ミニ・レビュー
ついに出た“解散”デビュー盤。ここにはガンズのアルバムと同じ、ピュア過ぎて今にも壊れそうなロックン・ロールがある。彼らのことをただのバカ・パンクと言う奴は(5)(11)を聴け、パンク時代のクラッシュの名曲に並ぶロック美学があるから。
ガイドコメント
“デビュー盤を発表したら解散する”という宣言とともにセンセーショナルに登場したマニックスの、まさにこれがデビュー作。1枚で解散しなかったのもまたパンク・バンドらしいところだが。
収録曲
01SRASH'N'BURN
『ジェネレーション・テロリスト』のオープニングを飾るパンキッシュなナンバー。ギター・ソロからサビへの流れは、「パンク」の一言では片付けられないほど大きな展開をみせている。サビの「スラッシュ&バーン!」のフレーズは、拳を上げずにはいられない。
02NAT WEST - BARCLAYS - MIDLANDS - LLOYDS
現代社会へ向けて痛烈な批判を投げかけるヘヴィなリリックに対し、楽曲は全編メジャー・コードで展開される痛快なパンク・ナンバー。エンディングのピアノが切なさを誘い、最後の1音が重く響いて“公開死刑”を完成させる。
03BORN TO END
社会のシステムに対する窮屈さや怒りがテーマ。「長崎DOLLが燃え上がる」というフレーズには、日本人なら耳を傾けずにはいられないだろう。バッキングとリード・ギターの絡みが歌以上にメロディアス。
04MOTORCYCLE EMPTINESS
マニックスには珍しいミディアム・テンポのナンバーで、彼らが本来持つ美しいメロディやセンスがより引き立っている。全編メジャー・コードで構成され、広大な空をイメージさせるサウンドが特色。ファンからの人気も高い初期の名曲のひとつ。
05YOU LOVE US
「世間の嘘を見通したからこそ、もう嘆き悲しむのはやめにしたんだ」とすべてを受け入れた上で叫ぶ言葉は、初期衝動的なピストルズ以上に胸に深く突き刺さる。ラストの荒れ狂うギター・ソロが必聴のパンク・ナンバー。
06LOVE'S SWEET EXILE
力強い16ビートと低音ギターの刻みのバランスが絶妙なロック・ナンバー。ジェームス・ディーン・ブラッドフォードの伸びやかなヴォーカルとテクニック抜群のギター・ソロが聴きどころだ。
07LITTLE BABY NOTHING
ポルノ女優、トレイシー・ローズとのデュエット。男性視点の詞をジェームス・ディーン・ブラッドフォードが、女性視点のサビをトレイシーが歌っている。「私には自尊心なんてないから、皆に愛されるのよ」と歌うトレイシーのヴォーカルが切ない。
08REPEAT(STARS AND STRIPES)
「リピート(UK)」の別ヴァージョン。打ち込みやスクラッチ音を多用し、マニックスの楽曲としては実験的なアレンジが施されたナンバー。ヒップホップ的な要素が強いアレンジのため、言葉の一つ一つにオリジナル・ヴァージョン以上の強さを感じる。
09TENNESSEE
イントロが、セックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」を彷彿とさせる王道パンク・ナンバー。Aメロ、Bメロの2パターンでも十分に楽曲として成立しているが、後半に大きく展開するCメロがドラマティックで、マニックスらしさが出ている。
10ANOTHER INVENTED DESEASE
Bメロの高速ビートから大きく広がるサビへの展開が聴きどころのロック・ナンバー。高速ビートに乗ったメロディアスなギター・ソロにセンスが光っている。“人間は無意識に新しい現代病を望んでいる”というドキっとするような内容だ。
11STAY BEAUTIFUL
イントロのベースの高音弾きが、パンク・キッズの琴線に触れること間違いなしの8ビート・ナンバー。タイトルの「美しいままでいてくれ」という心の叫びを“怒り”で表現したような歌詞となっている。
12SO DEAD
軽快な8ビートに乗ったアルペジオが心地良いナンバー。「マリリンほど良い女はいないって? 確かに整形手術の効果は偉大だな」という過激な詞と音の爽快さとのギャップが、なんともマニックスらしい。
13REPEAT(UK)
イントロの街で鳴り響くサイレンや曲中に登場するマシンガンの銃声が、聴く者に切迫した気分を与える。タイトル通り「復習しろ」「無気力世代」など、どきっとするような刺激的な言葉がリピートされている。
14SPECTATORS OF SUICIDE
ゆったりとしたリズム、クリーンなギターのストローク、美しいメロディの繰り返し。良質のポップ・ミュージックに必要な条件がすべて揃ったような楽曲に、「民主主義への大いなる批判」という過激なテーマを持ってくる彼らのセンスが活かされたナンバー。
15DAWN DOG
全編通して2分弱というタイトでストレートなパンク・ナンバー。手当たり次第に餌を貪る犬と資本主義の中で生きる人間を、ダブらせて歌う。“皮肉たっぷりの内容+シンプルな曲構成”というマニックス独自の「普遍性」が顕著に表われたナンバー。
16CRUCIFIX KISS
ジェームス・ディーン・ブラッドフォードのハイトーン・ヴォーカルが痛快なパンク・ナンバー。「汝よ、我を愛せ 汝の魂に終身刑の釘を打ち込め」のシャウト後に登場する高速ギター・ソロは、クールの一言に尽きる。
17METHADONE PRETTY
ミディアム・テンポだが力強いロック・ナンバー。「人間のクズ」が抱え込んできた怒りをすべて吐き出したかのような詞を、ジェームス・ディーン・ブラッドフォードが情熱的に歌。タイトル通り、世間を告発する姿勢が全面に出ている曲。
18CONDEMNED TO ROCK 'N' ROLL
1stアルバム『ジェネレーション・テロリスト』のエンディングとなるハードロック・ナンバー。6分にも及ぶ曲の後半は、ギター・セッションでたたみかける。吠える低音部分と高揚感全開の高音のアンサンブルが圧倒的だ。
19MOTOWN JUNK
1stアルバム『ジェネレーション・テロリスト』のボーナス・トラック。“過去はまったく意味を持たない、大事なのは今なんだ”というメッセージを「ジョン・レノンが死んだ時はあざ笑ってやった」という衝撃的な言葉で表現した問題作。