ミニ・レビュー
2年3ヵ月ぶりのアルバムは2枚同時発売。初のセルフ・プロデュースとなる『JUSTICE』に対し、本作では佐久間正英を共同プロデューサーに迎えている。荘厳なオーケストラによるオープニングからポップでアグレッシブなナンバー、母校の合唱部が参加したバラードなど、全編に力強さが漲る濃密な仕上がりだ。
ガイドコメント
2013年1月23日リリースの12thアルバム。夏開催の長居スタジアムのテーマ・ソング「Bible」や『G4・II -THE RED MOON-』収録の「everKrack」を含む全10曲を収録。プロデュースは佐久間正英。
収録曲
01Red moon&Silver sun〜My Private“Jealousy”
44thシングル「My Private“Jealousy”」に島健による荘厳なオーケストラ序曲を加えたアルバム版。8分近くの大作だが、長さをまったく感じさせないストーリー性に満ちた構成は圧巻。出会いなんて別れの序章と恨み節をつぶやくロック・チューンだ。
02everKrack (album ver.)
43rdシングル収録のアッパー・ロック。タイトルはMMORPG『EverQuest』中毒者を指す用語で、歌詞でもいわゆる“ネトゲ廃人”を歌う。せき立てるように打ち鳴らされるスネア、シャウトのようなコーラスなど、ライヴ向きのアレンジ。
03FACTORY
FACTORY=工場での作業音からの幕開けが印象的なスケールの大きなナンバー。中盤での怒りに満ちたようなギター・ソロなどさまざまなギミックを施し、一人の労働者を中心とした物語を構築。バンドとしての底力を感じさせる。
04冬の遊歩道
サイモン&ガーファンクルの名曲を思わせるタイトルを冠したミディアム・バラード。アコースティック・ギターのアルペジオを中心とした前半からバンド・サウンドへと一気に変化する直球のアレンジで、エモーショナルなメロディを際立てている。
05華よ嵐よ
“de Dance!”の掛け声とともに踊り出したくなるような、4つ打ちを基調としたディスコ調のアレンジが新鮮なロック・ナンバー。とはいえ、サビではまさにTAKURO節ともいえるGLAYらしいメロディが展開するのがおもしろい。
06キリノナカ (album ver.)
あなたの腕に包まれたまま撃たれてもいい……“霧のなか”をいくような禁断の恋を歌ったロック・チューン。エッジの効いたカッティングや攻撃的なビート、ツーバスで突き進むラストなど、彼らが“ロック・バンド”であることを再認識させられるアレンジだ。
07初恋を唄え
彼らの出身地でもある函館の高校の合唱部によるコーラスを取り入れ、学生時代の淡い初恋を歌った感動的なバラード。リアルタイムで青春を体験している高校生のコーラスもあいまって、その時代の風景が自然と脳裏をよぎるような音世界が広がる。
08Bible
45thシングルは、永井誠一郎の透明感あるピアノと美しいメロディで幕を開ける前半から、2ビートで走り抜けるサビへと展開するアップ・チューン。ミスマッチとも思えるアレンジだが、スケールの大きな歌詞とともに完璧にまとめ上げている。
09Ruby's Blanket
作詞・TAKURO、作曲・JIROのコンビによる切なさもはらんだ爽やかなロック・チューン。オクターヴ違いでメロディを作り上げた前半をはじめ、広く設定された音のレンジをものともしないTERUのヴォーカルは見事のひと言。
10君にあえたら
気仙沼市を取り上げたミュージック・ビデオなど、東日本大震災からの影響を強く感じさせるナンバー。“君にあえたら 何もいらない”“君のかわりは どこにもいない”……胸を締めつけるような言葉とともに、さまざまな人への感謝を綴る。