ガイドコメント
82年5月のアルバムを、オリジナル・アナログ盤を忠実に再現CD化。ブリティッシュ・ロックの側からファンク/ソウルにアプローチした画期的な作品であり、後期クイーンの方向性を示した。
収録曲
01STAYING POWER
フレディ主導によるクイーン流ソウル・ミュージック。シンセ・ベースとカウベルが先導する強力なファンク・ビートに乗って、アリフ・マーディン編曲によるアース・ウィンド&ファイアーばりのホーン・セクションが派手に鳴り響く。
02DANCER
ブライアン主導のクイーン流ディスコ・ミュージック。多重録音されたギター・サウンドがディスコ・ビートの上で饒舌な自己主張を展開する。ハード・ロック・ギターとディスコ・サウンドとの強引な合体によるサウンドはいかにもブライアンらしい。
03BACK CHAT
「地獄へ道づれ」の続編のようなジョンの曲。洗練されたブラック・ミュージックとハード・ロッキンなギター・ソロを合体させた、クイーン流R&Bサウンドが楽しめる。ジョンとブライアンが意見を戦わせたという、ソロ部分のギター・フレーズに注目。
04BODY LANGUAGE
先行シングルとしてリリースされたフレディの曲。シンセ・ベースをフィーチャーしたディスコ・ビートに乗って、フレディのヴォーカルがセクシーなパフォーマンスを展開する。“Body language”というコーラスのリフレインも印象的。全米11位のヒットを記録。
05ACTION THIS DAY
フレディとロジャーがヴォーカルをシェアしたロジャーの曲。ニューウェイヴ風のサウンド・アプローチによるもので、シンセサイザーの自動演奏やサックスのソロなどをフィーチャーした展開は、クイーンにとっては新たな試みだった。
06PUT OUT THE FIRE
ジョン・レノン射殺事件に触発されたブライアンの曲。フレディのハイトーン・ヴォイスが炸裂する。異色作『ホット・スペース』の中では最も従来のクイーン・サウンドに近い曲のひとつ。ワイルドなギター・ソロは酔っ払って弾いたものらしい。
07LIFE IS REAL (Song for Lennon)
凶弾に倒れたジョン・レノンに捧げたフレディのバラード。レノンの作風を引用した、フレディ版レノン・ソング。俳句のようにシンプルな言葉を積み重ねる手法もレノンを思わせる。フレディ自身の孤独をも浮き彫りにした歌詞は深く重い。
08CALLING ALL GIRLS
フレディが歌うロジャーの曲。ニューウェイヴ調の編曲だが、ジョン・レノンの作風を思わせる部分もあり、歌詞のメッセージも“Love”。これもレノンの死に触発された曲なのかもしれない。多重録音された分厚いギター・サウンドが特徴的。
09LAS PALABRAS DE AMOR (The Words of Love)
「手をとりあって」が日本のファンへの感謝の気持ちを表明した曲なら、スペイン語の歌詞を織り込んだこちらは南米のファンに捧げられた曲。シンセサイザーの自動演奏をフィーチャーしたサウンドをバックに、フレディが見事に歌い上げる。
10COOL CAT
ジョンとフレディとの共作によるR&B調のポップ・ソング。フレディがスモーキー・ロビンソンばりのソウルフルなファルセット・ヴォーカルを披露している。デヴィッド・ボウイのバッキング・ヴォーカルも入っていたが、ボウイの意向でカットされている。
11UNDER PRESSURE
デヴィッド・ボウイとの共作曲。緊張感をはらんだドラマティックなサウンドに乗って、ボウイとフレディによるゴージャスなデュエットが披露される。単なる共演には終わらせない高度なコラボレーションはさすが。