ガイドコメント
1967年に発表されたデビュー・アルバム。黒人音楽の要素とロックが見事に昇華された傑作で、独創的なギター・プレイとブルースに根ざしたサイケデリック感にあふれている。「フォクシー・レディ」「ファイア」など名曲の数々を収録。
収録曲
01FOXY LADY
歌詞もギターも生々しい、ワイルドなR&Bソング。セクシーな女性に「いかすぜ、たまんねぇ」と連呼するナンパな歌詞は、のちにロジャー・ダルトリー(ザ・フー)の夫人となるヘザー・テイラーにインスパイアされたとか。
02MANIC DEPRESSION
躁と鬱がせめぎ合う、感受性豊かなヘヴィ・ワルツ。「ジミは躁鬱病」、そう指摘された記者会見中にこの曲の歌詞を書いた。ジミの暴れ場所に配慮しながら叩かれる、ミッチ・ミッチェルのおかず山盛りのドラミングが傑作。
03RED HOUSE
ジミ自作のスロー・ブルース・ナンバー。「本命がダメなら、その娘の妹を」と、ブルースでの定番の題材“一方通行の恋”に、彼なりのユーモアを交えて歌唱。この曲を契機にブルースの魅力を知った人も多かろう名演。
04CAN YOU SEE ME?
「覚えやすいこと=コピー可能」ではないことを思い知らせてくれる高度なギター・リフ。が、それも本人に言わせれば「フツウの曲」だそうだから、いやはや天才とはおそろしや。強烈な印象のアップ・テンポ・ナンバーだ。
05LOVE OR CONFUSION
「これは愛? それとも困惑?」と自問自答を繰り広げるダークな雰囲気のナンバー。“困惑”を体現したうねるギター、深いエコー処理を施された歌声が、楽曲をサイケデリックに味つけ。結局、答えは出ぬまま曲は終了。
06I DON'T LIVE TODAY
ジミが初めてワウ・エフェクトを使って録音した曲。ライヴでは「インディアンに捧げる」と前置きして歌われており、歌詞も現代社会における彼らの窮状を念頭に書かれている。跳ねたリズムが、なるほど部族の儀式風だ。
07MAY THIS BE LOVE
奥行きのあるシンフォニックなアレンジに耳も心も奪われてしまう、スピリチュアルなスロー・ナンバー。演奏の切れ間に聴こえてくる“パラッ”は、ジミが歌詞の書かれたカンペをめくった際にうっかり立ててしまった音。
08FIRE
男女の火遊びを歌ったへヴィ・ファンク。歌詞のネタ元は、寒かったジミが「暖炉の前に立ってもいい?」と律儀に断りを入れた時の会話。ギター・ソロ前でのセリフも、その暖炉の前で寝ていた犬に言ったもの。
09THIRD STONE FROM THE SUN
ニワトリ以外の生物が死滅した地球が描かれるジャジィなナンバー。スタジオ録音のアイデアと技術のフル活用が、楽曲のSF的ムードを高めている。途中で聴こえる謎の会話は、倍速再生すると聴き取り可能に。ぜひお試しを。
10REMEMBER
アルバム『アー・ユー・エクスペリエンスト?』収録曲中、もっとも印象の薄い部類に入るであろうR&Bナンバー。アルペジオを使ったギター・プレイはいくぶん大雑把ではあるが、実に素晴らしくて惚れ惚れする。
11ARE YOU EXPERIENCED?
ギターやドラムを逆回転再生したサイケデリック・ナンバー。まるでヒップホップのスクラッチのような冒頭部など、当時のジミの先鋭的な魅力が詰まっていて刺激的。平凡な日常から脱する術を、さらっと示唆した歌詞も秀逸。
12HEY JOE
ジミの記念すべき初シングル曲。バーズやリーヴスはフリーキーな高速ヴァージョンでカヴァーしたが、歌詞の不気味なムードを助長するスローなアレンジでカヴァーしたジミは技あり。ギターの音がとにかく強烈。
13STONE FREE
シングル「ヘイ・ジョー」のB面曲として発表されたファンク・ロック・ナンバー。激しいギター・プレイに心を奪われがちだが、楽曲を貫く疾走感やキャッチーな要素など、作曲家としての彼の非凡さも堪能できる名曲だ。
14PURPLE HAZE
1967年3月17日に発売され全英シングル・チャート3位を記録した2ndシングル。ブルース/R&Bを土台にした、猥雑でメタリックでサイケデリックなサウンドを歪みに歪ませたこの曲に、ジミの魅力が凝縮されている。
1551ST ANNIVERSARY
シングル「パープル・ヘイズ」のB面曲として発表された、「キャン・ユー・シー・ミー」系の跳ねたナンバー。曲題は“結婚51年目”の意味。歌詞では結婚の理想と現実について、彼の実体験(=両親の離婚)を元に描かれている。
16THE WIND CRIES MARY
当時の恋人とケンカしたジミが、彼女が家を飛び出した際に書いた別れのスロー・ブルース。クリアなギターの音色が聴くたびに心穏やかにさせてくれる技巧派な楽曲で、信号の青を人生の憂鬱になぞらえて説く歌詞も深い。
17HIGHWAY CHILE
「パープル・ヘイズ」のギター・フレーズを一部発展させたような曲調のジャズ・ブルースで、歌詞はジミの自伝的内容。ギターとベースのユニゾンによる得意の曲調だが、リズムがシャッフルなのがジミにしては珍しい。