ミニ・レビュー
デトロイト出身の姉弟デュオが2000年に発表したセカンド。サン・ハウスなど2曲をカヴァーしているようにブルースをベースにしたガレージ・サウンド。といっても少数のゲストを除けば(ほぼ)ギター弾き語り+ドラム。簡素で荒々しく下手で力強い。
ガイドコメント
現在のガレージ・ロック・ブームの火付け役ともいえるザ・ホワイト・ストライプス。待望の新作『エレファント』発売に合わせ、2000年にリリースしたブレイク前夜の2ndアルバムが再発。
収録曲
01YOU'RE PRETTY GOOD LOOKING
まるでオールディーズ・カヴァーを聴いている気分になる、すこぶるキャッチーなストライプス流パワー・ポップ。サビでの転調やエンディングでの“決め”など、ヒット・ポップスのお約束を巧みに取り込んだ構成が技アリ。
02HELLO OPERATOR
ギター・リフとドラミングの相乗効果が生む、簡素で“シンプル・イズ・ベスト”なガレージ・ブルース。ところどころで効かせるタメが絶妙で、ペイバックスのジョン・シマンスキーが吹奏するブルース・ハープも効果てきめん。
03LITTLE BIRD
ストライプス得意のレッド・ツェッペリン風ブルース・ロック。序盤のスローな展開から徐々に曲調が加速する中盤。速くなるほど演奏がおぼつかなくなるギターは、ひょっとしてジミー・ペイジへの嫌味、もしくは敬意の表われか!?
04APPLE BLOSSOM
ブルース原理主義者の彼らにしては珍しいビートルズ風ナンバー。ガレージ/ブルース色を薄めたメランコリックな曲調のみならず、楽器ひとつひとつの音色までもがビートリッシュ。彼らの器用さが伝わってくる一曲だ。
05I'M BOUND PACK IT UP
「鳴らない電話の前で待たせてゴメンよ」と歌う、寂しいムードのアコースティック・ブルース。ジャック・ホワイトがベースを弾く異例な事態が味わえるこの曲には、ゲストが弾く電気ヴァイオリンが聴けるオマケも付く。
06DEATH LETTER
サン・ハウスの『ファーザー・オブ・ザ・デルタ・ブルース』は、ジャックの人生を大きく変えた作品。その冒頭を飾っている曲のカヴァーだが、サンへの敬意が強すぎたのか、いつになく無難な仕上がりのカヴァーに終始。
07SISTER, DO YOU KNOW MY NAME?
ストライプスの楽曲ではおなじみのテーマ“学校”が歌われたスロー・ブルース。文字どおりブルーな感情で彩られた歌詞を、ジャックの抑制を効かせたギターと歌唱がますます青々とした色合いへと変えてみせている。
08TRUTH DOESN'T MAKE A NOISE
レッド・ツェッペリンの「天国の階段」前半部から、荒涼とした空気だけを抽出したようなブリティッシュ・ロック風味のナンバー。最後まで陰ったままの多湿なメロディはじめ、どうにもストライプスらしさに欠ける曲だ。
09A BOY'S BEST FRIEND
デトロイト発ミミシッピー着の汽車に乗ってのデルタ・ブルース紀行を擬似体感させてくれる穏やかなナンバー。メグが叩く無常さをたたえたタンバリンの音色が、楽曲の旅情ムードをやるせなく盛り上げてくれる。
10LET'S BUILD A HOME
ジャック・ホワイトがブルース・リーばりの怪鳥音をノリノリで連発する、ブルージィなガレージ・ロック・ナンバー。冒頭で使われている会話は、幼少時のジャックが母親ら家族と話している様子を収録した貴重な音源。
11JUMBLE, JUMBLE
きしむギターの旋律が、人間の黒い感情に火を点ける危険な香りのガレージ・パンク・ナンバー。リズムがギクシャクとした凹凸な曲調は、まさに曲題どおりの乱雑さ。煮詰まった気分で聴くと発狂してしまいそうになる!?
12WHY CAN'T YOU BE NICER TO ME?
ジミ・ヘンドリックスの「紫のけむり」を思わせるギター・リフが執拗に繰り返される、ヘヴィなブルース・ロック・ナンバー。いつもならばギターが弾くべき決めのフレーズを、電気ヴァイオリンに弾かせたアイデアが◎。
13YOUR SOUTHERN CAN IS MINE
戦前ブルースの代表格ブラインド・ウィリー・マクテルが残した、ラグタイム・ナンバーのカヴァー。原曲以上にのんびりとしたテンポで、ジャックとメグが軽快にデュエット。曲の最後ではマクテルの貴重な肉声も聴ける。