ミニ・レビュー
90年代を代表する米ロック・バンド、STPのベスト作。本作を聴けばスコットのカリスマ性や印象的なメロディ、ツボを押さえたサウンドから、いかにバランス感覚に優れたバンドだったかがあらためてわかる。5作品で2,000万枚を売ったバンドの魅力を凝縮。
収録曲
01VASOLINE
レッド・ツェッペリンを彷彿とさせるへヴィなギター・リフと、スコットの気だるく妖しいヴォーカルが生み出す中毒的なグルーヴ。まさにVASOLINE(ワセリン)を塗りたくったような、粘り気のあるミディアム・ナンバー。
02DOWN
重く圧し掛かるスローなリズムにへヴィなギター・サウンド。どこまでもダークなグルーヴの中にスコットの妖艶な歌声など、彼ら独特のシャープなメロディ・センスがキラリと光るへヴィなナンバーだ。
03WICKED GARDEN
緊迫したへヴィネス・サウンドと、ポップさをほのかに滲ませたメロディックなサビの浮遊感。絶妙なコントラストを以ってSTP的グランジを打ち出した、気だるくもハードなミディアム・ナンバー。
04BIG EMPTY
ジャジィなリズムと哀愁たっぷりのスライド・ギターが渋い前半から、徐々にへヴィなパワー・バラードへと変化していく、ドラマティックなスロー・ナンバー。映画『THE CROW』の挿入歌としても起用された。
05PLUSH
デビュー・アルバム『コア』からシングル・カットされ大ヒットを記録した、ミディアム・スローのへヴィ・ロック・ナンバー。繰り返されるパワフルなギター・リフにスコットの野太いヴォーカルが重なる、何度聴いても飽きないストレートな一曲。
06BIG BANG BABY
トラディショナルなロックンロールのグルーヴで60'sポップを演出しながらも、うねるようなギター・サウンドやスコットの物憂げなヴォーカルなど、結果的にSTPの毒々しく妖艶な個性が強烈に浮き出たミディアム・ナンバー。
07CREEP
アルバム『コア』からシングル・カットされ、ラジオで大ヒットしたナンバー。“何もする気が起きない”憂鬱な気持ちを歌った寂寥感漂うアコースティック・バラードで、わびしげなスコットの歌声を包む、哀愁を含んだ美しいギターの旋律が胸に残る。
08LADY PICTURE SHOW
どこか懐かしさを感じさせるサウンドとしなやかなメロディ・ラインが心地良い、軽やかなポップ・ソング。スコットのいつになく穏やかな歌声も風味が良く、へヴィ・ロックだけではない彼らの音楽的深みを味わえる。
09TRIPPIN' ON A HOLE IN A PAPER HEART
ミドル・テンポの16ビートにカラフルなギター・サウンドが交差する、ノリの良いロック・ナンバー。「俺は死んでないし、売り物でもない〜」と歌う、搾り出すようなスコットのシャウトに、彼と密接なドラッグ問題に対する苦悩がうかがえる。
10INTERSTATE LOVE SONG
全米1位アルバム『パープル』(93年)からのシングル・ヒット・ナンバー。ミディアム・スローのへヴィなサウンドに、メロウなギター・リフが切なく響く、どこかデカダンスな雰囲気漂うSTPらしいロック・ナンバー。
11ALL IN THE SUIT THAT YOU WEAR
ベスト盤『サンキュー〜グレイテスト・ヒッツ』に収録。これまでのキャリアをすべて凝縮したような、強烈な破壊性を持ったへヴィネス・ナンバーで、初期の攻撃性と成熟した味わいをあわせ持った存在感たっぷりの一曲だ。
12SEX TYPE THING
彼らの名を世に知らしめるきっかけとなったデビュー・アルバム『コア』からの大ヒット曲。アグレッシヴなロックンロール・サウンドとスコットのカリスマ的なヴォーカルの融合。90年代のアメリカン・ロックを象徴するようなハード・ロック・ナンバー。
13DAYS OF THE WEEK
5thアルバム『シャングリラ・ディー・ダ』からのシングル・カット曲。持ち味であるへヴィ・サウンドにポップ・テイストをふんだんに盛り込んだ口ずさみやすいメロディ。爽やかさと透明感が溢れる、新たなSTPワールドを構築している。
14SOUR GIRL
“彼女は、出会った日は不機嫌で、別れた日はハッピーだった”。“あの子は何を見てたんだろう”と考える男の、寂しげな心を歌ったメロウなアコースティック・ナンバー。囁くようなスコットの歌声と流麗なコーラスのハーモニーに恍惚感を覚える。
15PLUSH
大ヒット・ナンバーのアコースティック・ヴァージョン。アンプラグド・ギターの切ない響きと、スコットの伸びやかな歌声の見事な調和。へヴィな原曲の中にこれほどの旋律が潜んでいたのか、と驚くほどの美しさだ。
16LONG WAY HOME
ベスト盤『サンキュー〜グレイテスト・ヒッツ』の日本盤ボーナス・トラック。5thアルバム『シャングリラ・ディー・ダ』収録のライヴ・ヴァージョンで、ダークなへヴィ・サウンドに粘りのグルーヴとキャリアに裏打ちされた高品質の演奏を堪能できる。