ミニ・レビュー
74年10月に発表されたユーミンのセカンド・アルバム。「海を見ていた午後」や「12月の雨」といった初期のユーミンの代表曲が聞ける。バック・コーラスに山下達郎や大貫妙子、吉田美奈子らが参加している豪華盤です。
ガイドコメント
ファースト・アルバムの荒井由実ワールドをさらに浸透させた74年発売のセカンド。彼女から生まれでてくる詞はどれも鮮やかな映像を想像させ、非現実が現実にあるように思わせる力があった。
収録曲
01生まれた街で
風をキーワードに故郷への愛情を綴った、爽やかなポップ・チューン。山下達郎らシュガー・ベイブと吉田美奈子がバック・コーラスを担当した贅沢な1曲。一気に雰囲気を変えるモダンなフルート・ソロなどが聴きどころ。
02瞳を閉じて
海に囲まれた地元の島と、そこを離れて暮らす友人への愛情を綴った歌。長崎県・奈留島の高校生の依頼でユーミンが作り、後にNHKが紹介したことでも知られる。鮮やかなバック・コーラスはシュガー・ベイブが担当。
03やさしさに包まれたなら
04海を見ていた午後
か細いヴォーカルと柔らかいエレピ・サウンドが印象深い、静かなバラード曲。横浜に実在するレストランを舞台に、かつての恋人を思い起こす切ないナンバー。ユーミンの詩人としての才能が際立つ見事な情景描写に注目。
0512月の雨
軽快なポップス調の失恋ソング。別れた恋人をいまだに身近に感じながらも、時が経てば傷も癒えるだろうと理解しはじめる。そんな微妙な時期の心情がテーマ。シュガー・ベイブの爽やかなコーラスが前向きな印象を与えている。
06あなただけのもの
矢野顕子ら豪華ゲストがコーラスに参加したファンキー・チューン。盲目的で絶対的で妄想がかっていてワガママだが一途でもある、という女性特有の恋心を歌う。粘り気のある演奏に微妙に馴染めないヴォーカルが特徴的。
07魔法の鏡
シングル「やさしさに包まれたなら」のカップリング曲のアルバム・ヴァージョン。ユーミンにしては比較的珍しいキャッチーな王道的歌謡ナンバーで、後に早乙女愛や中森明菜などがカヴァーしたことでも知られる。
08たぶんあなたはむかえに来ない
バウンス・リズムが心地良いミディアム・ナンバー。タイトル通り、諦め切れない女心がテーマで、“たぶん”という不確かな一言にこの歌の心情が集約されている。サビ部分でドラムが抜けるなど、アレンジもなかなか粋。
09私のフランソワーズ- WATASHI NO FRANヌOISE -
フランス人女性歌手フランソワーズ・アルディを歌ったミディアム・バラード。ストレートな歌詞とオーソドックスな曲構成が特徴的。大御所とされるユーミンも、憧れのアーティストを持つ一音楽ファンであることがわかる。
10旅立つ秋
晩秋の儚さと恋愛の不確実さを重ね合わせた暗いナンバー。本曲でアルバムが締めくくられるので、聴き終わった後になんともいえない虚しい余韻を残す。ポップスの女王とは縁遠いネガティヴなサウンドが味わいどころ。