ミニ・レビュー
97年にデトロイトで結成された姉(ドラム&歌)弟(ギター&歌)バンドの4枚目。デジタル度0のくぐもった音の中から立ち現れる枯れ節ロックは、なんともノスタルジックでローファイ。ある時はゴリゴリ、またある時はナヨナヨと、忙しい。
ガイドコメント
デトロイト出身のホワイト姉弟からなる2人組のニュー・アルバム。しなやかでダイレクトな音をドラムとギターによるベースレスの編成で聴かせる。ちなみにレコーディング期間は2週間以内なのだとか。1stと2ndアルバムも同時発売。
ガイドコメント
前作『ホワイト・ブラッド・セルズ』で世界的にブレイクしたザ・ホワイト・ストライプスが待望の新作をリリース。ガレージ・ロック・ブームの火付け役ともいえる彼らだけに、大注目の1枚だ。
収録曲
01SEVEN NATION ARMY
「珍しくストライプスがベースを使った!!」と興奮させられる冒頭だが、じつはギターにオクターヴ処理を加えて出したベース音。その労力のかけ方、こだわりに、さすがはストライプスと妙に感心させられる電化ブルース。
02BLACK MATH
阿波踊りにも合いそうな祭ばやし風ギター・リフ。学級崩壊をテーマにした歌詞が描く反抗心を、「えらやっちゃ、えらやっちゃ」とリフが煽り立てている。リフがエキセントリックさを増す終盤には、学級崩壊はさらに深刻化。
03THERE'S NO HOME FOR YOU HERE
ジャック・ホワイトの歌声が計12人分も重ねられた、山下達郎ばりの多重コーラスに唖然。8トラックで作っているため、歌声はかなりすし詰め状態。ガレージ・パンク・サウンドで聴くクイーンの世界。そんな奇妙な趣だ。
04I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF
ダスティ・スプリングフィールドのヒットで知られるバカラック・ナンバー。原曲に見出したブルースの要素を拡大解釈し、ヘヴィなガレージ・ブルースとして料理。ジャック・ホワイトのダスティ風歌唱も微笑ましい好演だ。
05IN THE COLD, COLD NIGHT
メグ・ホワイト初の単独リード・ヴォーカル曲。“あんた”と“あたい”で描かれる古典的ブルースの世界を、ドラムス同様に魅力的でヘタウマな歌唱が演じている。妙に艶めかしい歌声に“ポワワ〜ン”と虜になる男子続出!?
06I WANT TO BE THE BOY TO WARM YOUR MOTHER'S HEART
構成員わずかふたりのユニットとは思えない擬似バンド・サウンドを展開するブルース・ナンバーは、スライド・ギターを使ったソロもお見事。彼らの持つブルース気質を、ロックの土俵へと持ち込み分かりやすく表現。
07YOU'VE GOT HER IN YOUR POCKET
ともすればシブい方向へ行きがちなところを、あくまでポップに鳴らしてみせるセンスが光っている弾き語りフォーク・ブルース。イノセントな歌声の風情には、シンガー・ソングライターとしての魅力も垣間見えている。
08BALL AND BISCUIT
伝統的ブルースを信奉する彼らが、あえてブリティッシュ・ブルース・ロック風に演じた変化球ナンバーで、パワフルな音の鳴りはさながらレッド・ツェッペリン。耳がビリビリ、脳がジンジンとなる傑作ヘヴィ・ブルース。
09THE HARDEST BUTTON TO BUTTON
家庭崩壊がもたらす不安感が見事に表現されている曲。現代文学調の筆致と意味ありげなオチで描かれる崩壊の描写。単一フレーズを繰り返すギターと同一リズムを刻むドラム。物語にある不安感を肥大させる巧妙な構成だ。
10LITTLE ACORNS
ピアノをバックにニュースキャスターが歌詞を読む前半。爆音ブルースに乗せ、同じ歌詞をジャックが歌う後半の二部構成。アイアン・バタフライの「ガダ・ダ・ヴィダ」風リフに、温故知新ロック・ファンがいっせいに破顔。
11HYPNOTIZE
単調なギター・リフの波状攻撃と、意図的に滑らかでないリズム感覚。1960年代ガレージ・バンドのマイナー・ヒット曲に通じる“いなたさ”が絶品。催眠術を使って女のコを口説こうと妄想する気弱な主人公の描写も最高だ。
12THE AIR NEAR MY FINGERS
ギターとドラムスが主楽器のストライプスだが、ここでの主役は鍵盤。プログレッシヴ・ロックも顔負けのキャッチーなソロを奏でている。歌詞には何やらセクシャルな隠喩が仕込まれていそうなので、深読みして味わいたい。
13GIRL, YOU HAVE NO FAITH IN MEDICINE
1960年代にこの曲を演じていれば、必ずや歴史に名を残したであろうプリミティヴな轟音の痛快ガレージ・ナンバー。ブルース特有の言いまわしに精通したジャックだけに、歌詞にセクシャルな暗喩が込められている節がある。
14WELL IT'S TURE THAT WE LOVE ONE ANOTHER
ジャックが、英国女子ガレージ・バンド“ヘッドコーティーズ”のホリー・ゴライトリー嬢と痴話を繰り広げる、弾き語りセッション風ナンバー。求めるジャックに「子供ができちゃう」からと自慰を勧めるホリーが最高。
15WHO'S TO SAY
カントリー・ロック・バンド“ブランシュ”のカヴァー。原曲は浮遊感あるカントリー・ブルースだが、ストライプスは音にメリハリを付けた力強いヴァージョンに改変。ピアノとアコギのコントラストが印象的だ。
16GOOD TO ME
ジャックのバンド仲間ブレンダン・ベンソンと元ジェリーフィッシュのジェイソン・フォークナーの共作曲をカヴァー。原曲が持つオールド・タイムなロックンロールの要素を前面に出した、素材を殺さぬ解釈がお見事。