ガイドコメント
豪華なセッション・メンバーとの絡みもすばらしい4作目。ジェフ・バクスター、メンフィス・ホーンを迎えて念入りに制作されている。74年発表作品。
収録曲
01SONG TO SEE YOU THROUGH
メンフィス・ホーンズをフィーチャーしたサザン・ソウル調の曲。これまでのドゥービーズ・サウンドに馴染んだファンには意外な曲想かもしれないが、デビュー以前にはR&Bバンドに在籍していた経験もあるというジョンストンにとっては原点回帰の1曲。
02SPIRIT
ジョンストン主導によるカントリー・ロック調の曲。これまでの豪快なノリのドゥービーズ・サウンドを継承しながらも細部はより凝っている。フィドルやペダル・スティール・ギターをフィーチャーした演奏がナイス。幸福な子供たちについての歌詞も良い。
03PURSUIT ON 53RD ST.
ジョンストン主導の豪快なロック・チューン。アルバム『キャプテン・アンド・ミー』の延長戦上にあるハード・ロッキンなドゥービーズ・サウンドが楽しめる。とにかく何も考えずに踊りたい、というファンには最高の1曲。
04BLACK WATER
シモンズのルーツであるブルーグラスの素養が開花した曲。アコギとフィドルが絡むアコースティックなサウンドに乗って、ジョンストンとは異なる独自の世界を開拓している。終盤のア・カペラでのコーラスとの掛け合いも楽しい。彼らにとって初の全米No.1ヒット。
05EYES OF SILVER
「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」の続編のようなサウンドが楽しめるジョンストン主導の曲。“ジョンストン節”なんて呼んでもおかしくはない独特のメロディも魅力的。これはもう彼の手グセのようなもので、きっとこの類の曲なら100曲でも200曲でも書けるのだろう。
06ROAD ANGEL
西海岸を代表するハード・ブギ・バンドとしてのドゥービーズの実力を披露した曲。それぞれの見せ場を作った構成はライヴを意識したものだろうが、同時代に活躍していたオールマン・ブラザーズ・バンドに対するライバル意識もそこには感じられる。
07YOU JUST CAN'T STOP IT
メンフィス・ホーンズをフィーチャーした、ドゥービーズ版ファンク・ロック。意外にもシモンズの曲だが、リード・ヴォーカルはジョンストン。本格的なファンク・ビートに乗って、音楽をモチーフにしたライヴ仕様の歌詞(性的な比喩でもある)を歌っている。
08TELL ME WHAT YOU WANT (AND I'LL GIVE YOU WHAT YOU NEED)
シモンズ主導のフォーキーなバラード。「欲しいものを言ってごらん/僕が君に必要なものをあげるよ」というフックのリフレインがやけに印象に残る曲。“want”と“need”の使い分けが巧い。シンプルな曲だが、細部は凝っていて、陰影も深い。
09DOWN IN THE TRACK
ジョンストン主導によるミディアム・テンポのブギ。トーキング・ブルース調のジョンストンのヴォーカルを堪能できる。鞭で打たれながら線路を敷く仕事をやらされている、哀れな男を主人公にした物語風の歌詞も面白い。ライヴで活きる曲のひとつ。
10ANOTHER PARK, ANOTHER SUNDAY
ジョンストンが歌うフォーキーなバラード。甘くドリーミーなドゥービーズ流フォーク・ロック・サウンドが心地よい。ジョンストンらしい率直な失恋の歌だが、メロディやサウンドまでが暗く落ち込むわけではなく、どちらかといえば彼の歌声もポジティヴに響く。
11DAUGHTERS OF THE SEA
SEやシンセサイザーを効果的に使った神秘的なサウンドから始まるドゥービーズ版ラテン・ロック。この時期のシモンズはさまざまなサウンドの曲に挑戦しているが、サンタナばりのこの曲もそのひとつ。歌詞がややドラッギーなところも魅力的。
12FLYING CLOUD
初の単独名義によるタイラン・ポーターのインストゥルメンタル曲。「砂浜の娘」の神秘的なムードを受け継いで、アコギやシンセサイザーを効果的に使った牧歌的なサウンドを聴かせてくれる。アルバム『ドゥービー天国』のエピローグのような2分間の小品。