ガイドコメント
50's感覚満載の「ルージュの伝言」や思わずもらい泣きするくらいせつない「卒業写真」など大ヒット曲を収録したサード・アルバム。フォークっぽさを脱却してカラフルなポップ路線へ。
収録曲
01COBALT HOUR
セスナの効果音で始まる3rdアルバム表題曲。軽快な16ビートに乗せて、1組の男女が海辺を爽快にドライブする様を描く。1970年前後の名車“ベレットGT”が登場するなど、ユーミンのトレンド感覚が表われている。
02卒業写真
歴史的名曲と断言することに異論を唱える人はいないであろう名曲。ハイ・ファイ・セットのヴァージョンも傑作と名高いが、キャラメル・ママのヘッド・アレンジが切ないユーミン・ヴァージョンこそ“青春そのもの”。
03花紀行
春の終わりに桜が散る様を歌った、3拍子基調のやさしいナンバー。身に降る花びらを“過ぎゆく春の投げる口づけ”と表現するなど、詩人的センスに満ちた歌詞が魅力。ユーミンの素朴で温もりのある声が実に慎ましやかだ。
04何もきかないで
6/8拍子のムード・ジャズ風ナンバー。イントロの口笛や滑らかなストリングスなどのロマンティックなサウンドが、泡沫の恋のひとときをせめて色鮮やかに演出する。満天の星を連想させるギター・ソロも聴きどころ。
05ルージュの伝言
1975年リリースの、泣く子も踊り出す歴史的名盤『COBALT HOUR』に収録された曲で、米国ポップス黄金期のブリルビル系オールディーズへのオマージュというべき楽しい一曲。コーラス・アレンジは山下達郎。
06航海日誌
人の一生を船旅に喩え、ユーミンならではの人生観を歌ったスロー・バラード。わずかにビブラートのかかった高音域のヴォーカルやムーディなストリングスが印象的。歌詞中での表記が「後悔日誌」になっているのもオツ。
07CHINESE SOUP
ジャグ・バンド・ミュージック風ナンバー。これまでの恋愛をゴッタ煮のスープ料理に見立て、きれいサッパリ忘れようというユニークな1曲。松任谷正隆の実弟・愛介によるフィドルは聴きごたえあり。
08少しだけ片想い
自分を想う以上に相手を愛してしまっている、初々しい恋心を歌った軽快なポップ・チューン。ジェラシーや微妙な期待など、実に愛らしい女の子像を描いている。大々的に英語詞を取り入れた最初の作品でもある。
09雨のスティション
10アフリカへ行きたい
3rdアルバムのラストを飾る軽快な16ビート曲。灼熱の大地への憧れと興奮を感じさせるスリリングに躍動するグルーヴが特徴的。歌詞中の“セスナ”はエンディングで効果音となり、アルバムの冒頭へ再び誘う。