ガイドコメント
80年代のUKロック・シーンを代表するバンドの86年発表、3rdアルバム。モリッシーの独特な詞世界や、ジョニー・マーの繊細なギター・プレイが結実した、彼らの最高傑作といわれる1枚。
収録曲
01THE QUEEN IS DEAD/TAKE ME BACK TO DEAR OLD BLIGHTLY (MEDLEY)
映画『L字型の部屋』(1962年)からサンプリングした古き良き英国を思わせる一幕が、勇ましいドラム・ロールにより断ち切られ、アップ・ビートな王室攻撃ソングへと一変。ギターもリズム隊も魅力的なまでにリズミック。
02FRANKLY, MR SHANKLY
慇懃(いんぎん)無礼な調子でもって上司に退職を願い出るさまを、ゆるやかなスカ・リズムに乗せて歌うユーモラスなナンバー。一般社会を舞台にしたような設定だが、実は彼らの所属レーベル“ラフ・トレード”に対する当てつけだったとする説が有力。
03I KNOW IT'S OVER
もうおしまいだと気付いた事柄が、実は始まってさえいなかったと煩悶する孤独感の漂う作品。モリッシーの感情が揺れ動く、見事な内省的な歌唱に引き込まれる。柔らかさと力感を兼ね備えたバック・トラックが好サポート。
04NEVER HAD NO ONE EVER
いたたまれない気持ちや不安感が伝わってくる寂しげな歌詞。思い出したくもない過去を少ない行数を使って表現した陰鬱な曲だ。モリッシーのヴォーカルとジョニー・マーのギターが、異なる陶酔感を発していて面白い。
05CEMETRY GATES
墓地を舞台にした生命力あふれるナンバーで、“セメタリー”の表記は作者モリッシーの綴りミスがそのまま使われている。詩文を書く際の盗用や剽窃を注意した詞から漂ってくる文学的な香りに魅せられた読書家も多数存在する。
06BIGMOUTH STRIKES AGAIN
モリッシーが自らの舌禍を逆手に取って歌った自虐的ビート・ナンバー。この曲をスミスの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」と位置づけるジョニー・マーが、味のあるギター・リフを次々と繰り出している。全英26位。
07THE BOY WITH THE THORN IN HIS SIDE
タイトルから鮮烈な印象を放つ、愛に枯渇した少年の心の叫びをリアルに描写した衝撃作。サウンドは明朗で美しく、ファルセットを交えた叙情的なモリッシーのヴォーカルと一体となって、激しい痛みを巧みに描き出す。
08VICAR IN A TUTU
バレエのチュチュを着た司教が登場するユーモラスなナンバー。そうした女装趣味を否定せず、逆に外見で人を判断することを否定してみせるところにモリッシーの真骨頂が。ロカビリー風の跳ねた曲調が題材のおかしみを強調している。
09THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT
「いつまでも消えない光が存在する」という、彼らの存在そのものを示すようなメッセージに心揺さぶられる、解散後の92年にシングル・カットされた作品。みずみずしいアレンジ、メロディックでエレガントな歌声は秀逸を極める。
10SOME GIRLS ARE BIGGER THAN OTHERS
クロス・フェイドのようなイントロや小刻みなギター・リフが折り重なり輪転する曲調など、耳に残る要素をいくつも備えたメロディアスな作品。「ある少女たちは他の少女たちよりも大きい」と歌う詞に人を食ったような味が。