ミニ・レビュー
人気絶頂の70年にリリースされたセカンド・アルバム。天才少年マイケルのシンガー/パフォーマーとしての早熟な才能を改めて思い知らせてくれる全米No.1ヒット(1)(3)を含む代表作。モータウンの社長ベリー・ゴーディ率いるプロデューサー集団の手腕も光る。
ガイドコメント
表題曲「ABC」と「小さな経験」が全米No.1を記録した、70年発表の2ndアルバム。デビュー以来、No.1ヒットを連発し波にのる彼らの、のびのびとした歌いっぷりを収めた1枚。
収録曲
01THE LOVE YOU SAVE
02ONE MORE CHANCE
マイケルのヴォーカルをフィーチャーしたドラマティックなバラード。流行のサイケデリック・サウンドの影響もあったのか、やや過剰演出気味のアレンジとコーラスがとても個性的だが、マイケルの歌声はそれに惑わされることもなく極めて誠実に、そして真摯に響く。
03ABC
「ABC」「123」「ドレミ」とサビ部分のフレーズが耳につき、学校で歌えそうな数え歌のように聴こえがちだが、実はかわいらしいラヴ・ソングになっている。この曲もデビューから数えて連続で全米No.1を獲得。
042-4-6-8
少年の恋心を見事に描いたラブ・ソングの秀作。主役の少年を演じるマイケルの瑞々しいヴォーカルをサポートするジャーメインの頼もしい歌声も助演男優賞クラス。数字を上手く使ったコーラスも印象的。歌詞とメロディ、ヴォーカルとサウンドの統一感が素晴らしい。
05(COME 'ROUND HERE)I'M THE ONE YOU NEED
ホランド=ドジャー=ホランドがミラクルズのために書いた難曲をカヴァー。攻撃的なまでにソウルフルに歌いまくるマイケル、聖歌隊のようなコーラス、サイケデリックなニュアンスもあるサウンド、というミスマッチな組み合わせが楽しめるユニークなナンバー。
06DON'T KNOW WHY I LOVE YOU NEED
先輩スティーヴィー・ワンダーのオリジナルをマイケルのヴォーカルでカヴァー。ソウル・シンガーとしての若きマイケルの実力を改めて思い知らせる熱唱が聴ける。本家スティーヴィーに勝るとも劣らない彼の歌唱力と表現力は、とても11歳の少年のものとは思えない。
07NEVER HAD A DREAM COME TRUE
スティーヴィー・ワンダーのオリジナルをカヴァー。ヴォーカルをシェアしたマイケルとジャーメインとの絶妙のコンビネーションがフィーチャーされている。ストリングスを配したサウンドも印象的だが、やはり当時11歳のマイケルの若さあふれる歌声が最大の魅力。
08TRUE LOVE CAN BE BEAUTIFUL
ボビー・テイラーのプロデュースによる意欲的なオリジナル曲。ストリングスをフィーチャーした凝ったサウンドとよく練られたコーラスをバックに、マイケルが素晴らしいヴォーカルを披露するラブ・バラッド。多分に実験的な意図も感じさせるアレンジも興味深い。
09LA-LA MEANS I LOVE YOU
トム・ベル&ウィリアム・ハートがデルフォニックスのために書いたR&Bの名曲をカヴァー。レコード・デビュー前からのレパートリーだったこともあり、マイケルが堂に入った見事なヴォーカルを披露している。彼らの秀逸なカヴァー・レパートリーの中のひとつ。
10I'LL BET YOU
ジョージ・クリントンやシドニー・バーンズが書いた異色作。ネイティヴ・アメリカン風味のダークな色調のファンク・サウンドに乗って、ジャクソン5の5人がそれぞれに個性的な歌声を披露している。1970年当時としては驚くほど斬新なサウンドが堪能できる貴重な1曲。
11I FOUND THAT GIRL
運命の恋人を見つけた歓びを歌ったR&B調のバラード。当時14歳のジャーメインが実年齢を忘れさせるほど成熟した歌声を披露している。ヴォーカル・グループとしての魅力と実力を証明する秀作。名曲「小さな経験」とのカップリングでシングル・リリースされた。
12THE YOUNG FOLKS
1970年という彼らの過渡期を象徴するような、斬新なタッチが光るR&B調のポップ・ソング。サイケデリックなギターとストリングスをフィーチャーしたサウンドをバックに、マイケルのハイ・トーン・ヴォイスが炸裂する。名盤『ABC』の巻末を飾るパワフルな意欲作。