ガイドコメント
95年発表の通算10作目の低価格再発盤。インディ時代のベスト『スクリーミング・フィールズ・オブ・ソニック・ラヴ』直後に発表された、長尺のカオス・チューン「ザ・ダイアモンド・シー」が壮絶。
収録曲
01BECUZ
タイトル、歌詞、メロディから、パティ・スミス「ビコーズ・ザ・ナイト」への敬意が伝わってくるキム歌唱のナンバー。鋭利でカオティックなサウンドがスリリングだが、ところどころにキャッチーなフックも用意してある。
02JUNKIE'S PROMISE
ソニックス真骨頂のフィードバック・ノイズが大炸裂したナンバー。彼らの登場に伴いスタイル化した巷のノイズとは一線を画す、濁流のごときノイズに大興奮。歌詞でカート・コバーンに言及しているとする説は、サーストンが否定。
03SAUCER - LIKE
トリプル・ギター編成による録音の醍醐味が味わえるリー・ラナルド歌唱のクールなナンバー。それぞれ自由に弾かれているようで、なぜか不思議にハモってはいる。催眠的だったり官能的だったり、リフの種類も三人十色。
04WASHING MACHINE
回る自分のハートを洗濯機にたとえた歌詞が面白い、キム歌唱のナンバー。トリプル・ギターでの録音だが、曲の途中でリー・ラナルドは別なギターを弾いているので、実質ギター4本による録音だ。後半の多重ギター・ノイズに悶絶。
05UNWIND
サーストンとリーが初デュエットを聴かせてくれるバラード・ナンバー。息の合ったソフトなハーモニーを聴かせる一方で、ふたりのギターは美しいインター・プレイを熱っぽく展開。予定調和に真っ向から対峙した展開だ。
06LITTLE TROUBLE GIRL
キムがブリーダーズのキム・ディールらと合唱する微笑ましいナンバー。ノイズらしきサウンドは皆無に等しい、世にも珍しき“歌モノ”ソニックス。通常ならば心温まるべき曲調だが、歌い手が歌い手ゆえ妙な気分に。
07NO QUEEN BLUES
ノイズ過多なストゥージズのような凶暴さが魅力のナンバー。一枚が二枚、二枚が四枚と増えるガマの油売りの口上のごとく、ギターの本数がどんどんと増すような錯覚に陥る音処理が壮絶。最後のシンバル連打も技ありだ。
08PANTY LIES
登場する“パンツを履かない”で周囲の関心を引く女性像に、“あなたのアイデンティティとは?”というメッセージを込めた、キム流フェミニズム・ナンバー。ザラザラとした感触のサウンドは、デモ音源のようであり、キム以外のメンバーは脇役に徹している感じだ。
09(BECUZ CODA)
10SKIP TRACER
リー・ラナルドのよどみないスポークン・ワードにゾクゾクとさせられるナンバー。歌詞の内容からカート・コバーンを連想する向きもあるようだが、実際に歌われているのは男女デュオ“メッカ・ノーマル”の思い出。
11THE DIAMOND SEA
サーストンの歌唱が主役の序盤を経て、ノイズの大海原へと船出する約20分の大曲。メロディの魅力と実験的なサウンドの違和感ない同居ぶりに、このスタイルの頂を見た思い。知性あふれるフリーク・アウト・ナンバーだ。