ミニ・レビュー
約3年ぶりの4枚目のアルバム。21世紀のストーンズの流れをくむロックンロールだと思うが、嫌味でなくてよくできている。特に日本語と英語が混ざった歌詞と音の絡み、ずっと聴いていても疲れない気だるげな音作りがお見事だ。「Help!」はビートルズのカヴァー。
ガイドコメント
前作『LOVE PSYCHEDELICO III』以来、約3年ぶりとなる4thアルバム。従来の持ち味を活かしつつも、新たなテイストを取り入れた意欲作だ。タイトルは、彼らのプライベート・スタジオの名前から。
収録曲
01Freedom
一瞬デジロックかと思わせて不意打ちのように登場する、豪快なギターで幕を開けるアルバム『GOLDEN GRAPEFRUIT』のオープナー。“You got to be free(自由になれ!)”と叫ぶKUMIの歌声に乾いていた心が覚醒する。NHK『MLB放送』イメージ・ソング。
02Aha! (All We Want)
全編を通して力強いギター・リフが核となって進んでいくロック・ナンバーで、強力なリフが骨太なグルーヴを生み出している。“Aha!”という掛け声や繰り返されるフレーズと歌声からは、彼らの強いメッセージが伝わってくる。
037days
知らなくちゃ。学ばなくちゃ。変えなくちゃ。ダンサブルなロックに乗せて、未来が見えない毎日を歌う、KUMIのヴォーカルがクール。無常に時を刻むシェイカーを蹴ちらしながら、今の世界に警鐘を鳴らすがごとくNAOKIのギターが吠える。
04Carnation
R.E.M.の「ルージング・マイ・レリジョン」を思わせるイントロで始まるミッド・バラード。“white room”や“Imagine”など、クラシック・ロックへのリスペクトがちりばめられた歌詞とバンジョーの音色に哀愁を感じる。
05Help!
ビートルズの名曲をカヴァー。12弦ギターやキーボードを用いた作り込んだアレンジながら、牧歌的な要素も加えて、手作り感覚を失わない仕上がりが秀逸。歌声や演奏もどことなく優しく、楽曲に対する深い愛情が感じられる。
06Rain
“君は僕のsunshine”とストレートな言葉で綴られるロマンティックなラヴ・ソング。実は、歌詞やサウンドのいたるところに小技が隠された、ビートルズ「レイン」へのオマージュだ。NTTドコモ「FOMA P903iX」イメージ・ソング。
07N29
NAOKIがブルージィなアコースティック・ギター1本で奏でるインタールード。わずか30秒という時間の中にデリコのルーツが見える。タイトルは、NAOKIが29歳の誕生日にKUMIからプレゼントされたギターを使用していることに由来。
08I saw you in the rainbow
“ただ君に恋してたbeautiful days”。薄れていく想いと切ないメロディが胸を締めつけるミッド・チューン。ギター・リフやサウンドにビートルズへの愛情があふれる、デリコ版の「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」だ。
09Good day、celebration
デリコらしい風刺と愛に満ちたロック・ナンバー。バンジョーやホーンを挟みながら目まぐるしく展開するサウンドに乗せて、さまざまな表情を見せるKUMIのヴォーカルがクール。ザ・ナック「マイ・シャローナ」のコード進行をなぞったAメロにニヤリ。
10Humanimation
筋金入りのロック魂を背負ったギターがうなるヒップホップ・チューン。韻を踏んだ英語の隙間にさりげなく日本語をしのばせたリリックは、デリコならでは。“Human”(=人間)とアニメーションをかけ合わせたタイトルも、皮肉が効いている。
11Everyone、everyone
“Good people!”ポジティヴィティ溢れるフレーズを全身全霊で放つ、LOVE&PEACE炸裂のフォーク・チューン。ジョン&ヨーコの思いをしかと受け継いだ、21世紀版「Give peace a chance」。
12Sad story
4thアルバム『GOLDEN GRAPEFRUIT』のラスト・ナンバーは、最後を締めくくるにふさわしいアコースティック風味のバラード。“あなたの太陽になりたかった”。KUMIがイノセントな歌声で綴る、薄れゆく愛の悲しい物語に涙がこぼれる。