収録曲
01ALL MOD CONS
それまでの“パンク>モッズ”から“パンク<モッズ”へと、音楽面での変化が如実に表れているビート・ナンバー。ザ・フーの影響も強く浮き出たモッドでポップなサウンドは、ネオ・モッズ・ブーム発生の火口となった。
02TO BE SOMEONE (DIDN'T WE HAVE A NICE TIME)
ザ・フー直系のポップでキレある曲調に、ビートルズ「タックスマン」風のリズムでアクセントを。「ギターをかたどったプールなんか」とエリック・クラプトン宅のプールを揶揄してみせるなど、歌詞には皮肉がたっぷりだ。
03MR.CLEAN
少しブルージィな雰囲気を漂わせたナンバーで、それまでの性急さとは打って変わってのミディアム・テンポが新鮮。安定した生活への悪意がまき散らされた歌詞には、この時期のウェラー作品に見られたシニシズムが突出している。
04DAVID WATTS
優等生になれない男の嫉妬を歌った、キンクスの1968年発表曲をカヴァー。ピアノをアクセントに使ったのは原曲同様ながら、ビートも歌唱の口調も強めて演じられており、原曲が持つ喰えない雰囲気を薄めた実直な解釈となっている。
05ENGLISH ROSE
ウェラーのソングライターとしての進化が見られる美しいアコースティック・バラード。皮肉屋街道まっしぐらだった彼が、イギリスの国花“バラ”に恋人を重ねて想うロマンティスト&愛国者ぶりを披露し世を驚かせた。
06IN THE CROWD
永遠の若者賛歌「ジ・イン・クラウド」を曲名/主題ともに換骨奪胎したような曲。かつて「アウェイ・フロム・ザ・ナンバーズ」で歌った個性確立への呼びかけが、ここで再度なされている。間奏部はザ・フーの影響が絶大。
07BILLY HUNT
「デイヴィッド・ワッツ」に通じる優等生キャラ“ビリー・ハント”を主人公にした曲。「デイヴィッド〜」が嫉妬を元にした曲だったのに対し、こちらは皮肉を元にしたホメ殺し調。初期ジャムに通じるソリッドな曲調だ。
08IT'S TOO BAD
「シー・ラヴズ・ユー」風ギター・フレーズやハモりから、ビートルズへの愛情が伝わってくるキャッチーな佳曲。往年のポップスに通じるもどかしい恋を描いた詞やメロディに、ジャム流ビートを融合させた秀逸な楽曲だ。
09FLY
疾走一辺倒ではないバンドの姿を提示したアコースティック・ナンバー。太陽と恋を絡める歌詞は、ソロ後のウェラー作品でもよく見られる作風。シャレたギター・ワークも、のちのスタイル・カウンシルを思わせ興味深い。
10THE PLACE I LOVE
ビートルズ、ザ・フーら先達たちの音楽性を無邪気に消化し、彼ら独自のモッド・ナンバーとして新たに再構築。伸ばしたり刻んだりを繰り返すギターやベース・リフで、楽曲の緩急を巧みに操ってみせるアレンジが印象的。
11'A' BOMB IN WARDOUR STREET
ロンドンを襲った爆弾テロの凄惨な描写を通じ、憎しみが生む戦争の歴史に対する怒りを表明したナンバー。力強いビート、ひずむギター、吼えるような歌唱。すべてのプレイを暴力に対する激しい怒りに直結させた曲だ。
12DOWN IN THE TUBE STATION AT MIDNIGHT
地下鉄のトンネルと労働者階級の人生を重ね、そこに日常に潜む狂気を絡めた歌詞。ウェラーの作家性が発揮された詞世界のやるせなさを、黒っぽいリズムの曲調が増してみせる。地下鉄のSEに映像的イメージも膨らむ傑作。