ガイドコメント
同名の名ドキュメンタリー映画のサントラ盤。ビートルズのカヴァーで幕を開け、ライヴ・トラック、スタジオ録音音源から構成された88年リリース作。ぜひ映像とともに手に入れたい1枚。
収録曲
01ヘルター・スケルター
「チャールズ・マンソンが盗んだこの曲を盗み返す」とのMCでスタートするライヴ・カヴァー(87年11月8日録音)。ビートルズの原曲にある狂騒的ムードには欠けるものの、エッジのギターで聴くイントロはかなり新鮮。
02ヴァン・ディマンズ・ランド
曲題に冠された流刑地へと連行されんとするレジスタンス指導者を通じ、抑圧の歴史が継続していることを示唆したバラード。エッジが作詞し、彼がヴォーカルも担当。アイリッシュ・トラッドを思わせる美しいメロディだ。
03ディザイヤー
ボ・ディドリーを思わせる力強いジャングル・ビート。そこに同系統のビートであるストゥージズ「1969」の攻撃性を注入した屈強なロックンロール・ナンバーだ。デビュー10周年を目前にして、初めての全英1位を記録。
04ホークムーン269
彼ら独特のエコー感覚とアメリカ南部音楽とを融合させたゴスペル風ナンバー。ドラムス、ティンパニ、パーカッションが三位一体となった地響きのようなジャングル・ビートが迫力満点。ボブ・ディランがオルガンで客演している。
05見張塔からずっと
87年11月11日の野外公演で披露された熱っぽいボブ・ディランの曲のカヴァー。ジミ・ヘンドリックス版でも知られる曲だが、それを踏まえたエッジはジミ風のプレイも展開。が、ジミに比べるとやはり全体的に演奏しなれていない雰囲気が。
06終りなき旅
87年9月28日のマジソン・スクエア・ガーデン公演。全米1位、全英6位を記録した大ヒット曲を、地元合唱団らを起用しゴスペル風に披露。宗教的なテーマを内包した曲が、宗派を超えた会場の空気に触れスピリチュアルさを増している。
07フリーダム・フォー・マイ・ピープル
スターリング・マギー、アダム・ガッソウのブルースマンふたりによる演奏を抜粋した30秒強のインタールード。ふたりはのちに“サタン&アダム”を結成しており、『Mother Mojo』(93年)でこの曲の完全版を披露した。
08シルヴァー・アンド・ゴールド
ボノがキース・リチャーズ、ロン・ウッドと共演したアパルトヘイト抗議アルバム『サン・シティ』提供曲のU2版。ノリ一発の雰囲気が魅力だった原曲に対し、こちらは熱っぽいバンド・サウンドによる生真面目さが魅力。
09プライド
マーティン・ルーサー・キング牧師を題材にした曲で、エッジが弾く変幻自在のリフが見事。歌詞では師の暗殺に言及しているが、そこに書かれた暗殺時刻の間違いに気づき、昨今のライヴでは歌詞を訂正して歌唱している。全英3位。
10エンジェル・オブ・ハーレム
米国音楽巡礼中だった彼らが、聖地メンフィスにて録音し、ビリー・ホリデイに捧げたナンバー。ホーンを配したソウルフルな曲調だが、イントロはボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」風だ。
11ラヴ・レスキュー・ミー
コーラスでも参加したボブ・ディランとの共作ナンバーだが、曲調の堂々たるオールドタイマーぶりに、まるで古くから伝わるカントリー/ゴスペル・ナンバーを聴く気分。ダウンホームなブルース風のメロディにホーンの音色が彩りを添える。
12ラヴ・カムズ・トゥ・タウン
御大B.B.キングが参加したゴスペル・ブルース。悪魔=ブルース、神=ゴスペルと仮設定し対比させる歌詞の趣向は、信仰心の厚いボノならでは。それでいて自ら悪魔パートを歌ってみせる茶目っ気ぶりも。全英6位、全米68位。
13ハートランド
黒人音楽への傾倒が如実な『魂の叫び』にあって、この曲は鮮やかなエコーの効いた旧来のU2サウンドが楽しめる。『魂〜』以前のセッションで録音されていたこの曲は、旧来路線を求めるファンの担保ともなった。
14ゴッド・パート2
ジョン・レノン「ゴッド」同様、何を信じ、何を信じぬかを表明するボノ。神を信じぬジョンに、信じるボノ。しかし、最後はどちらも愛ある結論へと着地するとは妙味だ。ヘヴィなリズムに次作『アクトン・ベイビー』の予兆が見える。
15星条旗よ永遠なれ
ニカラグアの抑圧的外交政策を非難した「ブリット・ザ・ブルー・スカイ」へと続けて、アメリカ批判の効果を増すべく使われた音源。ジミ・ヘンドリックスによるウッドストック・フェスで演奏されたアメリカン・アンセムだ。
16ブレット・ザ・ブルー・スカイ
ニカラグアに対するアメリカの抑圧的外交政策を非難したナンバーで、歌詞には紛争地での実体験も綴られている。レッド・ツェッペリンとジミ・ヘンドリックスが共演したかのようなへヴィなブルース・ロック・サウンド。
17オール・アイ・ウォント・イズ・ユー
徐々に高ぶる大スケールのサウンドとアレンジは、まさに米国ルーツ・ミュージック巡礼の成果そのもの。抑制の効いた歌唱と演奏を、ヴァン・ダイク・パークスが手がけたストリングスが引き締めている。全英4位、全米83位。