ガイドコメント
2005年にデビュー35周年を迎えたRC。本作は“祝 デビュー35周年”プロジェクトの一環で、東芝EMI盤と同時発売されたオールタイム・ベスト。レーベルの垣根を越えた選曲で、バンドの変遷がたどれる。入門編にも最適だ。
収録曲
01トランジスタ・ラジオ
RCの代表的なナンバーのひとつ。授業をサボって屋上でラジオを聴きながら好きな女の子を想う青春ラブ・ソングだ。ファルセットのバッキング・コーラスや軽やかなギター・フレーズなど、実にポップに仕上がっている。
02ステップ!
エレクトリック志向になったRCが約3年のブランクを経て発表したシングル曲。ストリングスやブラスを駆使した派手なディスコ風ナンバーで、バックの演奏が実はスタジオ・ミュージシャンであることでも知られる。
03上を向いて歩こう
言わずと知られた坂本九の代表曲のカヴァー。めっぽう明るいロックンロールという大胆なアレンジで、極めてクセの強い清志郎のヴォーカルが自由奔放に展開される。特に頻繁に繰り返される高音での“アオー!”がユニーク。
042時間35分
1stアルバム『初期のRCサクセション』の冒頭を飾った軽快なブラス・ロック。随所で聴かれる清志郎のファンキーな掛け声には、ソウル系黒人シンガーの影響が感じられる。エンディングの女性の声はメンバーの妹とか。
05ぼくの好きな先生
RCにとって初のヒットとなった3rdシングル曲。ポコポコと間の抜けた打楽器音が印象的なチャーミングなナンバーで、孤独な美術の先生に対する劣等生ゆえに感じる親近感がテーマ。ショボくれ具合が実に心地よい。
06宝くじは買わない
1970年3月発表のデビュー・シングル曲。愛があるからお金は要らないというストレートな歌詞と、清志郎のハスキーだがまだクセの強くない歌唱が特徴的。バッキング演奏はメンバーの了承なく差し替えられたものだそう。
07涙でいっぱい
大好きな“君”が口さえ利いてくれなくなったことを嘆く悲しいフォーク・ソング。アコギ2人+ウッド・ベースという小編成だった初期RCらしい簡素な演奏ゆえに、清志郎の粘り気のあるヴォーカルが存在感を増している。
08キミかわいいね
可愛いだけでほかに何の魅力もない女性を冷ややかに嘲弄するフォーク・ロック。いかにも人を馬鹿にした清志郎のファルセットや、1分以上かけてフェイド・アウトするエンディングでの奔放なスキャットなどが聴きどころ。
09あの娘の悪い噂
悪い噂は信じない、だまされても“あの娘”を信じると叫ぶファンキーなロック・ナンバー。イントロから展開されるアコギの鋭いストロークやスリリングなオルガンなど、タイトなアンサンブルが光る。
10やさしさ
人のやさしさの裏に隠れた“いやらしさ”を突くネガティヴで攻撃的な1曲。クライマックスは清志郎のパンキッシュなダミ声ヴォーカルとサックスのノイズ音が炸裂する中盤で、その前後の一変する雰囲気が実に鮮やかだ。
11わかってもらえるさ
爽やかなピアノ・フレーズが印象的なアコースティック・ロック。人気が低迷し、バンドがほぼ解散状態にあった当時(1976年)の清志郎の気持ちが反映された曲。タイトル通り、この数年後にRCは人気を博すようになる。
12君が僕を知ってる
落ち着いた8ビートのポップ・ナンバー。僕のことをすべてわかっていてくれる“君”へののどかなラブ・ソング。イントロと間奏での美しいアコギ・フレーズや歯切れの良い“わかって〜”の掛け合いなど、聴きどころが多い。
13たとえばこんなラヴ・ソング
バリトン・サックスをはじめとするブラス・セクションがのんびりとした雰囲気を演出するミディアム・ポップ。“つまらないラヴ・ソング”と断った上で“お前が好きさ”と綴る、不器用を装ったような歌詞がニクい。
14Sweet Soul Music
金子マリのパワフルなバッキング・ヴォーカルと分厚いブラス・セクションが華を添えるグルーヴィなソウル・ナンバー。終盤にオーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」のフレーズを織り交ぜるなど、粋な計らいも。
15ボスしけてるぜ
ブルース進行のソリッドなポップ・ロック。“少し上げてくれおいらの給料”と訴えるユーモラスな歌で、声色を変えた“ボス”のセリフも登場する。発表当時、青年の労働意欲を削ぐと問題視され、かえって注目された。
16いい事ばかりはありゃしない
清志郎のソウルフルなヴォーカルが際立つミディアム・バラード。大して良くなっていない人生に気が付いて愚痴をこぼす後ろ向きな歌。“金が欲しくて働いて 眠るだけ”というフレーズは多くの人が共鳴するところだろう。
17ヒッピーに捧ぐ
ファンに人気の高い壮大なバラード・ナンバー。仕事仲間の死を悼むレクイエムで、突然の別れを受け入れられない悲痛な心情が綴られる。フェイド・アウトしながら響きわたる清志郎の慟哭が実に痛ましい。
18スローバラード
RCを代表する名バラード。清志郎の感情に直結したヴォーカルや完成度の高い歌詞、緩急あるバッキング演奏など、非の打ちどころがない。日本のロック史に残ると評されるほどの名曲だが、発表当時はまったく売れなかった。
19キモちE
清志郎の“キモちE〜”で始まる軽快なロックンロール。パンキッシュなヴォーカルや一音をかき鳴らすだけのギター・ソロ、勢い任せのバックの掛け声など、一貫してテンションが高い。楽曲のキーが“E”というのも面白い。
20雨あがりの夜空に
80年以降のRC快進撃の発端となった同年1月発売のシングル曲。セクシャルな要素を多分に含んだ隠喩たっぷりの歌詞(いまだ気づかず愛聴している人も多し)とヌケの良い名演は、以降のロック・シーンを大きく変えた。