ガイドコメント
間違いなく初期の代表作である83年の傑作3rdアルバム。アイルランド紛争をうたった「ブラディ・サンデイ」を初めとして、様々なレベルでの“戦い”をテーマにした本作には、シンプルでラジカルなロックが息づいている。
収録曲
01ブラディ・サンデー
02セコンド
打ち抜くような力強いドラミングでスタートする反核ナンバーで、U2史上初となるエッジとボノがヴォーカルを分担。アダムのベース・プレイのファンクぶりに隠れがちだが、エッジのカッティング・ギターもなかなかファンクだ。
03ニュー・イヤーズ・デイ
物悲しいメロディと力強いバンド・サウンドが一体化したナンバーは、バンド初となる全英トップ10入りを記録。エッジのギターとキーボードでの大奮闘に隠れがちだが、その傍らで疾走するアダムのベースもなかなかだ。
04ライク・ア・ソング
巨大な槌を振り下ろしているようなドラミングが、人々の権利に対する意識の目覚めを喚起するパワフルなナンバー。エッジの滑るようなギターなど聴くべき箇所は豊富だが、全体的に力が入りすぎている印象も。
05ドラウニング・マン
激しいラブ・ソングの形を通じた、キリストへの信仰表明とも解釈できるドラマティックなナンバー。エッジの幽玄なエフェクト・ギターに、スティーヴ・ウィッカムが弾く電気フィドル。厳粛な気持ちにさせられる音色だ。
06ザ・リフュジー
07トゥ・ハーツ・ビート・アズ・ワン
踊らずにはいられない、と歌われる気分がそのまま反映されているダンサブルなナンバー。エッジのリズミカルなギターにディスコティックなリズム隊。どのパートもダンサブルながら、どこか踊り慣れない風情があり面白い。
08レッド・ライト
ファンク・ナンバーをU2のシャープなロック・サウンドでプレイしたような趣。ホーンやキッド・クレオール&ザ・ココナッツのコーラス隊がアーバンなテイストを添えているが、どうにも垢抜けないところに、らしさがみえる。
09サレンダー
ツアーで訪れたアメリカ都市の光景に対する戸惑いを歌った実直なナンバー。ここで聴けるシャープでありながら幽玄でもある個性的な音像に、『焔(ほのお)』にてひとつの完成を見るU2サウンドの原型が見え隠れしている。
1040
曲題は旧約聖書の詩篇40篇を意味しており、歌詞にもそこからの言葉を引用。力強いサウンドで奏でられた聖歌のようなナンバーで、信仰心を持たぬ者さえ厳かな気分にさせる。アダムの不在によりエッジがベースを担当した。