ミニ・レビュー
シティ・ポップスの第一人者としての地位をユーミンが確立したアルバム。歌を聞いて情景が浮かんでくる「中央フリーウェイ」は、しっかりとロケハンまでしてつくった曲。見事に70年代の青春している(!?)アルバム。
ガイドコメント
クルマで聴く曲の定番としてあまりにも有名な「中央フリーウェイ」。同ナンバーを収録した76年発表のこのアルバムで、ユーミンはタイトル通り“満月”の一瞬先の頂点にまで登りつめた。
収録曲
01さざ波
4thアルバム『14番目の月』のオープニングを飾る軽快なポップ・チューン。独りボートに乗って漂いながら傷ついた心を整理する失恋ソング。正直に綴られる言葉からは、ユーミンの女性としての魅力が感じられる。
0214番目の月
03さみしさのゆくえ
4ビート基調のマイナー・ソング。バックの演奏は華麗だが「他人の淋しさなんて救えない」「何かが本当に終わる」など、歌詞は極めてネガティヴ。誰もが持っている心の陰を歌ったユーミンにしては珍しく暗い1曲。
04朝陽の中で微笑んで
歌い始めの旋律が印象深い、壮大なバラード曲。宇宙から見れば人の愛なんてごく小さいものに過ぎないというユーミンの死生観と、身をやつすほどの深い愛情を巧みに表現。諫山実生がカヴァーしたことでも知られる名曲だ。
05中央フリーウェイ
06何もなかったように
ユーミンが愛犬を亡くした際に作ったとされる静かなバラード曲。幸せはなくなって初めて気付くものであり、愛する生命は記憶として人の心に残るものだと悟る。犬への愛情からかピアノは彼女自身が演奏している。
07天気雨
初夏の浜辺を舞台に“あなた”への初々しい恋心を綴った、軽快なポップ・ナンバー。“ゴッデス”や“湘南線”など、具体的な名称を出すトレンディな歌詞が魅力。ファッショナブルに恋愛を歌うユーミンらしい1曲だ。
08避暑地の出来事
軽快なラテン調のサマー・ソング。パーカッションや細野晴臣によるスチール・ドラムが演出する、トロピカルな雰囲気と高揚するドキドキ感に満ちた無防備なまでにハッピーな歌詞が特徴的。2分半強という潔さも好印象。
09グッド・ラック・アンド・グッド・バイ
6/8拍子基調のライト・ポップス。かつての恋人への未練をテーマにしたストーリー性あふれる歌詞とムードたっぷりのバッキング演奏が、まるで映画を観ているかのような気分にさせる。岡崎友紀のヴァージョンも有名。
10晩夏 (ひとりの季節)
夏の終わりの風景に生気を失いつつある心情を重ね合わせた、淋し気なバラード。鮮明な映像を描くことに重点が置かれた15行あまりの歌詞には様々な“色”が登場し、純日本的風情を感じさせる。ファン人気の高い1曲。