ミニ・レビュー
『同2 [2005-2010]』と対をなすバンド初のベスト。インディ時代からメジャー2作目の『ユグドラシル』まで、ブレイクの契機となった「天体観測」をはじめとするシングル曲を中心にセレクト。サウンドの質感は変われど、鋭さと優しさをたたえた藤原基央のヴォーカルと楽曲が描き出す世界は一貫している。
ガイドコメント
2013年7月3日リリースの、バンド史上初となるベスト・アルバム。メジャー・デビュー作「ダイヤモンド」や「天体観測」「オンリー ロンリー グローリー」などのシングルを含む、1999〜2004年までの“BOC”の軌跡を凝縮した一枚。
収録曲
01ガラスのブルース
彼らにとって原点ともいえるポップ・ロック・ナンバー。“ガラスの眼をした猫”を主人公に据えた物語性に満ちた歌詞の世界は藤原ならでは。6分半近い長尺の曲にしてメロディの展開も多くはないが、長さを感じさせないアレンジの妙も見事。
02くだらない唄
美しいギターのフレーズで幕を開けるロック・チューン。タンポポや三日月、丘といった風景描写が色鮮やかな景色を想起させる。“ネクタイで迷わぬように”という“らしい”言い回しで、大人になっていく葛藤を綴る。
03ランプ
彼らの記念すべき1stシングル。心に灯す勇気や情熱をランプにたとえ、“落とした夢や理想”を探し、歩き続けていく力を歌い上げる。歌詞に合わせてメロディを少しずつ変化させ、徐々に盛り上げていくラストの展開は感動的。
04K
藤原基央のストーリーテラーとしての実力が遺憾なく発揮されたナンバー。不吉な容姿から忌み嫌われる黒猫。唯一の友達である若い絵描きに託された手紙を届けるべく疾走する“騎士”の姿を描いた物語と、緊迫感あるサウンドが胸に飛び込んで来る。
05ダイヤモンド
2000年のリリース後、ロングヒットを記録した2ndシングル。アコギをかき鳴らすような導入をはじめ、繊細ななかにみえるどこかワイルドでぶっきらぼうな雰囲気が新鮮。“ひとつだけ ひとつだけ”のサビが印象的だ。
06天体観測
彼らの名前を一躍広めることとなったフジテレビ系ドラマ『天体観測』主題歌の3rdシングル。8本ものギターで奏でられた分厚く複雑なアンサンブルがどこか流れ星を想起させる。君との天体観測と、予報外れの雨。胸が痛くなるようなキーワードが満載。
07ハルジオン
2001年リリースの4枚目のシングル。全編にわたってどこか儚く切ない雰囲気が支配しているが、聖歌隊のようなコーラスを配したサビから、ラストへとなだれこむダイナミクスに富んだアレンジは見事。直井の手癖ともいえる複雑なベース・ラインも印象的。
08Stage of the ground
アルバム『jupiter』の冒頭を飾る作品として収録されたナンバー。ギターのフレーズが印象的なイントロから希望に満ちたサウンドを響かせており、月も星もすべて君の為の舞台照明なんだと、とてつもないスケールで背中を押してくれる。
09スノースマイル
5枚目のシングルは全編にわたるアコギのアルペジオが凛と響くウィンター・ソング。“冬が寒くって本当に良かった”という歌い出しから、キュンとさせるフレーズがそこかしこに配されている。真っ白な雪の絨毯を思わせる開けたサビも見事。
10ロストマン
「sailing day」との両A面で発表された6枚目のシングル。ギターのフレーズと最低限のリズムで構築された壮大なスケールを感じさせる前半から、徐々に音数が増えていくアレンジに耳を奪われる。二人の“僕”が登場する不思議な歌詞の世界も興味深い。
11sailing day
「ロストマン」との両A面で発表された6枚目のシングルにして映画『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』主題歌。疾走感にあふれたハイテンポのギター・ロック・チューンで、映画にあった海を舞台にした物語も力強い。
12アルエ
『FLAME VEIN』再発時にシングル・カットされた7枚目のシングル。“青いスカート”や“ウレシイトキニワラエタラ”といったフレーズやタイトルからアニメ『エヴァンゲリオン』の綾波レイの姿を想わせる、スピード感のあるロック・チューンだ。
13オンリー ロンリー グローリー
4つ打ちのビートに詰め込んだようなギターのストローク、早口でまくしたてるようなヴォーカルが印象的な8thシングル。少し不穏なメロディが展開する中盤から、コーラスとともに一気に開けるサビの爽快感が心地よい。
14車輪の唄
アルバム『ユグドラシル』からのシングル・カットとしてリリースされた9枚目のシングル。どこかジブリのような世界観を想わせるファンタジックなサウンド、そして藤原の真骨頂といえる感動的なストーリーが完璧に融合したナンバーだ。