ミニ・レビュー
マニア爆笑のポップおたくバンドが2年半ぶりに発表した2作目。ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、クイーン、エルトン・ジョン、ウィングスなど、60〜70年代ロックの最良の断片をコラージュしたよなメタポップ作品集。原典への愛情と批評性の按配もナイス。
ガイドコメント
日本でもヒットした2ndは、前作以上の大傑作。ビーチ・ボーイズ、クイーン、ELO、そしてビートルズ。偉大なる先達への過剰なまでの愛情に満ちた本作は、我々ポップ中毒者の永遠の親友にして悪友でもあろうか。残念ながらバンドは本作を最後に解散。合掌。
収録曲
01HOSE
世紀の名盤『こぼれたミルクに泣かないで』のプロローグは、アカペラによる美をきわめた子守唄。麗しいメロディと圧巻至極なる完璧なコーラス・ワークには、まさに往年のクイーンへのオマージュが静かに、そして波々と湧き出ている。
02JOINING A FAN CLUB
ジェリーフィッシュの最高傑作にして“パワー・ポップ”の代名詞。クイーンのごとくドラマティックで、ビートルズのごとく遊び心満点で……、まさにロックンロールの強靭な軌跡をわずか4分に超凝縮した、圧巻、驚異のトラック。
03SEBRINA, PASTE AND PLATO
サーカスが現れたかのようなワクワク感あふれる、カラフルなトラック。眠れる童心をくすぐる懐古趣味なサウンドは往年のタイニー・ティムを彷彿とさせるも、不意にハード・ロック魂が炸裂したりと、しっかりパワー・ポップしている。
04NEW MISTAKE
幾世代にもわたって繰り返される恋の過ちを描いた、哀しくもやけに爽やかなミドル・バラード。「ヘヴィな6/8を書きたかった」とのアンディのコメント通り、ポップな中にもハード・ロックを匂わせる重厚なサウンドがバックを固める。
05THE GLUTTON OF SYMPATHY
シニカルなリリックの裏に「強くあれ」というメッセージを込めた、ドラマティックなバラード・ナンバー。いかにもハード・ロック・バンド指向の王道路線だが、聴き込むほどに“ポップ・オタク”ぶりが発見できる、スルメのように味わい深い逸品。
06THE GHOST AT NUMBER ONE
死んだロック・スターを崇拝する世間を描いたという本作は、そのリリックにふさわしく往年のロック・スターの輝ける遺産が随所にきらめくカラフルなトラック。クイーン・ミーツ・ビーチ・ボーイズといった趣の、ポップ・マニア魂炸裂の一品。
07BYE, BYE, BYE
「愛とは、冷めゆくものである」という哀しい真理を綴った、哀愁漂うポップ・チューン。ノスタルジックなポルカを基調としつつも、ポップ好きのツボをグイグイと押してくれる展開は、やっぱりジェリーフィッシュならではだ。
08ALL IS FORGIVEN
大胆なドラミングに轟くファズ・ギター、加えてアンディのマッチョ・ヴォイス。その強靭な音の骨格を隈なく肉づけするおいしいフレーズは、大盛り過ぎてもはやカオス。そんなところにXTCの遺伝子を見る、絶妙のヒネクレ・ポップ。
09RUSSIAN HILL
「ニック・ドレイクとフランク・シナトラの出遭い」と自賛する、珠玉のアコースティック・バラード。素朴なギターにたゆたうペダル・スティール。その緩やかなサウンドが醸し出す空気はどこまでも優しく、そして懐かしい。
10HE'S MY BEST FRIEND
自ら「ハリー・ニルソンへのラヴ・レター」とコメントする通り、まさに天才シンガーが蘇ったかのようなポップでビートリッシュなナンバー。ジョン・レノンが生きていたら、ニルソン同様にジェリーフッシュも大絶賛しただろう。
11TOO MUCH, TOO LITTLE, TOO LATE
本作収録のアルバム『こぼれたミルクに泣かないで』の名邦題に呼応する、ポジティヴィティあふれるミドル・バラード。キャッチーながらも一筋縄ではいかないメロディと、お得意のクイーンばりの華麗なコーラスは、まさに王道のクラゲ節。
12BRIGHTER DAY
サーカス団のパレードに人生を重ねた、哀愁漂うヘヴィ・ポップ。それは、道化を演じながらも明日を信じて生きる、まさに我々の人生そのもの。名盤『こぼれたミルクに泣かないで』の最後を飾るにふさわしい、感動のエピローグだ。