ガイドコメント
バンドのラスト・オリジナル・アルバムとなった、83年発表の5作目。卓越した演奏技術によって実現した、ポリス・サウンドの到達点といえる濃密なバンド・サウンド/アンサンブルを堪能できる傑作。
収録曲
01シンクロニシティー1
カール・ユングの唱えた概念“共時性=意味のある偶然の一致”をタイトルに冠したスピーディな曲。印象的なリフを交錯させた複雑な曲調からは、歌詞のみでなくサウンドでも共時性を表現しようとの意図が感じられる。
02ウォーキング・イン・ユア・フットステップス
絶滅した恐竜の足跡を人類もたどっていると歌う悲観的なナンバー。聴き手を恐竜のいた太古へといざなうかのようなコンガを使ったポリリズミックなアレンジが施されている。ポリス作品の中でもきわめて風変わりな一曲だ。
03オー・マイ・ゴッド
スティングが歌でもベースでもパワフルな魅力を放つジャズ・ファンク・ナンバー。ポリスの3人が出会うきっかけにもなったバンド、ストロンチウム90の「3・オクロック・ショット」を改変したような雰囲気。
04マザー
アンディ・サマーズによるナンバー。彼が同時進行でロバート・フリップともアルバムを制作していた影響がモロに出た前衛的な作品で、曲調はジャズ・ロック×民族音楽風。ひとり部屋でわめいているような躁鬱の激しいヴォーカルが強烈。
05ミス・グラデンコ
スチュアート・コープランド作のナンバー。アンディ・サマーズの適当に弾いたようにも思えるよどみないギターに、リズム隊の的確すぎるプレイと、メンバー各人の個性的かつスキルの高い演奏が楽しめる。歌詞はソ連(当時)を批判したものか。
06シンクロニシティー2
07見つめていたい
08キング・オブ・ペイン
静かにリズムを刻むピアノと木管楽器の音にメロウで哀感漂うヴォーカルが重なるイントロの美しさは随一。中盤で静寂が破られ力強いバンド・サウンドに転じ、静と動が交互に訪れるスリリングな展開に息を呑む。
09アラウンド・ユア・フィンガー
寂寥としたメロディに彩られたポリス流バラード。曲の全体像を決定づけるような、スティングの恍惚に満ちた切ないヴォーカルが圧巻だ。各パートのハーモニーを重視したサウンド、巧みなドラミングが哀感を盛り上げる。
10サハラ砂漠でお茶を
ポリス後期の作品で、スティングのソロ・ワークに通じるジャジィなテイストが漂う。低音のベース・ラインを軸にしたシンプルなアレンジが施され、スティングの穏やかでメロウなヴォーカルの魅力が存分に味わえる。
11マーダー・バイ・ナンバーズ
彼らのジャズ志向と高い演奏力が生み出したスタイリッシュなナンバー。殺人を肯定するような物言いを、殺人の世界で頂点に立ちたければ国の指導者になればいいと締めくくる皮肉めいた詞が秀逸。最後に拍手が被せられている。