
青さと若さ溢れる疾走感が心地よい一曲。ナカコーとミキのツイン・ヴォーカルの掛け合いが青春期のなんとも言えない甘さや苦さを体現しており、胸をキュンと締めつける。初期楽曲でも特に人気の高い一曲だ。
03PLANET
美麗なストリングスに切ないメロディが映えるメロウ・バラード。当時10代だったメンバーの心象風景をそのまま切り取ったかのようなセンチメンタルな歌詞が、音と重なり合い壮大なサウンドスケープを生みだしている。
04DRIVE
スーパーカーのメンバーが初めて顔を合わせた時に、ナカコーが披露したのがこの曲。つまりは、スーパーカーの最も古い曲ということになる。乾いたギター音のシンプルなコード進行のみで綴られるメロディが爽快。
05SUNDAY PEOPLE
直線的なギター・サウンドと電子音が融合し、独特の低空飛行感を生みだした未来型ロック・チューン。青臭いストレートなバンドから、飛躍的な進化を見せた最初の兆し。既に後期のエレクトロニカ的なアプローチが随所に見え隠れしている。
06MY GIRL
アコースティック・ギターの音を全面にフィーチャーしたアンプラグドな一曲。クリアな生楽器音のアンサンブルが紡ぎ出すささやかなメロディが、くるくると舞って落ちる儚さが絶妙。そのシンプルさ故にメロディの良さが引き立っている。
07LOVE FOREVER
タイトルはオアシス(?)、サウンドはレディオヘッド(?)なUKロック好きには垂涎ものなナンバー。陰鬱なメロディの上にナカコーの祈りに似た歌声が降り注ぎ、暗闇に一抹の光を差し込ませる。このカタルシスは他では得られない美しさ。
08FAIRWAY
胸躍るギター・リフ、鼓動を加速させる4つ打ちビート、さらにナカコーとミキの甘酸っぱいヴォーカルの掛け合いが見事に絡み合い、フロアを熱狂させるダンス・サウンドへ帰結していく。これをキラー・チューンと呼ばずして何と言おう。
09WHITE SURF style5.
スーパーカー史上最速のBPMでかっ飛ばす光速チューン。暴走するギター音がスピードの限界を超えて、鮮やかに未来を描き出している。血中のアドレナリン濃度が一気に上がるトランシーなギター・ロック。
10STROBOLIGHTS
ギター・バンドという今までのイメージを払拭、フルカワミキのハイブリットな歌声をフィーチャーした打ち込みラヴ・ソング。愛が瞬く石渡淳治の幾何学ワールドに、光のシャワーが燦然と降り注ぐ。
11YUMEGIWA LAST BOY
砂原力徳とのコラボレーションによって生まれた、トリップ必至のポップ・スタンダード。4つ打ちビートと幻想的な電子音で飾られた美メロとのファンタジーな邂逍は、クラブ・シーンからも熱く支持された。
12AOHARU YOUTH
生楽器をほとんど使用せず、透明な電子音で構成されたシンプルなメロディと歌詞のリフレインが逆に想像力を刺激し、壮大なサウンドスケープを生みだしている。エレクトロ期の一つの終着点とも言うべき悟りの境地。
13RECREATION
フロアを後にした彼らが辿り着いたのは、歌ものアンビエント。再び手にした楽器の音色を無機質にループさせ、益子樹のエコーで広がりをもったスタイリッシュな空間に、アンニュイなナカコーの歌声がふわり漂う。
14BGM
変則的なビートと奇妙な電子音が寄せては返す異色作。音作りの面でも遊び心満載だが、日本語詞と英語詞とを行ったり来たりするジュンジの作詞にも新展開が見られる。実験的で、次なるステージに向けての進化の過程といった感じ。
15LAST SCENE
ピアノの音をフィーチャーしたメロウ・チューン。淡々としたメロディの中にもしっかりとドラマ性を盛り込むあたりは、流石の職人芸。バンドの両頭であるナカコーの透明サウンドとジュンジの言葉が高濃度で交わり、極限の美しさを放っている。
16WONDER WORD
ダンサブルな4つ打ちビートと乾いたギター・カッティングから漂うニューウェーブの匂いがバンドの新たな展開を垣間見せていたが、このシングルを最後にスーパーカーは解散。以来、無限の未来と永遠の終局を今でも打ち鳴らし続けている。