ガイドコメント
96年にリリースされた、セルフ・プロデュースの2ndアルバム。1stの勢いそのままに、より深化したギター・ポップを聴かせる。『蝶々夫人』から借りたタイトルや浮世絵のジャケットをはじめ、日本関連の題材も目立つ秀作。
収録曲
01タイアード・オブ・セックス
念願のロック・スターになったリヴァースが、今度はモテすぎてセックスにも飽きたと冗談めかして嘆く。彼が真実の愛を欲するシャウトを響かせながら、ロシア民謡「一週間」ばりに性交渉相手の名を月〜土曜分まで列挙する。
02ゲッチュー
遊び歩いているのは君の気を引くためだと言い訳するナンバー。楽曲を覆うのは、サウンド以上に重たい空気。謝れど許してはくれない彼女への恐怖心を描いているようだ。彼も反省しているって、そんな助け舟を出したい気分になる。
03ノー・アザー・ワン
嘘つきで、ドラッグ三昧で、タトゥーありで、ペットはヘビ二匹の女のコへの想いを、少し尻込みしながら歌い上げるラブ・ソング。鼻歌みたいなファルセット歌唱がギター・パートとユニゾンする最後がユーモラスだ。
04ホワイ・ボザー?
結局のところ自分は恋をしたいのか、もうしたくないのかと、女々しげに自問自答するナンバー。それを快活な泣きメロ・サウンドをバックに繰り広げるあたりが、いかにもウィーザー。シンガロングを喚起するコーラスも力強い。
05アクロス・ザ・シー
日本のファンからの手紙に、歌詞を通じてリヴァースが返信。遠距離恋愛やプラトニックな恋愛など、ワケあり恋愛に苦悶する人ほど心を射抜かれるメロウ・ナンバーだ。大げさすぎないサビの高揚感など、魅力は尽きない。
06ザ・グッド・ライフ
登ったハシゴを外された主人公が、あの頃はよかった……と回想するナンバー。メンバー3人での重唱がもたらすサビでの心地良い加速感など、緩急巧みなパワーポップが展開される。イントロはバッドフィンガーの「嵐の恋」!?
07エル・スコルチョ
リヴァース自身の恋愛を取りまく環境を、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」になぞらえて歌っているような、ジャム・セッション風サウンドのシンガロング・ナンバー。歌詞中には“蝶々さん”と日本語で歌うパートも登場する。
08ピンク・トライアングル
結婚する気でいた相手が実は同性愛者だったと歌う、新型ラブ・ソング。センチメンタル度数MAXの泣きメロに乗せ、サビでは“彼女はレズビアン”とキャッチーに歌唱する。本気と冗談の境目が不明瞭な、彼ららしい歌世界だ。
09フォーリング・フォー・ユー
『ピンカートン』を全曲通して聴くと、「ピンク・トライアングル」をもう一度聴いている気分になるデジャ・ヴなメロディ。それでいて、これはこれでグッとくるのだから泣きメロは強し。ウェットさを増す終盤が秀逸だ。
10バタフライ
『ピンカートン』で描かれた、ヤンチャな振るまいへの謝罪を兼ねた弾き語りナンバー。アコースティック・ギターを配した柔和な歌唱がファンの心を打ち続け、いまも名曲の座を堅守。最後に繰り返す「ごめんね」も効果大だ。