ミニ・レビュー
破格のスケール感を持ったロック・サウンドを鳴らす4人組の5枚目のアルバム。メロディアスな楽曲も多いが、激情を吐き出す山田のヴォーカルと、それに負けじとかき鳴らされる濃密なサウンドがインパクトある独自の世界を作り出している。
ガイドコメント
THE BACK HORNの5枚目のアルバム。初めてメンバー全員の作詞楽曲を収録、日本とニューヨークでレコーディングなど、トピックの多い作品。「カオスダイバー」など、シングル3曲収録。
収録曲
[Disc 1]
01カオスダイバー
混沌としたこの世界に恐れず飛び込め、という希望に満ち溢れた、2006年発表のシングル。ニューヨークでのレコーディングにより、鋭く層の厚い音像を作ることに成功。パワフルな音とともに、“生きること”に鋭く切り込んだ一曲だ。
02アポトーシス
病理学用語で“細胞死”を意味するタイトルは、社会の中で希望をなくしてしまった人の“心の死”を喩えたもの。そんなもがく心を表わすように、爆発するリズム隊とがむしゃらにかき鳴らされるギターがグルーヴィに絡みあっている。
03証明
山田の吠えるヴォーカル・スタイルがバンド初期を彷彿とさせる、青い衝動が胸をつく一曲。ステージの上の自分達をピエロに喩えた歌詞には、バンドのアティテュードをまさに“証明”する強い意志が漲っている。
04ホワイトノイズ
“悲しみに染まる”“雪のようにただ消える”……。壊れそうな心を、“白”にたくした叙情的でスローなナンバー。バラードかと思うほど静かなAメロと、張り裂けんばかりの声で心情を吐露するサビとの緩急がいい。
05世界の果てで
悲しみや混沌を題材にした作品が多いバックホーンだが、希望と愛について100パーセント明るい言葉だけで綴った、彼らにとって珍しいラブ・ソング。優しくメロウな歌い方や明るいコード進行も彼らにとっては大きな変化だ。
06天気予報
裏ぶれた昭和の酒場の匂いが漂うブルージィなバンドの演奏に、ドラムス松田が劇画調のセリフで語るという、異色の作品。“止まない雨は、誰のものなの?”と、モヤモヤした感情を新たな切り口で表現している。
07ファイティングマンブルース
独特の言語感覚で男の心理と社会の矛盾を歌った、働く男に贈るミディアム・ナンバー。悲哀たっぷりな歌詞は本場ブルースの流れだが、ディストーション・ベースやがなるヴォーカル・スタイルとは、かなりハードコアなブルースだ。
08ブラックホールバースデイ (Album Version)
孤独、狂気、罪や罰という“闇”の中から希望をつかもうとする求心的なメッセージが胸をつく、2006年発表のシングル。オープニングとエンディングの象徴的なドラム・ソロのフレージングがゾクゾクするほどかっこいい。
09浮世の波
アルバム『太陽の中の生活』で2度目となる、ベース岡峰による作詞楽曲。歴史好きな岡峰だけあり“諸行無常”の世界を古めかしい言葉で描いている。ストレートで無骨な音作りは、バンド初期を思わせるパンク・サウンドになっている。
10ゆりかご
5thアルバムにして初めてヴォーカルの山田が作詞を披露した楽曲。他メンバーの詞とは明らかに違う語り口で“癒し”をテーマにしたもの。スローなワルツのリズムと甘美なメロディといい、彼ら流の子守り歌といったところか。
11初めての呼吸で (Album Mix Version)
“暮らし”をテーマに、絶望と希望が混在する世の中を描いたミディアム・ナンバー。終盤に向かってだんだん熱を帯びていくヴォーカルと縦横無尽に駆け巡るベース・ラインが、スロー・テンポな楽曲でも非常にグルーヴィに感じさせてくれる。
[Disc 2]〈DVD〉〈爆音“音楽生活”編〉
01ブラックホールバースデイ (プロモーションビデオ)
02初めての呼吸で (プロモーションビデオ)
03カオスダイバー (プロモーションビデオ)
04路上弾き叫びの旅
05日米を跨いだレコーディングドキュメント
06プロモーションビデオメイキング