ガイドコメント
初期ルー・リードの最高傑作といわれるソロ第3作目。ボズ・エズリンの演劇仕立てのプロデュースによって、ベルリンを舞台に悲しい恋物語が綴られるドラマティックな作品だ。
収録曲
01BERLIN
どこかのバーの喧騒を思わせる人々のざわめきや「ハッピー・バースデイ」の歌のコラージュから幕を開け、美麗なピアノの弾き語りで淡々と歌うシンプルな一曲。ムーディなピアノと押さえたルーの歌声がなんとも艶っぽい。
02LADY DAY
タイトルの「レディ・デイ」はビリー・ホリデイのニックネームのこと。有名シンガーの光と影を描いた詩の文学性の高さも目を見張るが、それを皮肉るかのようなオルガンやストリングス主体としたサウンドも豪奢でありつつもどこかおどけた感じだ。
03MEN OF GOOD FORTUNE
「貧富」を題材とした一曲。ピアノ、ウッドベース、ギターの押さえたサウンドでじっくり聴かせるタイプの曲だが、後半からはダイナミックなドラミングで盛り上がりを見せる。会計士の息子だったルーなりの価値観が見えるあたりも興味深い。
04CAROLINE SAYS 1
ずしりとしたドラミングとウッドベースの図太いリズム隊、流れるようなストリングスとコーラス、さらにはフルートの音色。ファンタジックな香りが漂う華やかなサウンドだが、歌詞の内容はSMを題材にした過激なもの。このアンバランスさがなんともユニークだ。
05HOW DO YOU THINK IT FEELS
ダークなタイトルとドラッグをイメージさせる歌詞とは裏腹にサウンドはブラスの効いた狂騒的なものに仕上がっている。特に後半のギター・ソロとブラスの共演はかなりエキサイティング。そのハイな感じが逆に鬼気迫って聴こえるのも上手い。
06OH, JIM
ヴェルヴェッツ時代に「オー・ジン」というタイトルで制作していたものの、お蔵入りしていた曲を改作したもの。ストレートなロックを感じさせつつも、ムーディなブラスが妖艶な響きで聴くものを魅了する。
07CAROLINE SAYS 2
ヴェルヴェッツ時代の「ステファニー・セッズ」という曲をリメイク。家庭内暴力を受ける女性の悲劇を描いた曲。ピアノと爪弾かれるギター、ストリングスで構成された繊細なサウンドとメランコリックなメロディが胸を打つ。
08THE KIDS
良くない母親だと判断され、子供を取り上げられた女性を歌った曲。緩やかなアコースティック・サウンドと陰鬱な歌声が悲劇の物語を効果的に盛り上げる。後半に子供の泣き声が挿まれる、ハッとさせられる演出もあり、8分近い大作を飽きさせず聴かせてくれる。
09THE BED
絶望した女性が自殺を図るのを歌った曲。ギターの弾き語りによるシンプルな歌声の背景で厳かに鳴るのはストリングス、パイプオルガン、聖歌のごときコーラス。死にゆく者への鎮魂歌のように、儚くも悲しいメロディが切ない。
10SAD SONG
本格的なオーケストラによる壮大なサウンドで構成された曲。ストリングス、ブラス、コーラスなどによる重厚な音とドラマティックな展開が、アルバム『ベルリン』の物語を締めくくるエピローグのように鳴り響いている。